三島由紀夫集: 雛の宿 (ちくま文庫 ふ 36-7 文豪怪談傑作選)
- 筑摩書房 (2007年9月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480423641
感想・レビュー・書評
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ちくま文庫『文豪怪談傑作選』の川端康成集を読んだ流れで、
こちらも購入、読了。
怪奇・幻想系の短編小説と書評、及び文学論が収録されている。
以下、小説の中で特に面白かった作品について、ネタバレなしで。
■朝顔(1951年)
17歳で病死した妹との思い出と、彼女の夢。
再会したのは夢の中でだったのか、あるいは……。
■雛の宿(1953年)
暇潰しに「銀ブラ」する大学生は
パチンコ屋で場にそぐわない少女と出会った。
コツを教えたり、学生向けの店で軽い夕食をご馳走したりした後、
母が雛祭りの支度をしているから……と、彼女の家に招かれたが――。
結末にはタイトルでおよそ見当がつく、
都市伝説風の嫌な後味の話(笑)。
■切符(1963年)
商店連合会の会合の後、洋服屋の主人・松山仙一郎は、
夏季夜間営業の招待券を仲間に振る舞って
近くの遊園地へ行き、お化け屋敷に入った。
妻・富子の問題について、時計屋の谷と話すのが狙いだったが……。
これは見事な怪談。
まんまと一杯食わされた!
■仲間(1966年)
湿った重いコートを着て霧に煙るロンドンをさまよう
「僕」と「お父さん」は、
少し酔った「あの人」に出会い、古びた屋敷に招待された――。
再読。
「血」「吸血鬼」といった単語は出て来ないが、
きっと彼らは人知れず仲間を探し当てた
ヴァンパイアなのだろうと思える、
謎めいた、奥行きのある佳品。
あまり深く考察するのは野暮のような気がする。
■月澹荘綺譚(1965年)
「私」は伊豆を旅して、
焼失した月澹荘なる大澤侯爵の別荘にまつわる話を聞いた。
語ったのは、かつての管理人の息子で、
侯爵の嫡男・照茂と幼馴染だったという老人・勝造。
照茂の奇妙な行動様式・性癖と、それが引き起こした事件の顛末。
屈折した支配欲と、実力行使の不能性。
語り手が単なる聞き役の旅人という形式が泉鏡花風。
Wikipediaによると、1990年にテレビドラマ化されていたとか。
だが、実写映像では生々しくなり過ぎる嫌いがあるので、
読者が本文から自在にイメージを膨らませた方が
幻想的かつエロティックでよい気がする。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
登録し忘れ…
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没後50年、昭和初期を引きずったところもあるが、現在に通じるところも多々ある。三島の感性は、現在の方がマッチしている様な気もする。
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想像してたより読みやすく面白かった。
好きなのは、
『雛の宿』
『切符』
『仲間』
『月澹荘綺譚』。
後半に収録されてる文学論では、内田百間、柳田国男、稲垣足穂についてなど頷けるところも多く読みごたえがあった。 -
三島、やっぱりすごい。
言葉が溢れてる -
編者の東さんは「夜想」を編集していた人だったはず。彼の編集ものはなかなかすばらしいものが多い。
そのひとつ。 -
【仲間】―短篇。
霧のロンドンの街中を気に入った家を探して歩くお父さんと僕。古い外套を脱がず、僕は煙草を愛飲する。ある晩できた友人とお父さんはひどく気が合い、毎晩その人の家で語り合うようになる。しばらく旅行に出かけていたその人が帰ってくる日、お父さんと僕はその人の家で待ち構え―。(2008.12) -
「英霊の聲」と「月澹荘綺譚」が一番面白かった。