いのちと放射能 (ちくま文庫 や 33-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (157ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480423603

作品紹介・あらすじ

私たちは原子力に頼っていて本当によいのか。なぜ放射性物質による汚染は、科学物質とは比較にならないほど恐ろしいのか。放射能によって癌や突然変異が引き起こされる仕組み、大人より子どもに影響が大きい理由を、生命科学者がわかりやすく解説。それでも核燃料サイクルへの道を突き進むエネルギー行政のありかたと、命を受け継ぐ私たちの自覚を問う。

感想・レビュー・書評

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  • 福島の原発事故があった時に、前の会社でお世話になった方から貰った本。
    その方は自分は年だけれど、あなたはまだ若いから知っておかなければいけない事だよ、と言ってこの本をわざわざ探して来てくれました。
    放射能を理解するにはとても良い本だと思います。分かりやすくて読みやすい。放射能はなんだか分からないけれど怖い、と思っている人におすすめ。
    この本自体はチェルノブイリ事故後に書かれたものみたいです。

  • 放射能ってなんだかよく分からないけど怖い
    なんだかよく分からないから怖い
    って人は、この本を読むといいですよ。
    放射線が人体に与える影響について
    基本的なところから説明されてて、とっても分かりやすいです。
    知らないまま怖がってるより、まずは読んでみよう。

  • 新書文庫

  • 小学生でもわかるような内容で原子力発電の危険性を警鐘! 1988年女川原発、1991年浜岡原発、1991福島第二原発、1999年東海村臨界事故2000年柏崎刈羽原発、2006年六ヶ所村再処理工場と挙げればきりがない事故が起こっていたにもかかわらず、あとがきの2007年時点で2011年福島が想定外といえるわけがないと納得した。

  • 考えさせられる。政府が信じられない今、自分や家族を守るのは正しい情報収集。

  • チェルノブイリ事故後に書かれたもの
    なぜ、放射能が怖いのか、身体に、いや身体を作っている原子にどう影響するのかがわかりやすく書かれている。

    放射線によっていためつけられた情報テープが細胞分裂をしていくことは、想像するのも怖い。
    子どもの細胞分裂の数を考えると、なおさら怖い。

    そしてP105「それはこころの問題です」で、自問自答する
    わたしたちは、なぜいながらにして、世界中のおいしいものをたべなければならないのでしょうか?

    消費電力の問題ではありません。こころの問題です。

    私たちは浮かれ過ぎてはいないでしょうか。
    おごり過ぎてはいないでしょうか。

    欲望は際限なくふくらむことに気づいているでしょうか。

    人の世
    1、一日一日をていねいに、心をこめて生きること
    2、お互いの人間存在の尊厳をみとめ合って(できればいたわりと愛上をもって)生きること
    3、それと自然との接触を怠らぬこと

    人間はどこからきて、どこへいくのでしょう。

  • (2013.07.06読了)(2013.06.29購入)
    【東日本大震災関連・その123】
    一頁当たりの文字数が少ないし200頁もないので、読んでしまうことにしました。
    放射能は、人体によくないことは、放射能を研究したキュリー夫人が身をもって教えてくれたことです。その威力を兵器にしたり、平和利用と称する発電に利用したり。発電利用は口実で、原爆の原料作りだったりもします。ガンの治療にも利用しているかと思います。
    広島、長崎、チェルノブイリ、アメリカ・ロシアの原爆実験、等、による被爆者の放射能による影響は、どのようにまとめられ発表されているのでしょう。(75頁に広島、長崎の被爆者統計資料から得られたガン発生確率が掲載されていました)
    本を探せば、いろいろ出ているのかもしれません。ただ、環境ホルモンなどと同様、病気や奇形などが、放射能によるものかどうかというあたりが、明確な因果関係を証明しにくい面があるので、難しい面があります。
    この本では、放射能は、人体の細胞に影響を及ぼし、ガンを発症させたり、遺伝子情報を破壊し、生まれてくる子供に影響を及ぼす、ということが述べられています。

    【目次】
    はじめに
    私たちは星のかけらでできています
    DNAはいのちの総司令部
    DNAは親から子へ受けつがれます
    放射能を浴びるとどうなるのでしょう
    弱い放射能がガンを引き起こします
    放射能はおとなより子どもにとっておそろしい
    お腹の中の赤ちゃんと放射線
    少量の放射能でも危険です
    チェルノブイリ事故がもたらしたもの
    人間は原子力に手を出してはいけません
    これ以上エネルギーが必要ですか
    それはこころの問題です
    ひとりひとりの自覚から
    あとがき
    文庫版への長いあとがき
    解説  永田文夫

