希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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レビュー : 61
  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480423085

感想・レビュー・書評

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  • 格差社会の到来と言われて久しいが,これまでは格差の実態について,収入などの「量的格差」に議論が向きがちであった。
    しかし本書では,格差の根本にある仕事能力による格差拡大を指摘し,単純労働から抜け出すことができない人の急増,いわゆる「質的格差」の存在を明らかにしている。そしてこの「質的格差」を自覚した人びとが,仕事や将来に対する「希望」を見いだせなくなっているのが現在の日本社会というのだ。
    職業は,人びとにアイデンティティを与える。アイデンティティが見いだせない社会構造はやはり問題であるし,結果的に将来の重大な社会不安定要素に繋がる。これを警鐘した本書の意義は大きい。

    ただ,教育に対する考え方に違和感を感じたこと,重複する説明が多く,無駄に読み疲れたので星3つ。

  • 格差の発生をリスクの観点から考察した本。社会改革により格差を改善していこうということを提案している。

  • 日本の現代の問題を単なる経済格差ではなく、希望格差=努力が報われる社会かどうかで論じた視点は素晴らしい。しかし、取り上げている話題への分析が浅薄で、なにより今後の提言が弱いのが残念。

    ・人々が中流とランクづけるのは、格差が量的なものだと思われていること、そして、成長によって追いつくことが可能だと希望がもてたことに依存する。
    ・教育は、何より「階層上昇(もしくは維持)の手段」であり、社会にとっては「職業配分の道具」なのである。この二つが危機に瀕していることが、現在の教育問題の根幹にある。しかし、これは主流の教育学者からは嫌われる考え方。
    ・苅谷:学力が低い生徒ほど現状肯定感が強い。→過大な期待を持つ以外に現状をやり過ごす手立てがない。
    ・ランドルフ・ネッセ:希望という感情は、努力が報われるという見通しがあるときに生じ、絶望は、努力してもしなくても同じとしか思えないときに生じる。
    ・中国が社会主義という看板を捨てられないのは、革命によって前近代的宗教を破壊した後に、社会主義を放棄すれば、貧しい人々に救いがなくなってしまうことに指導者たちが気付いているからなのだ。

  • [ 内容 ]
    フリーター、ニート、使い捨ての労働者たち―。
    職業・家庭・教育のすべてが不安定化しているリスク社会日本で、勝ち組と負け組の格差は救いようなく拡大し、「努力したところで報われない」と感じた人々から希望が消滅していく。
    将来に希望が持てる人と将来に絶望している人が分裂する「希望格差社会」を克明に描き出し、「格差社会」論の火付け役となった話題書、待望の文庫化。

    [ 目次 ]
    1 不安定化する社会の中で
    2 リスク化する日本社会―現代のリスクの特徴
    3 二極化する日本社会―引き裂かれる社会
    4 戦後安定社会の構造―安心社会の形成と条件
    5 職業の不安定化―ニューエコノミーのもたらすもの
    6 家族の不安定化―ライフコースが予測不可能となる
    7 教育の不安定化―パイプラインの機能不全
    8 希望の喪失―リスクからの逃走
    9 いま何ができるのか、すべきなのか

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • この本を読めた高校生とそうでない生徒では人生変わるかもしれない。大学生は(特に学力の低い学生が)出席点を好むものだが、『希望』というキーワードでよく理解できた

  • 日本社会が、将来の安定を期待することが難しいリスク化の時代を迎え、従来の教育と職業のシステムがさまざまなところで機能不全を起こしていることを明らかにした本です。

    フリーターのように将来に希望を持てない人びとや、オーバードクターのようにそれまでの投資を無駄にすることを受け入れられない人びとが、みずからの心理的な安定のために夢にしがみついているという指摘も、非常に鋭いと感じました。

    ただ、経済的なセーフティ・ネットだけではなく、心理的なセーフティ・ネットの整備が必要だという主張はまだ抽象的で、「希望格差」という事態にどのように対処していくべきなのかという道筋はそれほど明確にはされていないのではないかという印象も持ちました。

  • 少し古い本になるので、内容が現代にそぐわないのではないかという不安があったのですが、そんなことはありませんでした。この本が世に出されてから、今に至るまでの日本の状況はたいして変化していないようです。希望格差という言葉を初めて耳にしましたが、自分の日常に引きつけて考えやすく、理解のしやすい内容でした。

