回転ドアは、順番に (ちくま文庫 ほ 20-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (195ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480423887

作品紹介・あらすじ

ある春の日に出会って、ある春の日に別れるまでの、恋愛問答歌。短歌と、そこに添えられた詩のような断章で、男と女、ふたりの想いがつづられる。紡ぎ出された言葉のひとつひとつが、絡み合い、濃密な時間を作り上げていく。短歌界注目のふたりによる、かつてないほどスリリングで熱い言葉の恋愛。文庫化にあたり、ストーリーに沿って1章ごとにふたりの自作解説を付加した。

感想・レビュー・書評

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  • 皆さん、「フラート」という言葉というか、概念ってご存知ですか。
    フラート(flirt)とは、欧米における恋愛の概念で、「友達以上恋人未満の関係を楽しむ」「恋の戯れ」を意味するそうです。
    ふたりで見つめ合ったり、手をちょっと触れ合ったり、そんな段階で本格的な恋に発展もさせず、その関係性を楽しむ。

    こちらの穂村さんと東さんの連々歌集、「回転ドアは、順番に」を読んで、「これは言葉の芸術によるフラートでは?」と、興奮した。
    おふたりともプロだし、当時もパートナーはいらっしゃったようですが。

    一組の男女が出会ってから別れまでを、穂村さんと東さんの短歌と、日記のような詩で展開していく。
    フォントも、穂村さんがゴシック体で東さんが明朝体で、それぞれの短歌のイメージに合っていると思う。
    短歌と詩の順番でリズムを作り、緩急自在に物語のペースを上げたり下げたりする構成が見事。
    特に、ふたりがはじめて身体を重ねた章と、大喧嘩をした章が大迫力で、ページをめくる手が止まらない。

    フランス映画の『ムード・インディゴ うたかたの日々』のような雰囲気もある。

    ただ、本編だけでは理解が追いつかず、文庫本付録の自作解説でようやく話の流れが分かったところもあり、文庫本を読んで良かったなーと思いました。

    • ☆ベルガモット☆さん
      5552さん、おはようございます!

      フラートという言葉を教えてくださりありがとうございます!
      言葉の芸術によるフラート、素敵なネーミ...
      5552さん、おはようございます!

      フラートという言葉を教えてくださりありがとうございます!
      言葉の芸術によるフラート、素敵なネーミングですね♪
      お二人の疑似恋愛を、こっそり見届けていてドキドキします☆
      そうそう、解説を読まないとついていけない世界でもありました。

      フランス映画の『ムード・インディゴ うたかたの日々』も予告編見てみました。恋愛映画は久しく見ていないので、新鮮な気持ちになりました。
      2022/08/27
    • 5552さん
      ベルガモットさん、こんばんは☆

      お互いをよく知っている友人同士での短歌による擬似恋愛!
      読んでいるこっちの方がドキドキしてしまいます...
      ベルガモットさん、こんばんは☆

      お互いをよく知っている友人同士での短歌による擬似恋愛!
      読んでいるこっちの方がドキドキしてしまいます。
      フラートという概念を本で知ったときは目から鱗でした。
      発想がやはり欧米っぽいですね。

      『ムードインディゴ~』幻想的でマジカルな映像と純粋なふたりの恋、というのが、この本の世界に似てるなーと感じました。
      映画の、蓮の花が肺に咲く病、とか、水中での結婚式のシーンとか、そのまま短歌になりそうなシチュエーション!
      2022/08/27
  • 古本屋さんで購入。穂村さん好きを自認でも東直子さんとの「恋愛詩歌往復書簡」というのはどうかな?生々しくて居心地悪い感じになるのではと心配したけど、両氏のことを忘れて歌の中の世界に浸った。恥ずかしさと瑞々しさを思い出させてくれた。

  • 出会いから別れを短歌や詩のような散文で想いのやりとりがされる
    穂村弘×東直子ふたりの独特の世界が反応しあって繰り広げられる疑似恋愛体験
    途中見失いそうになるので、何度か読み返しながら行方を追う感じ
    章ごとの目次の文がまた素敵
    出会いから仲良しの頃の短歌はキラキラして真似したくなる
    自作解説のところで好きな人ができると海に行きたくなるというエピソード、私も!と手を挙げたくなる
    状況がかなり省略されすぎていて物語の展開が解説がないとわからなかった そのわからなさにどっぶり浸るのも贅沢

    印象に残った短歌
    日常は小さな郵便局のよう誰か私を呼んでいるような
    サンダルをおとしちゃたという叫び声を笑って海風のなか
    膝たててふたりは座る真夜中のきれいなそらにしみこむように
    花束の花が次々枯れてゆく抱き合ったまま朝をゆられて
    恋人のあくび涙のうつくしいうつくしい夜は朝は巡りぬ
    冷蔵庫の扉を細く開けたままスリッパのまま抱き合う夜は
    めざめたら全部忘れていた鳥をつれてあなたのひかりのなかに

