三島由紀夫集: 雛の宿 (ちくま文庫 ふ 36-7 文豪怪談傑作選)

著者 :
制作 : 東 雅夫 
  • 筑摩書房
3.53
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本棚登録 : 153
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480423641

感想・レビュー・書評

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  • ちくま文庫『文豪怪談傑作選』の川端康成集を読んだ流れで、
    こちらも購入、読了。
    怪奇・幻想系の短編小説と書評、及び文学論が収録されている。
    以下、小説の中で特に面白かった作品について、ネタバレなしで。

    ■朝顔(1951年)
     17歳で病死した妹との思い出と、彼女の夢。
     再会したのは夢の中でだったのか、あるいは……。

    ■雛の宿(1953年)
     暇潰しに「銀ブラ」する大学生は
     パチンコ屋で場にそぐわない少女と出会った。
     コツを教えたり、学生向けの店で軽い夕食をご馳走したりした後、
     母が雛祭りの支度をしているから……と、彼女の家に招かれたが――。
     結末にはタイトルでおよそ見当がつく、
     都市伝説風の嫌な後味の話(笑)。

    ■切符(1963年)
     商店連合会の会合の後、洋服屋の主人・松山仙一郎は、
     夏季夜間営業の招待券を仲間に振る舞って
     近くの遊園地へ行き、お化け屋敷に入った。
     妻・富子の問題について、時計屋の谷と話すのが狙いだったが……。
     これは見事な怪談。
     まんまと一杯食わされた!

    ■仲間(1966年)
     湿った重いコートを着て霧に煙るロンドンをさまよう
     「僕」と「お父さん」は、
     少し酔った「あの人」に出会い、古びた屋敷に招待された――。
     再読。
     「血」「吸血鬼」といった単語は出て来ないが、
     きっと彼らは人知れず仲間を探し当てた
     ヴァンパイアなのだろうと思える、
     謎めいた、奥行きのある佳品。
     あまり深く考察するのは野暮のような気がする。

    ■月澹荘綺譚(1965年)
     「私」は伊豆を旅して、
     焼失した月澹荘なる大澤侯爵の別荘にまつわる話を聞いた。
     語ったのは、かつての管理人の息子で、
     侯爵の嫡男・照茂と幼馴染だったという老人・勝造。
     照茂の奇妙な行動様式・性癖と、それが引き起こした事件の顛末。
     屈折した支配欲と、実力行使の不能性。
     語り手が単なる聞き役の旅人という形式が泉鏡花風。
     Wikipediaによると、1990年にテレビドラマ化されていたとか。
     だが、実写映像では生々しくなり過ぎる嫌いがあるので、
     読者が本文から自在にイメージを膨らませた方が
     幻想的かつエロティックでよい気がする。

  • 登録し忘れ…

  • 夏なので幻想怪奇系の積読を消化するぞのコーナーです。
    3冊目です。この夏読みたい幻想怪奇系の積読を6冊ほど出してて、次読むのはあみだくじで選んでます。
    で、①室生犀星(大正)②夏目漱石(明治)と読んできて、これ読んだら、うわぁーー昭和ーーー!!!!!てなった。なんか急に現代になった。戦後ってすごい。大正の頃はまだ怪奇と科学技術が混ざってるとこあって、へんなできごとも自然に起こってる感じがあったけど、これはほんとにお化け屋敷行くとか、へんな宗教が降霊術やっとるとか、そういう舞台が出てくる。
    政治的な思想が見えてくる話はあまり好きではなかったけど…
    「博覧会」や「孔雀」が特に面白かった。「博覧会」はメタ小説的な感じなんかな。ボツにしたけどどうしても貞三を使いたかったのか、それともこの話のために作ったキャラクターなのか…(わたしは後者だったらいいなと思う)

    それで、政治的な話はあまり好きではなかったけど、横尾忠則論が面白すぎてひぃひぃなり、「小説とは何か」でほしよんこにすることになりました。めちゃくちゃ面白かった。
    いや後半の文学論で取り上げられとる人らすごいよ。みんなよかったけど特に上田秋成、内田百閒、稲垣足穂、横尾忠則!!!横尾忠則ってバリバリ現役の人やけど、わたしは天井桟敷とか状況劇場のポスターのイメージがあるからやっぱり昭和ーー!となった。片脳油のパッケージ検索しちゃったよ。

    「小説とは何か」も面白かった。納得できることもあったし、できんとこもあったけどぜんぶ面白かった。稲垣足穂の読みたくなった。小説って他人の人生を追体験するものよね。ほんで自分の中の見てなかったものをえぐってくれるのがいい小説…

  • 没後50年、昭和初期を引きずったところもあるが、現在に通じるところも多々ある。三島の感性は、現在の方がマッチしている様な気もする。

  • 想像してたより読みやすく面白かった。

    好きなのは、
    『雛の宿』
    『切符』
    『仲間』
    『月澹荘綺譚』。

    後半に収録されてる文学論では、内田百間、柳田国男、稲垣足穂についてなど頷けるところも多く読みごたえがあった。

  • 三島、やっぱりすごい。
    言葉が溢れてる

  • 編者の東さんは「夜想」を編集していた人だったはず。彼の編集ものはなかなかすばらしいものが多い。
    そのひとつ。

  • 【仲間】―短篇。
    霧のロンドンの街中を気に入った家を探して歩くお父さんと僕。古い外套を脱がず、僕は煙草を愛飲する。ある晩できた友人とお父さんはひどく気が合い、毎晩その人の家で語り合うようになる。しばらく旅行に出かけていたその人が帰ってくる日、お父さんと僕はその人の家で待ち構え―。(2008.12)

  • 「英霊の聲」と「月澹荘綺譚」が一番面白かった。

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著者プロフィール

本名平岡公威。東京四谷生まれ。学習院中等科在学中、〈三島由紀夫〉のペンネームで「花ざかりの森」を書き、早熟の才をうたわれる。東大法科を経て大蔵省に入るが、まもなく退職。『仮面の告白』によって文壇の地位を確立。以後、『愛の渇き』『金閣寺』『潮騒』『憂国』『豊饒の海』など、次々話題作を発表、たえずジャーナリズムの渦中にあった。ちくま文庫に『三島由紀夫レター教室』『命売ります』『肉体の学校』『反貞女大学』『恋の都』『私の遍歴時代』『文化防衛論』『三島由紀夫の美学講座』などがある。

「1998年 『命売ります』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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