石川淳短篇小説選―石川淳コレクション (ちくま文庫)

著者 :
制作 : 菅野 昭正 
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 45
レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (437ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480423016

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  • フランス文学者・文芸評論家の菅野昭正セレクトによる
    戦中戦後から高度経済成長期にかけての石川淳短編選集。
    戦争に対する遠回しな皮肉や、
    独特の恋愛観・女性観を反映した物語など、全15編。
    中井英夫や澁澤龍彦が好んだと言われるだけあって、
    幻想的・伝奇的な内容も出てくるが、
    早い時期の作品にはナンパ師(笑)の登場が多く、
    若かりし日の作者の分身かと苦笑い。

    以下、特に印象的なタイトルについて。

    「マルスの歌」(1938年)
     書きあぐねる作家の耳に飛び込む、戦争を賛美する歌。
     同調圧力にうんざりする彼のところへ従妹がもたらした
     不吉な報せ、そして……。
     暴力そのものへの直接的な批判ではなく、
     それに呑み込まれて常軌を逸した一般人への痛烈な皮肉。
     妻(語り手の従妹)の不慮の死の直後に
     召集令状を受け取り、基地へ向かう前に
     一頻り羽目を外そうという青年の空元気が痛々しい。

    「喜寿童女」(1960年)
     古書の競売で「わたし」が手に入れた
     和綴じの手稿本は『妖女伝』とあり、
     江戸時代の芸妓が喜寿の祝宴の後、
     消息を絶ったという逸話がしたためられていた。
     「花」と呼ばれた老女は、ある特異な目的のため、
     さる場所に身柄を預かられたという……。
     これはエロい(爆)――とはいえ、
     語り手が奇怪なエピソードを読むというスタイルにつき、
     描写は間接的にして簡潔なので、
     薄絹一枚、二枚越しの淫猥さといったところ。
     それにしても、どうして日本の多くの男は
     幼女にエロティシズムを求めがちなのか……。

    「ゆう女始末」(1963年)
     1891(明治24)年の大津事件を題材にした短編。
     周囲から無感動で風変わりな女と見られる
     二十代バツイチの「ゆう」は、
     ロシアのニコライ皇太子(後のニコライ二世)訪日の
     新聞記事を読み、
     その写真を見て一目惚れしてしまい、異様な行動に出る。
     胸の内に秘めた自身の哲学や熱情を言語化できず、
     他者に理解されない女性の心に
     ふとしたことで火が点き、
     当人を焼き尽くしてしまった……といったところ。

  • ひとつめに収められている「マルスの歌」が好きです。
    できれば暗記してしまいたいくらいです。できないのでしませんけど。

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