希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 511
レビュー : 61
  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480423085

感想・レビュー・書評

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  • 少し前に話題になった本である。今さらと言われるかもしれないが、自分自身の中に切実な問題意識が出てきたことを機に手にとった。

    読んでいて、暗澹たる気持ちにならなかったといえば嘘になる。実際に自分の身の回りで見聞きする様々なことが、この本に書かれている分析にピタリと当てはまっていく。そういう「当てはまっていく」という感覚は、本来気持ちのいいものであっていいものなのだけど、この本の場合は、むしろ背筋が寒くなるという感じがする。

    この本が世に出てから随分経っている。おそらく、ここに描かれていることは現実のほぼ正しい分析であることははっきりしているように思える。では、その警鐘に対して、何らかの対策が取られているだろうか。例えば、というものがなかなか思い浮かんでこない。

    僕自身、若者の未来についてある程度関与するべき仕事をしている。この本の分析に従うならば、「パイプラインからの水漏れを防ぐため、全力を尽くす」のが職業人として今できることだろうし、現に全力を尽くしている自負はある。しかし、問題が構造的なものであるとすれば、やはり心のどこかに無力感が忍び込んでくるのを感じざるを得ない。

    確実に目の前に存在する「希望を持ち得ない若者」に対して、僕にできることは何なのか。目をそらさず考え続けるしかないのだろう。なによりも、自分自身が希望を持ち続けるためにも、そうやって考え続けなければならない。考え続ける努力は報われると、葉を食いしばって希望を持たなければならないのだと思う。

  • データがたくさん載っていて勉強になりました。フリーター増加の要因を教育に求めるのではなく、社会状況の正確な把握が対応の道になるのかなと思いました。リスク化とか二極化は避けられないけれど、未来に対して暗い気持ちになるのではなく、現実を知ってどう捉えるか、自分はどうしたいのかが大切。

  • 2013/08/27読了。「パラサイト・シングル」という言葉の生みの親、社会学者の山田昌広氏の著作。『下流思考』(内田樹)で引用されていて、興味をもったので読んでみました。
    「希望格差」とは、希望を持てる層と持てない層の二極化が進んでいるということ。経済的・量的な差だけでなく、内面的・質的な格差に着目している点がポイントです。
    高度成長期の終身雇用、サラリーマン・主婦型家庭、学校教育パイプライン(この位の学校にいけばこの位の職業につける)の確立という「オールドエコノミー」に対して、「ニューエコノミー」は、雇用、結婚生活、学校教育→就職のすべてが不安定化。一見うまく波に乗れたと思っても、いつ崩壊するか分からない高リスク社会である、という説明は非常にしっくりきました。
    2004年の出版(文庫は2007年)ということは、今から10年近く前に書かれているのですが、いまの時代に読むほうがずっと重く受け止められるのではないでしょうか。
    「オールドエコノミー」時代の考え方を引きずって、いつか安定した社会がくるんだと思っていてはダメですね。これから正社員や公務員のイスは減るばかり。その少ないイスに座れないと生活が厳しく、希望をもてないよ、という社会では立ち行かないのです。じゃあどうすればいいの、という点に関してはこの本でもふんわりとしか書かれてなく、これから「ニューエコノミー」世代が背負っていく課題ですね。

