サヨナラ、学校化社会 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 288
レビュー : 24
  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480424600

作品紹介・あらすじ

93年、東大に移ってきた上野先生は驚いた。なんて素直な、課題を効率よくこなす学生なんだ、と。そして怒り心頭に発した。レポートがどれも講義の要約だったからだ。…「国民」を育てる近代装置である学校。変革の時代にこのシステムの弊害は大きい。知識よりも知恵があり、どんな状況にもサバイバルできる能力を備えた人間を育てるにはどうしたらいいのか。実践的マニフェスト。

感想・レビュー・書評

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  • 今春の東大入学式でのスピーチが話題になったが、2002年に書かれたこの本ですでに、「やればできる、と思えている君たちのその能力は、君たちが自分で獲得したものではない。それはまわりが君たちに与えてくれた環境のおかげだ。やらせてくれ、できれば褒めてくれ、伸ばしてくれるという環境があってはじめて、やればできる、と思えてきたんだ」(15ページ)と東大の学生たちに言うのだと書かれているので、なんで今回のあいさつがこんなにも話題になったのかと御本人がおどろくのももっともだし、なるほど学力格差の正体の一端に世間がようやく気づき始めたといういいタイミングだったのかもしれないとも思ったり。
    それにしても、一人の教員が20年近く東大でこういう問題意識をもって教壇にたって発言&実践を重ねてきたにもかかわらず、けっきょくたいして変わらないんだなぁ。まあ、それでも自分が信じる最善を尽くしていく他ないのだろうけれど…

  • 東大生批判に止まらない本でした。細かい注釈も浅学のわたしにはありがたく、楽しく読ませてもらいました。教授から貸していただいた本でしたが、何年も前の本とは思えない鋭い切れ味でした。東大の祝辞の件といい、抱えている不満をズバズバと言ってくださり嬉しく思います。

  • それが何の役に立つのか、という問いは学芸の楽しみを求める人にはそもそも禁句。

  • 注釈読むだけでも、めっちゃ勉強になった。そして最後の一文に撃たれた。
    いま、自分になにがキモチいいかという感覚を鈍らせないことです。それこそが「生きる力」なのですから。

  • とにかくどの一文も面白く、笑わされ、そして考えさせられながら読みました。もちろん、自分にあてはまるものは恥ずかしいけど、ここまではっきり指摘されると(笑)。

    2008年の著作。最後の2つの章を読むにつけても、リンダグラットン氏より前にLIFE SHIFTをある意味予言したようなものですね。一足先に未来の状況を見抜いていらした感じがいたします。

  • まさしく私が受けてきた教育はそうだ。
    一例をあげると、子供から老人までもが自分の将来に押し潰されそうになりながら今を生きている。

    そんな私が黒いと思ってたものが実は白だったり、
    その逆だったり。

    学校&家&地域が一体化して子供を育てるのが良いことか?
    祖父母が甘くて親と違うこと言うのは、悪いことか?
    フリーターや引きこもりは悪なのか?
    まだまだ自分が一方的なものの見方をしていたのが分かる。

    いろいろな高校でも講演をやっているらしいが
    この人を講師に招待した時点でその高校は
    なかなかイイ線いってるんじゃないだろうか?

    注釈が多いですけど、字が小さいのでだいたい飛ばしました。

  • 「劣等性の不満、優等生の不安」テストの結果が悪ければ残される。小言も言われる。生徒には不満が残る。やる気が出なくなる。勉強しない。また悪い結果になる。この悪循環を抜け出さない限り、格差は広まるばかり。偏差値60を取った生徒は、次もがんばるように言われる。でも、次も同じ結果になる保証はない。次のテストが怖い。不安になる。勉強自体が楽しく、成績の上がり下がりはそれほど気にならなければよい。けれどそうでない子どもたちが多い。学校では、皆が同じところからスタートする。という建て前になっている。だから、うまくいかないのは自分の努力が足りないからだと思わされている。先生の教え方がどうかは棚に上げられている。「がんばれ、次こそがんばれ、がんばれば何とかなる。」やればできると皆が思っている。思わされている。私自身が日々、現実に目の当たりにしていることばかり。そして、大人の社会・会社も学校と同じような状況になっている。ここから抜け出すことはできるのか。そのヒントが本書には数多くちりばめられています。ところで、京都精華大学は偏差値四流校なのだそうだ。私は、20年位前には、「精華大にはおもしろい先生がいるよ。」と生徒たちに言っていた。それは柴谷学長(当時)であり、生物学の斎藤光であり、本書の著者だった。講演会にも頻繁に通ったし(茂木健一郎のサインももらった)、芸術学部はおもしろそうだったし、人文学部のフィールドワークなんかも興味深かった(本書でも触れられている)。社会に出ると偏差値なんて・・・と思うんだけど、社会に出るにあたっては、まだまだ偏差値は高いほうがいいようだ。「京大出身? ふーん。で?・・・」さあ、その質問になんて答える? 京大出身のア・ナ・タ。(解説もおもしろい。)

  • 京都精華大学から東京大学へ赴任し、まったくタイプの違う学生に接することになったときのカルチャー・ショックから始まって、学校的価値の本質に迫り、ポスト消費社会の生き方にまで説き及んだ本です。

    「学問とは自分がスッキリしたいための、死ぬまでの極道」という著者の姿勢に、多田道太郎や加藤秀俊などの学者を輩出した、京都大学出身者としての矜持がのぞいているような気がします。

    北田暁大の解説「「で?」という問い」も、おもしろくて読み応えがあります。

  • 上野さんの著書を、実ははじめて読んだかもしれない。
    学校は授業だけに注力してくれればいい、というのがいちばんの主張?それに付随して、きちんと社会のそれぞれの場所がそれぞれの役割を果たしてくれればいいと考えているのかなあ。
    けっこういろんな話に飛んでいくので、いちばん言いたいことがなんだったのか正確にはわからないけど、学校は授業だけ、というのは共感できかねる。
    とにかく上野さんの経歴というか、存在感がすごい、というのは伝わってきた。

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著者プロフィール

上野千鶴子(うえの ちづこ)
1948年富山県生まれの研究者。専攻は社会学で、女性学やジェンダー研究の第一人者として知られる。東京大学名誉教授。著書に『近代家族の成立と終焉』、『家父長制と資本』(岩波書店)、『おひとりさまの老後』(文春文庫)、『女ぎらい』(紀伊國屋書店)、『ケアの社会学』(太田出版)、『サヨナラ、学校化社会』など多数。

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