    • 111108さん
      ベルガモットさん、こんばんは。

      コメントしてたのを忘れてたのに急にお返事が届いて嬉しいです♪
      確かに二人共著多いですね。また探して読んでみ...
      ベルガモットさん、こんばんは。

      コメントしてたのを忘れてたのに急にお返事が届いて嬉しいです♪
      確かに二人共著多いですね。また探して読んでみます。
      2022/05/31
    • ☆ベルガモット☆さん
      111108さん 早速のお返事ありがとうございます!

      優しいコメントに救われました☆
      お返しに短歌プレゼントします。

      『もしかして、穂村...
      111108さん 早速のお返事ありがとうございます!

      優しいコメントに救われました☆
      お返しに短歌プレゼントします。

      『もしかして、穂村さん好き?』に頷いたきみとの共通項 無限大

      『』の中は、いろいろ変えて楽しんでいます。つぶあん、とか、きのこの山とか(^^♪
      2022/05/31
    • 111108さん
      ベルガモットさん、素敵な短歌プレゼントありがとうございます〜(´∀`*)

      コメントのやりとりは文通みたいで、それはそれで楽しいですけど、短...
      ベルガモットさん、素敵な短歌プレゼントありがとうございます〜(´∀`*)

      コメントのやりとりは文通みたいで、それはそれで楽しいですけど、短歌は間近で言われてるみたいな感じがしてちょっとドキッとしますね!
      穂村さんからつぶあん、きのこの山まで何にでもできちゃうの楽しいですね♪
      2022/06/01
  • 「言葉を駆使した恋愛問答」の文字間に潜む美しさ。|特集|Culture|madameFIGARO.jp(フィガロジャポン)
    https://madamefigaro.jp/culture/feature/210817-miyuotani.html

    筑摩書房 回転ドアは、順番に / 穂村 弘 著, 東 直子 著
    https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480423887/

  • お恥ずかしながら、私はまだ短歌集を読むタイミングというのがよく掴めておらず、気分で手に取り開いてきましたが、こちらはちょっと違っています。

    恋愛小説なんですが、それが穂村弘さんと東直子さんの短歌で綴られている。
    キラキラした恋する時期があり、喧嘩してしまうこともある、そして突然の悲しい別れ、、、。
    文字から伝わる二人のストーリー、文字の配置からも感情が伝わってくる、一読、二読と短歌として、小説としても味わえる作品だと思います。

  • 『短歌があるじゃないか』(角川書店)を読み終え、次は穂村弘さんと東直子さんの短歌を読んでみることに。
    アマチュア歌人のみなさんの短歌もとても面白かったのですが、本書ではお二人のプロの力を見せつけられました。

    穂村さんと東さんがメールで交換しながら作成した短歌と散文で紡がれる、1組の男女の恋の物語。
    三十一文字の短歌と短い会話のような散文から滲み出すものすごく豊かな情景に圧倒されました。
    文字で書かれていないのに、「きっと彼らはこんなことを面白がって、2人でくすくす笑うだろう」とか、「たぶんこんな表情を浮かべているんだろう」ということが頭に次々と浮かんでくるのが不思議です。
    小説よりも読者に委ねられた余白が多いはずなのに。
    恋愛をしているときの満ち足りているようで、だけれどもアンバランスな感じにくらくらしつつ読了。

    ふと読み返したくなる中毒性高し。
    常備薬のように手元に置いておきたい1冊です。

  • 恋愛短歌のせめぎ合い。
    中心から同距離を保って、相手の言葉を受け止めて、同じ温度で返してゆく。おそらく時間も。

    中心からの距離が違っても崩れるし、温度が違っても受け止められない。

    冷えている時は冷えているなりに、
    熱い時は熱いなりに。

    温度差があるとうまくいかない。

    シーソーで遊ぶように、短歌で戯れ合う本。
    実話?