  • 結局根本的な構造改革を図らなくては何もなしえないし、意欲の格差にまえつながるといううわぁぁぁ。

  •  この本はリスク化と二極化という二つのレンズから、日本の社会で起きている問題について考察している一冊である。
     以前は一部の人が結婚や仕事において「自ら進んでリスクを取る」だけであったのが、様々なものが自由化され、また自由化によってそれぞれの人が所属する「組織」もリスクを取れなくなり、現在は全ての人が「リスクを取らざるを得ない」状況になっている。
     一方近代以前は格差が固定化し、その格差に対して人々も「納得」していた状況が様々なものの自由化によって壊れ、実力が「格差」につながり、(例えば所得が)上の人は上の人同士でくっつき(結婚)、逆に下の人は下の人とくっつくことによって格差の二極化が現在急激に進んでいる。
     この2つのレンズによって職業、家族、そして教育の3つの領域を考察している。
     職業においては職業が不安定化し、中核労働者と非正規雇用者という2極が出現。一度非正規になった人は正規になることは難しく、中核労働者はどんどん働かされるので、所得・能力の二極化が進む。また非正規になってしまういリスクは誰にも起きる点からリスク化も進んでいる。
     家族に関しては、まず女性の状況の変化に着目すれば以前は結婚すれば安泰と考えられていた状況から夫がいつクビになるか分からない状況となっている。また夫の状況に着目しても、人の流れが近代より激しくなったことによって妻が他の男性と出会う機会が急激に増えたため、いつ離婚を突きだされるかも分からない。よって家族が「一緒にリスクを乗り越えて行く共同体」ではなく、「リスクそのもの」になってしまう。また上で述べたように所得水準が高いカップルがくっつくことによって所得水準は上がり、またそれとは逆に所得水準がどんどん下がっていく家族が発生する。これによって家族の状況も二極化していっている。
     最後に教育に関しては、以前は「受験」というパイプラインが正常に働いていたが、現在労働市場の変化により企業も人を多く必要としなくなり、「このパイプラインに乗ったつもりだったが、いつの間にかそのパイプからもれていた」というような人が多く発生している。また高い教育を受けた家族は高い教育を受けた子供を再生産し、二極化を促進させる。
     これらの「二極化」「リスク化」により人々の間で「希望」に格差が生じている。「希望」とは「自身の努力が報われる感覚である」と、ある社会学者の意見を引用している。
     対策としては政府、企業、自治体等の組織が総合的に状況に対処していかなければならないと述べている。様々なデータを巧みに使って意見を主張している点や、以前から自分が疑問に感じていたことを論理的に説明してくれていた。おすすめの良書。

  • 中学校、高校、大学と受験でのセレクションが正しく機能していた時代では
    無理のない、そのごの人生展望が人々にはまっており、

    一流大学を卒業したならば、
    大企業、官僚、研究者といった職業が待っていて、
    自動的に送り込まれる。
    コレを、著者はパイプラインシステムと呼んでいる。

    しかし、

    今現在、
    受け皿としての、大学、企業の組織体系および、パイプラインシステムの
    雨漏りがあり、受験を通して、上のパイプラインシステムの流れに乗っていたとしても、そこから転落する人が多く出てきている。
    さらに、雨漏りがあるとわかっていながらも、上に行くためにはパイプラインにい続けることが不可欠である。


    収入の多い夫婦のほうが、収入の少ない若年夫婦よりも共働き率が多く。
    強者がより強者になってゆき、
    高い収入から、高い教育が可能になり、
    “平等”と言われている勉学さえも、先天的な収入や生まれた環境によって左右される時代が来た事を切れ味よくレポートしている。

  • たいへんわかりやすく、納得できる内容でした。というのも、初版の出版が2004年です。著者の指摘が的確で、かつ、この七年間で改革が何ら実現されていない、それよりもさらに混迷の度合いを深めているようである、ということでしょうか。

  • ●出会い
    内田樹「下流志向」
    ●purpose
    社会学に興味あり
    ●感想
    独断的に言いきる著者
    社会学分野に無防備な自分には斬新で刺激的
    「うのみにすべきでないこと」2割。でも、「その通り」8割。

    ●おすすめ度★★★★
    ●お気に入り★★★
    ●難易度★★★
    ●読み直し★★★★

  • まだ社会に出てないし、社会がどういう状況か分からないので、なんとも言いようがない。社会学者ってネガティブな人が多いんじゃないかと思うけど、この本も読んでいて暗くなった。でも、読んでよかった。

著者プロフィール

山田 昌弘(ヤマダ マサヒロ)

1957年、東京生まれ。1981年、東京大学文学部卒。
1986年、東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。
現在、中央大学文学部教授。専門は家族社会学。コピーライターとしても定評がある。
NPO全国地域結婚支援センター理事

【著書】
『パラサイト・シングルの時代』『希望格差社会』(ともに筑摩書房)、『新平等社会』『ここがおかしい日本の社会保障』(ともに文藝春秋)、『迷走する家族』(有斐閣)、『「家族」難民』(朝日新聞出版)などがある。

【公職】
•内閣府 男女共同参画会議・民間議員
•文部科学省 子どもの徳育に関する懇談会・委員
•社会生産性本部 ワーク・ライフ・バランス推進会議・委員
•厚生省 人口問題審議会・専門委員
•経済企画庁 国民生活審議会・特別委員
•参議院 調査室・客員研究員
•東京都 青少年協議会・委員
•同 児童福祉審議会・委員
•内閣府 国民生活審議会・委員
などを歴任。

「2016年 『結婚クライシス 中流転落不安』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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