    読むと不安感を煽られ、少し暗い気持ちになります。最終章において、これからの私たちの方針のようなものについて言及されているのですが、個人的に行うことのできる策が少なく、なかなかこの本自体が「希望」になりきれていないように感じてしまいました。

    いまの日本を取り巻く環境を見つめ直す、よい機会になりました。現在、義務教育のパイプラインを流されている方に読んで欲しい一冊です。

  • 10年近く前に書かれた本にもかかわらず、内容は全く古びておらず、むしろ現在の状況を予見していたかのように感じた。
    若者を取り巻く状況はむしろ当時より悪化しているし、日本のみならず世界的な経済の落ち込みで、著者が想定していたより現在は深刻かもしれない。 
    この本に書かれているように、徐々に仕事で昇級・昇進していって結婚・子育てをしていくっていう典型的な中流の生活には、自分自身現実感を持てないのが本音である。
    未来に対する希望がいまいち持てないから、将来に対する不安に備える為には、できるだけそういうリスクを取らない方がいいのでは、という思考に陥ってしまう。
    もしくは今が楽しければそれでいい、という短絡的な思考を持ってしまうのもまた事実である。
    だけど将来どうなるかなんてわからない、来年の今頃でさえも予想できないけれど、行動を起こさなければ何も変わらない。
    小さな行動、トライ&エラーが将来につながるかもしれないくらいには希望を持ててるのも事実なので、そういった事を積み重ねていくのが大事かも、というのが本書を読んで思ったことだ。
    誰もが暗い未来なんて望んでない。 将来に希望を持てる社会を作る事にほんの少しでも貢献していけたら、というのが私自身の願いである。

  • 誰もが感じていた雰囲気的なものを、具体的に定義してネーミングしたのは素晴らしい。結論が大学生のレポートみたいになってしまってるのは、そんな「当然の」ことを政治が行えていないからか。というか、山田先生は「コミュニケーション能力」肯定派なのか?