    限られた字数に想いを込める。
    私たちは、いつでも、何でも、話せると思って、喋りすぎなのかもしれない。

  • この本はNHKドラマ「この声を君に」に登場した。

    発熱中の麻生久美子(朗読教室の先生)が
    堅物の竹野内豊(大学の数学教師)に
    この本を読んで、と言う。
    本に掲載された艶めかしい短歌の数々を
    すっかり覚えている彼女。
    おろおろするばかりの彼。

    頑なに男性を拒む彼女と、不器用すぎる彼は
    恋愛への扉の前で行ったり来たりしている。
    にも関わらず彼女は、熱のせいもあって
    まるで彼を誘うようにつぶやく。

    隕石で手をあたためていましたが
    こぼれてしまう これはなんなの

    (ちくま文庫「回転ドアは、順番に」P60
     出版社: 筑摩書房
     ISBN-10: 4480423885
     ISBN-13: 978-4480423887)

    何なんでしょう。このエロス。
    とろりとした透明の液体に落とされたような
    不思議な感覚があまりに印象的で
    即 読んでみた。

    裏表紙に
    「ある男女が ある春の日に出会い
    ある春の日に別れるまでの恋愛問答歌」
    と書いてあって、はじめは
    著者である歌人の穂村弘さんと東直子さんが
    本当に恋愛関係にあったのかと思ったが
    そうではなく、お二方が純粋に創作した
    恋愛詩歌の往復メールをまとめたものなのであった。

    子猫のように言葉と文字をころがし
    ジャグラーのようにぽんぽんと宙に放り投げる才能が
    激しくうらやましい。
    私も短歌やってみたい…と少し思った。

    人は恋をすると 多かれ少なかれ
    ふにゃふにゃのよれよれになるわけだが
    現在熱愛中の人がこの本を読んだら
    どんな反応をするだろう。
    ?の顔でスルーするのか 身もだえするのか
    こっそりのぞいてみたい。

  • 二人の歌人が詩歌で仮想恋愛。
    愛がどんどん加速していく感がリアル。
    だけど、どこかフワフワと掴めない空気を感じる。
    恋って、愛ってもしかして宇宙なのかなあ。。。
    穂村氏の言う「2001年近所の旅」はまさにキューブリックの世界なのかも。

  • 言葉も知らないくせに、赤ちゃんは話をしたがる。

    あ~、とか
    だぁ~とか、
    うぅぷとか、

    何?
    何が言いたいの?
    何も伝わってないよ。

    そうか。
    でも、嬉しいよね。
    生まれてきたんだもの。
    生きてる事がきっととんでもなく嬉しいんだよね。

    きっと、どんなものでもキラキラ見える。
    生きているのが(恋してるのが)
    楽しい事に気がつくと

    回転ドアも
    郵便局も
    ブルドックソースも
    月見バーガーさえも!

    穂村さんと東さん、
    二人の歌人が交互に詠んだ恋の歌は

    赤ちゃんが話す言葉みたいに自由で、それはもう
    怖いくらいにキラキラしていた。

    『遠くから 来る自転車をさがしてた 春の陽、瞳、眩しい、どなた』

    • MOTOさん
      円軌道の外さんへ

      いやぁ~、
      なんて上手い
      褒め言葉なんやろ♪

      レビュー書くのますます楽しくなってしまいそうやし(^^♪

      恋の歌は誰が...
      円軌道の外さんへ

      いやぁ~、
      なんて上手い
      褒め言葉なんやろ♪

      レビュー書くのますます楽しくなってしまいそうやし(^^♪

      恋の歌は誰が歌ってもキラキラしてるもんやけど、
      気恥ずかしい言葉を使わなくてもキラキラしてるとこが、好きだなーと感じた短歌集です。

      楽しいですよっ☆
      2012/07/16
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「全部網羅読みするのが楽しみ」
      判ります。
      私も同じなんです、、、←但しとってもスローですが。。。
      「全部網羅読みするのが楽しみ」
      判ります。
      私も同じなんです、、、←但しとってもスローですが。。。
      2012/07/19
    • MOTOさん
      nyancomaruさんへ

      私もスローです。
      読み進んでいる間に、また好きな作家さんが出来て、ますます<これから読む本>は増え続けていきま...
      nyancomaruさんへ

      私もスローです。
      読み進んでいる間に、また好きな作家さんが出来て、ますます<これから読む本>は増え続けていきます…

      一日24時間の他に<読書の為のサービス的な時間>が欲しいです♪
      2012/07/20
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著者プロフィール

穂村 弘(ほむら・ひろし):1962年北海道生まれ。歌人。1990年に歌集『シンジケート』でデビュー。短歌にとどまることなく、エッセイや評論、絵本、翻訳など広く活躍中。著書に『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』、『ラインマーカーズ』、『世界音痴』『もうおうちへかえりましょう』『絶叫委員会』『にょっ記』『野良猫を尊敬した日』『短歌のガチャポン』など多数。2008年、短歌評論集『短歌の友人』で伊藤整文学賞、2017年、エッセイ集『鳥肌が』で講談社エッセイ賞、2018年、歌集『水中翼船炎上中』で若山牧水賞を受賞。

「2023年 『彗星交叉点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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