ダブリンの人びと (ちくま文庫 し 30-1)

  • 筑摩書房
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (476ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480424105

作品紹介・あらすじ

20世紀初頭に書かれた、『姉妹』から『死者たち』までの15篇を収めた初期の短篇集。ダブリンに住む人びとの日常が淡々と綴られていく。人間の姿をリアルに描くことで、その愚かしさ、醜さ、滑稽さを際立たせ、陰鬱のなかに喜劇の要素があることを示した芸術性の高い作品。各短篇のていねいな注釈、解説、地図を付した。リズミカルで斬新な新訳。

感想・レビュー・書評

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  • 「ユリシーズ」で知られるジョイスの15編の短編から成る短編集。それぞれの作品同士がリンクしたり、(読んでいないけど)「ユリシーズ」とのリンクがあったり、連想させる言葉がそこかしこで繋がっていたり、読んでいて結構頭を使うというか、きちんと読んでいきたい一冊。今回はそこまで力を入れて読んでいないので、是非再読したい。ダブリンの地図が付いていて、作中、登場人物がどこを歩いたかなどわかるようになっているので、街中を想像しながら読むのも面白いです。

  • 一見何気ない日常の一環だけど、登場人物にとっては心を揺さぶられるような出来事を淡々と描く短編集。故郷であるアイルランドの対するジョイスのやや屈折した思いが下地になっている旨の解説があったが、そこまでは読み切れなかった。ただ、『ユリシーズ』(東大英文科のお三人さんによる翻訳もの)の文体と違ってすごく読み易いことにちょっと驚かされた(もっともその翻訳『ユリシーズ』はユリシーズたる傑作をいかに和訳すれば原典を忠実に日本語という言語上で再構成させられるかを徹底的に吟味したうえでの翻訳であることはその作品自体から汲み取れるので、そういう意味で素晴らしい翻訳であることは間違いないと思う)。これは、そもそも原典がそういう違いがあるのかあるいは訳者の違いによるのかは想像が及ばない。そして、こういった浮き沈みのないストーリーをきちんと読ませる筆力と構成力と文章力が確固としている作品をやっぱり大好きだ。

  • 《目次》
    ・「姉妹」
    ・「ある出会い」
    ・「アラビー」
    ・「イーヴリン」
    ・「レースのあとで」
    ・「二人の伊達男」
    ・「下宿屋」
    ・「小さな雲」
    ・「対応」
    ・「土」
    ・「痛ましい事故」
    ・「委員会室の蔦の日[アイビー・デイ]」
    ・「母親」
    ・「恩寵」
    ・「死者たち」

  • 2019年9月8日に紹介されました!

  • 100年も昔のこととなる、あのアイルランドのあの時代。
    登場人物に繋がりがあったりもなかったりもする短篇集。
    各話の冒頭に市街地の地図が掲示され、人物の移動経路やランドマークが目で確認できるようになっています。
    巻末の訳注と解説も一話一話じつに丁寧に精密に噛み砕かれ、なんとも濃密な集中講義を受けたような充実感がありました。
    これは贅沢。さすがちくま。

    米本義孝氏の解説によれば、
    -------------------------
    ジョイスは十五の短篇でダブリンのありさまを四つの相のもとに提示した。つまり、〈少年期〉三篇、〈青年期〉四篇、〈成年期〉四篇、〈社会生活期〉三篇(『死者たち』はあとから付け加えられた)の順序に並べ、その大部分を「用意周到に言葉をけちった文体」で書いた。
    -------------------------
    ということです。
    『言葉の芸術家ジェイムズ・ジョイス――「ダブリンの人びと」研究』の著書もある米本氏の闊達な読み解きはとても腑に落ちる。


    これだけ時と場所を隔てた作品なのに、逃げ場のない人々の痛ましさに胸をいためるし、緊迫した会話の行方にはらはらするし。
    本というものは凄いものだな、と改めて嬉しく思います。

    ジョイスの作品といえば『フィネガンズ・ウェイク』は死ぬ気でなんとか通読した…というより、ただの意地で眺めとおしただけというか。
    未読の『ユリシーズ』もそのうちになんとか。

  • 読み比べその2。帯曰く「新訳」だった様子。
    最終的にこの一冊を購入(そう、そもそもどのバージョンを購入するかという検討の為にこの耐久戦を始めたのだった…)。
    決め手は「訳注と解説」が一番細かくて丁寧であること。
    あと訳も好ましかった(どこがどうとは言えないが、自然さというか…)。

  • ダブリンの人々日常生活の断片を切り取ってを描いた連作短篇集。バルザックの人物再登場の手法で再登場する人物もいる。ユリシーズにもつながるらしい。どれもよかったが最後の「死者たち」を読み終えて心が洗われた。地図とそれぞれの作品ごとの解説がいい。独立前のアイルランドは革命前のロシアとある意味似ている。上流階級の外国被れとある意味素朴な下層階級。亡命先でダブリンの麻痺する人々を書いたジョイスは外国で「父と子」でインテリゲンツィアを書いたツルゲーネフにもダブる。

  • 街並が浮かんでくるような表現。タイトルが出ないんだけど、子供が島を離れて出会ったおじさんに語られる……話が気持ち悪かった。あと最後の話の料理が……美味しそうで……。

  • 未読だが、新訳。

  • 淡々と、ただひたすらに淡々と20世紀初頭のダブリンに住む人々の生活が描かれている。

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著者プロフィール

James Joyce(James Augustine Aloysius Joyce )【1882年 – 1941年】。本原書名 James Joyce 『Exiles A Play in Three Acts With the Author's Own Notes and an Introduction by Padraic Colum, Jonathan Cape, Thirty Bedford Square, London, 1952』。

「1991年 『さまよえる人たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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