しくじった皇帝たち (ちくま文庫 た 37-6)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480423993

感想・レビュー・書評

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  • [評価]
    ★★★★☆ 星4つ

    [感想]
    本書では随の皇帝『煬帝』と幸田露伴の『運命』に関する内容となっている。
    『煬帝』は一般的には悪逆非道の暴君であると言われているが実際に何を行ったために暴君と呼ばれているのかは、詳しくは知らなかったし、それが事実なのかということも考えたことがなかった。
    実際のところ、随の最後の皇帝だから悪く書かれている部分も多いということが分かったし、南北を結ぶ運河は後々の時代まで有効活用されていることを考えると功罪相半ばと言った感じだろうか。
    まあ、国家が疲労しているのに大規模な遠征を行ったことは失策と言ってよいのかもしれない。
    幸田露伴の『運命』は建文帝の建文出亡伝説について書いた小説で様々な人が傑作と褒め称えていたらしい。
    しかし、その内容が漢文の『明史紀事本末』を読み下した内容で、露伴自身の文章はほとんど含まれていないということには驚いた。
    著者は明治になり、時代が進むに連れて知識人が漢文との縁が薄くなったということがわかるのが面白い

  •  小中学生向けの学習まんがを読んでいたら、明の建文帝が出てきた。建文出亡伝説には触れていない。ただ「行方不明」とだけある。そこで『しくじった皇帝たち』を再読する気になった。ついでに前半の「隋の煬帝」も読んでしまう。後半、しくじったのは皇帝というより幸田露伴の方だろう。
     漢文の書き下し文に出てくる漢字で読めないものが多い。「彬」を音読みで「ひん」など、調べないと判らない。日暮れて道遠し。

  • 「皇帝たち」というタイトルとは裏腹に、煬帝と建文帝という二人の話のみ。建文帝に関しては皇帝がしくじったというよりは、その皇帝についての著作を行った幸田露伴がやらかした件をほじくり返している内容。従って「しくじった皇帝たち」と言われても、「そんなか?」という読後感想になる。文自体はまあ読みやすいが、この著者の特徴として話は常に上から目線なので、それが気にならないなら。

  • [ 内容 ]
    父から受け継いだ巨額の富を浪費し、建国から二代で亡国の憂き目に遭った隋の煬帝。
    悪逆非道の暴君で名高いが、父を殺し帝位を奪ったのは事実か。
    祖父から帝位を継ぐや否や奸計を巡らし次々と叔父たちの王国を取り潰した明の建文帝。
    燕王率いる叛乱軍の侵攻による落城の猛火の中を逃げのびたとされるのは事実か。
    国家経営をしくじった二人の皇帝―その興亡の顛末をホントとつくり話の襞にわけいり、史実の闇に光をあてた歴史評伝。

    [ 目次 ]
    隋の煬帝(さあ煬帝のお話のはじまりだ;煬帝はホントに「父殺しの大罪」をおかしたのか;父の遺産を気前よく使って;大臣が叛乱をおこしたl乱世の英雄はこの人、李蜜だ;みじめな煬帝の最期)
    露伴『運命』と建文出亡伝説(『運命』と建文出亡伝説;「自跋」について;『駿台雑話』の建文帝;建文帝はどうなったのか?)

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 隋の煬帝を擁護というか客観的かつ面白く解説してくれる良書。
    後半は幸田露伴先生の汚点に迫る。

  • 古本で購入。

    隋の煬帝と明の建文帝、偉大なる父が築いた王朝を失った2人の二代目。
    この「しくじった皇帝たち」を、中国史読み物の名手・高島俊男が切る!という感じ。

    収められた2篇のひとつ目、「隋の煬帝」は高校1年生を読者に想定した、語りかけ形式の文章。
    書いてあることは煬帝にまつわる概説と言っていいのだが、著者の煬帝評がいい。