    ●おそろしいもの(14頁)
    放射能は生き物にとって非常におそろしいものである
    ●電離原子(41頁)
    電子を失った原子を電離原子と呼びますが、放射線の影響のほとんどが、体の中に生じた電離原子による複雑な化学反応の結果引き起こされるものです。
    ●致死量(43頁)
    人間が短時間に全身に放射能を浴びたときの致死量は六シーベルトとされています。短時間に一シーベルト以上の放射能を浴びると、吐き気、だるさ、血液の異常、消化器障害などがあらわれ、死ぬ人もいるでしょう。このような放射線障害を急性障害と呼びます。
    ●微量の放射線の作用(70頁)
    放射線はDNAに傷をつけたり、切断したりして、突然変異を引き起こします。その結果、細胞がガン化したり、奇形児が生まれます。また、表面にあらわれないDNAの傷が子孫に伝えられますので、長い間に、生物の中にDNAの損傷が蓄積していく可能性があります。
    ●放射線の許容量(71頁)
    「それだけの放射線を浴びても安全ですよ」という値ではなく、
    「それくらいまではしかたがないでしょう」という値です。
    ●甲状腺(81頁)
    放射性のヨウ素を浴びると、そのヨウ素は甲状腺に集まります。
    甲状腺はいろいろなホルモンを出して、成長や発生、分化を促進する働きをしています。
    ●チェルノブイリ原発事故(122頁)
    二○○○年四月の事故十四年目の追悼式で、ロシア副首相は、事故当時の現場処理に携わった八十六万人の作業員のうち、五万五千人以上が亡くなった事実を明らかにした。
    二○○五年には、ロシアの社会保険発展相が、この事故で健康を害した人は、ロシアで百四十五万人であると述べている。
    二○○六年の四月現在、ロシア、ウクライナ、ベラルーシの健康被害者は七百万人とされる。なかでも、これらの国の子供たちの白血病と甲状腺障害は悲惨なものである。

    ☆柳澤桂子さんの本(既読)
    「二重らせんの私」柳澤桂子著、ハヤカワ文庫、1998.05.31
    「冬樹々のいのち」柳澤桂子著・赤勘兵衛絵、草思社、1998.12.08
    「愛をこめいのち見つめて」柳澤桂子著、集英社文庫、1999.06.25
    「ふたたびの生」柳澤桂子著、草思社、2000.03.30
    「生命の未来図」柳澤桂子著、NHK人間講座、2002.02.01
    「遺伝子医療への警鐘」柳澤桂子著、岩波現代文庫、2002.05.16
    「生きて死ぬ智慧」柳澤桂子著・堀文子絵、小学館、2004.10.10
    「露の身ながら」多田富雄・柳澤桂子著、集英社文庫、2008.08.25
    (2013年7月7日・記)
    (「BOOK」データベースより)
    私たちは原子力に頼っていて本当によいのか。なぜ放射性物質による汚染は、科学物質とは比較にならないほど恐ろしいのか。放射能によって癌や突然変異が引き起こされる仕組み、大人より子どもに影響が大きい理由を、生命科学者がわかりやすく解説。それでも核燃料サイクルへの道を突き進むエネルギー行政のありかたと、命を受け継ぐ私たちの自覚を問う。

  • 遺伝子は体内でどのような働きをしているのか、胎児の発生はどのように進むのか、放射線の電離作用とは何か。このような根本的なところから、放射能がなぜ生命にとって危険なものなのかを平易なことばで簡潔に解説してくれています。

    放射能汚染の時代に暮らす私たちに対してのみならず、将来の世代にまで生命の危険をもたらしてしまう原子力や放射能の利用に警鐘を鳴らしている本書は、生命科学者の書いた一般読者向けの著作としては大変貴重なものだと思います。

  •  こういう状況下ということもあり、さるブログで紹介されていたので読んでみた。中身はごくごく一般向けのわかりやすい解説書。細胞の構造とかDNAの仕組みからていねいに説明されている。一般書だからこういう初歩的なところから書かざるを得ないのだろうな。いやまてよ。こんなことはすべて高校の生物で習うんじゃなかろうか。高校進学率は90%を越えているのだから大多数の人にはわかりきった過剰な説明では、ということにはならないのだろうなたぶん。学校で習ったって卒業すればすぐに忘れてしまう。日本人の科学リテラシーの低さは折り紙つきなのだから。そしてそれがこういう大事故を引き起こす遠因になっているに違いないと思う。
     ぼくは今まで必ずしも原発反対論者ではなかったけれど、身近にこういう事故が起こり、そしてあらためていろいろな周辺情報を見聞きするようになるにつけ、これは100年早い技術だなと思うに至った。他の毒物とは異なり放射能は原子固有の性質なので、中和したり分解したりで無毒化することができない。ただひたすら崩壊して減少して行くのを待つしか手立てがないのだ。いくらコスト的に有利だからといって、使用済み燃料の処理すら満足にできず、高レベル放射性廃棄物の一時保管という問題先送りをして、原発を作り続けるという神経はとうてい理解できない。まさに本書の「国や電力会社は何を考えているのだろうか。自分たちが、今、よければ私たちの子孫がどんなに苦しんでもよいというのだろうか?」に同感だ。
     本書は20年以上前に書かれた本なので、出てくる大事故はチェルノブイリの話だ。福島原発事故がそのチェルノブイリ級の大事故とランクづけされたいま、著者の柳澤さんはどんなことを思っておられるだろう。

  • もっと早く日本人が読んで、原発止めてたらなー、と思いました・

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著者プロフィール

柳澤 桂子(やなぎさわ けいこ)
1938年、東京都生まれ。お茶の水女子大学卒業。コロンビア大学大学院修了。Ph.D.(遺伝子専攻)。お茶の水大学名誉博士。生命科学者,サイエンス・ライター。著書に『脳が考える脳』『遺伝子医療への警鐘』『生と死が創るもの』『いのちの始まりと終わりに』『患者の孤独 心の通う医師を求めて』『生命の秘密』『われわれはなぜ死ぬのか』など多数。



「2022年 『リズムの生物学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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