たまたま地上にぼくは生まれた (ちくま文庫 な 27-3)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480423061

作品紹介・あらすじ

「闘う哲学者」としての出発点は、偏見と傲慢、狭量さが見え隠れするウィーンでの体験にあった。それが自らの哲学に独特なニュアンスを与え、軽妙でありながらウルサク、孤独を愛し自己責任を徹底して尊重するがゆえに執拗な日本(人・社会)批判を繰り返させることになる。ヨーロッパ体験、哲学談義、日本(人・社会)論の三つの視点で構成される本書は、期せずして見事な自著解読にもなっている。

感想・レビュー・書評

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  • ずっとぼくは中島義道を(あるいは、あらゆる哲学書を)誤読していたのかなとも思えてきた。たとえばぼくは自分の親を「精神的に」殺さないといけないとは考えないし、他人に理不尽について問いただすことを哲学的だとも思わない。だから過去にぼくは「戦う哲学者・中島義道」になれない自分を恥じさえして、哲学をする資格はないとも思ったのだった。でも、違うだろう。ぼくは中島義道に対して、この自分の「身体」「主観」の主張に即して「なぜですか」と問わなければならない。そのようにして中島義道を「精神的に」斬ることが大事なのだろう、と

  • 2022/07/15 図書館

    p.316
    危機状況ではひきこもりの人は元気になる

    こういう危機状況にいると、ひきこもりの人は元気になっていくんです。ひきこもりの人が望んでいることは大地震があったらいいとか、大革命があったらいいというようなことです。世界が崩壊したらいい、という気持ちです。しだいに似たような崩壊が周りで起こってきて、どんどんいろいろな人が殺し合いをしている。(中略)
     そういう中で、月に五十冊くらい本を読んでいました。いろいろな本、おもに文学、哲学、宗教などの分野をベットの横に置いて。なぜかというと、いろいろなことを知りたかったからです。勝手に生まれさせられて、たちまち死んでいくことの意味、とちう自分の問いにちょっとでも引っかかるような本です。
     いろいろな本を読んでいくうちに、だんだん自分自身の中で、大学がなくなるのであれば、まだあるうちに勉強しなくちゃいけないと思いはじめて、少しずつ大学に行ってみるようになりました。引きこもっている人が恐ろしいのは、まともな人が私をまともじゃないとちうひとつのレッテルで見ることですが、大学に行ってもみんな右往左往しています。私になど興味がない、私なんかもう忘れている人もいる、そういうことで私は元気になっていかざるをえなかったわけです。

  • 39098

  • なんとも感想に困る本。
    めちゃくちゃ面白い本であることは間違いない。
    けれど、どこがどう面白いのか、を取り出せない。

    中島氏の考えや思想には共感することが多い。
    しかし、氏のような生き方が出来るかと言えば、まあ無理だと思う。
    歳を取れば、また話も変わってくるのかもしれないけど、「丸く」ならずに歳を取ることも、また難しい。

    「自分」と「自分以外」という関係。
    それに、きっと一生、悩まされるのだろうなあ。

  •  哲学者と言ったら頭がどうかしちゃってる人を思い浮かべがちだが、そのもっともよい現存する例がこの中島義道。個人的には非常に好感を覚える「まっとうに」頭のおかしい人の一人。
     この本は、中島義道が行ってきた様々な題材の講演を文字に起こしたもの。多くの著書(というか中島義道の排泄物・吐瀉物)で言われていることが繰り返されているとも言えるが、身も蓋もない腐っている物言いが「素敵」である。この人の本を読むと、共感を覚えるところあり、こんな人がいるんだという単純な驚きあり、日常的に「死」にはまり続けていられる精神の強固さに対する感動あり、かつそこから抜け出せないことに対する同情あり、そして、最終的になんか「勇気」づけられる気がする。よく考えると全く勇気づけられるわけではないのだが、無頓着でいることの多い自分の足元を崩される「快感」もあって、安定した中島の腐敗臭が癖になると言うべきか。
     人生に迷っているいたいけな人に「お薦め」したい一冊。

  • 09119

    08/04

  • 詳細・感想は同書のハードカバー版の方に書きました。

  • 生協の書籍部でふらふらしていて、綺麗な桜の表紙とタイトルに
    惹かれて手に取りました。うーん、心理学関係でないのでこのエントリに
    入れていいものか迷いますが(むしろ娯楽だと思う)一応。
    面白かったし、勉強になったので。

    いろんな経験をされてる方で、とんでもない覚悟と共に言葉を投げて
    いらっしゃいます。傷つく事も傷つける事も厭わない。
    むしろ傷つけてなんぼという感じです。潔さは尋常じゃないです。
    あとずっと不幸であろうとしている方らしいです。

    プラスの理不尽と、マイナスの理不尽というお話がありました。
    世の中は確かに理不尽だけど、それで得をする事も損をする事もやっぱり
    あるだろうということだと思うのですけども。これで生きてても
    もしかしたら面白い事があるかもなと思えるようになって
    しまうから不思議です。たぶん著者の方は絶対そんな事を
    望んでらっしゃらないと思いますが。

    元々カントとか時間の研究をされてる方なので、そういう話も出てきたり。
    過去は身体に投げ込まれる、という表現が好きです。

    コミュニケーションとか考えていこうとする上で、「社会的な言語を
    ぶちこわさなきゃいけない」と言われてしまうとどうしようもなくなって
    しまうのですが、どれだけ多くの概念が言葉の上に成り立っていて、
    どれだけあやふやなまま使われていて、通じてると錯覚されてるのか
    について考えることは大事だと思います。

    言葉はやっぱり押しつけられたものなんだなぁ。
    あとやはり武器でしかないんですよね。
    私は、武器の研究をしてるらしいですよ。
    確かに、なぜ言葉で人が傷ついたり傷つかなかったりするのか、という
    こともとても興味深いですけども。

    その人が生きていることの重みは、その人が今まで為してきた事
    全てよりも重い、それだけ生きているということは重いんだという
    フレーズが頭から離れません。

    「哲学をする」ということは、本を読んだり勉強したりする事ではなくて
    「真理を求める」という姿勢で生きていくことらしいです。
    私も哲学を研究することは叶いませんが、この姿勢は持ち続けていたい
    と思います。要らないことに惑わされないように。

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著者プロフィール

1946年生まれ. 東京大学法学部卒. 同大学院人文科学研究科修士課程修了. ウィーン大学基礎総合学部修了(哲学博士). 電気通信大学教授を経て, 現在は哲学塾主宰. 著書に, 『時間を哲学する──過去はどこへ行ったのか』(講談社現代新書),『哲学の教科書』(講談社学術文庫), 『時間論』(ちくま学芸文庫), 『死を哲学する』(岩波書店), 『過酷なるニーチェ』(河出文庫), 『生き生きした過去──大森荘蔵の時間論, その批判的解説』(河出書房新社), 『不在の哲学』(ちくま学芸文庫)『時間と死──不在と無のあいだで』(ぷねうま舎), 『明るく死ぬための哲学』(文藝春秋), 『晩年のカント』(講談社), 『てってい的にキルケゴール その一 絶望ってなんだ』, 『てってい的にキルケゴール その二 私が私であることの深淵に絶望』(ぷねうま舎)など.

「2023年 『その3 本気で、つまずくということ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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