    曰く「ふつう」。

    Q.煬帝は宮殿の造営や大運河の開削を盛んに行いゼイタクである。そして労働力の徴発と度重なる戦争で人をたくさん殺した。悪虐無道の暴君ではないか!
    A.皇帝はみんなゼイタクだし、皇帝はたいてい人をたくさん殺す。これらの点でも煬帝はふつう程度。

    隋を滅ぼし、“隋の歴史を編纂した”唐の書くまま煬帝を暴君としてきた「常識」にハナをひっかけるようなバッサリ感がたまらない。
    唐高祖・李淵を「偽善者」と両断するのもいいですね。

    残る1篇は「露伴『運命』と建文出亡伝説」。
    叔父の燕王(永楽帝)に攻められ、燃え盛る宮城に消えた建文帝の「出亡(脱出逃亡)」伝説を素材とした、幸田露伴「生涯第一の傑作」とされる『運命』が、いかにタネ本『明史紀事本末』そのままであり、いかに文章(原文含め)がたいしたことなく、それを無批判に激賞してきた昭和期の知識人がいかにダメかをバッサバッサと切りまくる。
    ついには「露伴はやっぱり二流だなあ」と高島センセイ。すごいな。

    「皇帝たち」と言いながら出てくるのが2人だったり、内ひとりは話のメインでさえなかったり、加筆部分の文体が変わっていたり、やや残念な本なのは確か。
    ただ高島俊男の本がおもしろいのもまた確かなので、読み物として読むのが○。
    高島節に触れるなら、まずは『中国の大盗賊』(講談社現代新書)がいいかも。

  • 「しくじった皇帝たち」とあるけど、隋の煬帝はともかく明の建文帝の方は、ほとんど幸田露伴の『運命』に関して書かれている。読みやすく、面白いことは面白いんだけどやっぱりちぐはぐな印象は拭えない。

  • 煬帝の話はまぁまぁ面白かったが、後半の露伴批判は後味がものすごく悪い。

  • 随の煬帝と明の建文帝のお話。
    煬帝は不当に非難されているので名誉を回復しようというお話。
    建文帝は幸田露伴の「運命」批判。

  • 絶対に面白いと思って購入したら、やっぱりとっても面白かった文庫。
    とにかく面白い。中国史が好きでも嫌いでも、詳しくても初体験でも読むといい。
    中国入門としては田中芳樹さんの『中国武将列伝』を長く押してましたが、
    多くの人物を知るにはいいけどちょこっと1人あたりの文章量が少なく、
    面白いとのめりこむなら高島さんかなぁ、と思う今日この頃。

    この『しくじった皇帝たち』は大きく分けて二本立て。
    隋の煬帝と、幸田露伴の『運命』の建文帝について。
    どこか面白いとこを抜き出して書こうと、パラパラめくっていますが、
    どこも面白くてどうにも抜き出せません。とりあえず読むといいです。

    煬帝っていうと私も親殺しで戦争するわ運河掘りまくるわ散財するわの
    暴君・暗君の印象がかなーり強かったので読んでいて目から鱗がポロポロ。
    幸田露伴の『運命』も知ってはいましたが、
    どこまで史実でどこから創作なんだろうかと思ったりしていたので
    まあ原文も含めいろいろ読んでいてとっても意外でびっくりしました。
    面白いですよ、これ、ほんと。騙されたと思って読むといい。

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著者プロフィール

高島 俊男(たかしま・としお):1937年生れ、兵庫県相生市出身。東京大学大学院修了。中国文学専攻。『本が好き、悪口言うのはもっと好き』で第11回講談社エッセイ賞受賞。長年にわたり「週刊文春」で「お言葉ですが…」を連載。主な著書に『中国の大盗賊・完全版』『漢字雑談』『漢字と日本語』(講談社現代新書)、『お言葉ですが…』シリーズ(文春文庫、連合出版)、『水滸伝の世界』『三国志きらめく群像』『漱石の夏やすみ』『水滸伝と日本人』『しくじった皇帝たち』(ちくま文庫)等がある。2021年、没。

「2023年 『「最後の」お言葉ですが・・・』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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