  • 今、お金ではなく、身分でもない。
    希望の格差が問題だ。
    新聞やニュースでも格差問題をいうワードをよく聞くので
    「希望格差問題」という本を読んでみました。
    書いたのは山田昌弘氏。
    学芸大学の教授の方だそうです。
    昔、30年ほど前は希望に満ち、
    理想的な未来生活の到来を信じている世の中だった。
    大阪万博のテーマが「人類の進歩と調和」
    理想的な社会の到来をみんな信じていたらしい。
    そのころは、ものづくりを中心とした大量生産・大量消費の時代。
    多教くの企業は生産を効率的に進めるために労働者を自社の生産システムに合うように育し、
    長期間抱え込むことが合理的だった。
    だから長期安定で、賃金の上昇が期待できる職に多くの人が就くことができた。
    人並みの努力をすれば報いとして豊かな生活が手に入れられた。
    しかし今、
    温暖化だの食糧危機がくるだの国債問題年金問題少子化問題グットウィル停止だの
    明るい未来なんて思い描けない人が多い。
    グローバル化やIT化が進み、生活するには困らない程度の豊かな社会。
    その世界では豊かになったゆえに多種多様な商品をより安く提供しなければいけない圧力が加わり続けている。
    現在企業によって求められる人材とは「変人」と「精神分析家」だとライッシュ氏が述べている。
    「変人」はオタク的に物事の可能性を追求できる人。
    「精神分析家」は人々が何を望んでいるかを分析できる人。
    この種の人々が「専門的な中核労働者、アナリスト」となり正社員になれて、
    残りの人々は労働力のコストを下げるために単純労働者となる。
    そして、フリーターが増える。
    フリーターはマニュアル通りに動くだけなので賃金があまり上がらず、
    食べてはいけるが、ゆとりのない生活になりがち。
    なので年金を納付しなかったり、保険に入っていなかったり。将来の不安要素となる。
    さらに今は若者だから職があるが、中高年になれば雇ってもらえなくなる可能性が高まる。
    そうなると社会福祉の対象にしなければならないが、その費用は莫大なものになってしまう。
    さらにフリーターじゃない、正社員でも、
    30年前なら終身雇用、その後厚生年金でゆとりのある老後が保証されていたが、
    今は大企業に就職しても倒産や解雇とは無縁でいられない。
    さらに年金の破綻が懸念され、老後が不安という人も多い。
    あと、戦後は多くの人が中流の意識を持ち、大きな格差を感じずに生活できていたらしい。
    今は年功序列が崩れ、能力主義の賃金体系が浸透し始めている。
    同じ企業に勤めていても、月収やボーナスに格差が広がっていく。
    そのようなことが1〜8章まで書いてあって、読んでいるとだんだん暗い気持ちになる。
    最後の9章だけにこれからどうすればいいのかが書いてある。
    経済的に生活保護などの制度はあるが、心理的にも助けていける制度を構築するべきだ。
    それは大きく分けて2つになる。
    ?このままどんどん規制を自由にしていく。
    自己責任を強調し、規制緩和、自由の拡大、個人主義の確立をしていって
    ?過去存在した、「安心社会」の復活を再現する。
    企業はアルバイトを雇わず、正社員雇用のみに強調していく。給与も年功序列に戻す。
    ?は能力のある人が活躍の場を提供されることは確かだ。
    しかし、自由化は失敗者も生み出す。
    誰しもが成功できるかのような感覚になるが、全員が全員夢を実現できるわけではない。
    そのような人達には最低限の生活は送れるようにはなっている、しかし、現在の社会では、人間はパンだけで生きていいけるわけではない。
    希望がないと生きてはいけない。
    ?これはまず完璧な実現は困難だ。
    まず、これ以上企業に負担をかけるのは不可能だ。
    経済がグローバル化しているので、海外との競争に負けてしまう。
    内的にも、年功序列、終身雇用賃金を復活すれば、才能のある若い人の不満が高まる。
    さらに、やる気のある企業や、才能のある人は必ず、海外に出て行ってしまう。
    残った人も、今まったく心配がなくなってしまえば、かえって逆に安穏としてしまい、活き活きと暮らせなくなってしまう。
    「希望のない安心」は停滞をもたらす。
    過去の制度は、そのとき、実現できる経済成長があったからこそ、皆は豊かな生活を手に入れたいという希望になり、成立していた。
    「生活に対する考え方を変えて、不安定な社会を乗りきろう」
    という考え方もある。
    能力をつけて、上を目指すのではなく、年収300万円くらいを前提に生活を組み立てて、楽しく暮らすという考えだ。
    公共的な取り組みとしては、
    能力をつけたくても資力のない人に、さまざまな形で機会を与える。
    これは職業訓練校などあるし、もうやっていると思う。
    私も1年少し前に色々見た。
    でももっと、努力したらその分報われるとわかる具体例などをHPで挙げたほうがいいと思う。
    どれくらい努力すれば、どれ位の地位が得られるのかという基準が加われば、将来の見通しがつき、希望につながる。
    さらに過大な夢を持っているために職業に就けない人のために、クールダウンさせる「職業カウンセリング」をシステム化する。
    納得させ、あきらめさせ、転進する。
    アメリカではカウンセリングシステムが発達しているので、もう始めているらしい。
    また最後に逆年金制度はどうだろうかと述べている。
    「自活できるようになるまでお金を貸し出し、後で返済させる」システムらしい。
    このような打開案を早急に打ち出さないと、日本の社会の不安定さは、深刻さを増すに違いない。

    私はとりあえず、まだ努力して、コツコツ日々やると決めたことをやっていこうと思います。

著者プロフィール

山田 昌弘(ヤマダ マサヒロ)

1957年、東京生まれ。1981年、東京大学文学部卒。
1986年、東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。
現在、中央大学文学部教授。専門は家族社会学。コピーライターとしても定評がある。
NPO全国地域結婚支援センター理事

【著書】
『パラサイト・シングルの時代』『希望格差社会』(ともに筑摩書房)、『新平等社会』『ここがおかしい日本の社会保障』(ともに文藝春秋)、『迷走する家族』(有斐閣)、『「家族」難民』(朝日新聞出版)などがある。

【公職】
•内閣府 男女共同参画会議・民間議員
•文部科学省 子どもの徳育に関する懇談会・委員
•社会生産性本部 ワーク・ライフ・バランス推進会議・委員
•厚生省 人口問題審議会・専門委員
•経済企画庁 国民生活審議会・特別委員
•参議院 調査室・客員研究員
•東京都 青少年協議会・委員
•同 児童福祉審議会・委員
•内閣府 国民生活審議会・委員
などを歴任。

「2016年 『結婚クライシス 中流転落不安』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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