源氏物語 桐壺~賢木 (第1巻) (ちくま文庫)

  • 筑摩書房 (2008年11月1日発売)
3.59
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感想 : 15
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  • 本 ・本
  • / ISBN・EAN: 9784480424815

感想・レビュー・書評

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  • 古典エッセイスト・大塚ひかりによる『源氏物語』の個人全訳。
    随所に入る「ひかりナビ」解説で読むべきツボもおさえた一冊。
    全6巻中の第一巻、「桐壺」から「賢木」までの10帖を収録しています。


    この所ドラマなどでも話題の日本の古典文学と言えば、やっぱり『源氏物語』。
    『源氏物語』には、瀬戸内寂聴さんや谷崎潤一郎さん、角田光代さんなど様々な訳者のバージョンが存在していますが、私はこちらの大塚ひかりさんの訳したバージョンが楽しく、読みやすいと思っています。

    原文の雰囲気も残しつつ、随所に入る「ひかりナビ」では歯に衣着せぬ言い方でざっくばらんに解説やツッコミが入り、当時の風俗なども詳しく知れます。
    この部分は〇〇という説と××という説があるけど、私はこういう理由で〇〇説を採用して訳しました、等という説明もきっちり入るのも嬉しいです。
    例えば『あさきゆめみし』や国語の教科書などでざっくりストーリーを理解している、というような感じだと、漠然と考えていた登場人物に対する印象もがらっと変わるかもしれません。

    こういってはなんだけど、学生時代母の『あさきゆめみし』を読ませてもらって以来ずっと、正直光源氏っていけすかないなと思っていたんですが、いやいやそんな浅い知識で何をと。きちんと読み込んだら数多の女性が虜になる訳が分かるはずと思って読んで、1巻だけですが読了して、やっぱり苦手だな光源氏と改めて思いました(笑)
    特に六条御息所や藤壺、紫の上との関係なんか、こちらの現代感覚・女性目線はあるにしろ、かわいそうで見ていられないです。容易に手に入らない女性にばかり粉をかけて、本当にイイ趣味してますよね……。

    ちょっと熱くなってしまいましたが、源氏の人間性はともかく、古典文学といって連想する品の良い感じではないんですが、読みやすさならトップクラスかと思います。
    付録として、当時の信仰の背景なんかも載っていて、それも興味深かった。
    他の訳本に比べると少々入手し辛いのが難点かもしれません。

  • 逐語訳とは言え、原文テイストも強めなので、大塚さんの解説有難し。
    光源氏のクズっぷりに苦笑いしつつ、男女の関係の機微は今も昔も変わらないじゃん!というのが率直な感想。
    6巻読み進められるか、不安。、

  • 元祖昼ドラ…
    源氏の藤壺に対するストーカー振りがホントにヤバイっす。

  • 「はじめに」と題した前書き部分には、次のように記されている。
    《古典は、できれば原文を読んだほうがいい。
    全部とはいわない、一部だけでも原文を味わってほしい、そのリズムや言葉の妙や時代背景をカラダで感じてほしい。
    そんな願いをこめて全訳した。なので、心がけたのは、原文重視の逐語訳、それでいて「分かる『源氏物語』」である。
    要するに、今まで自分が欲しかった全訳を目指したのである。》

    人気の古典エッセイストである大塚ひかりさんの本は、これまでにもいくつか読んで愉しませてもらったが、この『大塚ひかり全訳 源氏物語』も期待を裏切らない出来映えだった。学術的には、「エッ?」と思う部分も少しはあるけれど、それは彼女なりの解釈であって間違いではないし、学者さんの訳ではないから問題ではない。というより、誤訳に気づかない学者さんもいるから、それと比べれば、こちらのほうが学術的にも優れている。

    そして、『大塚ひかり全訳 源氏物語』の素晴らしさは、何といっても原文が持つリズムを失わずに、なおかつ分かりやすく書かれているところ。『源氏物語』に関するエッセイを書いて来られた大塚ひかりさんならではの内容の濃さであり、実に面白くて愉しめる作品だと思った。

    現代語訳もさることながら、随所に表れる[ひかりナビ]も光っている。ここで物語の解説がなされるわけだが、時代背景や登場人物の輪郭がはっきりと浮かび上がって理解が深まる。単純にストーリーを追いかける現代語訳だと読み疲れてくるものだが、[ひかりナビ]の存在が従来とはひと味もふた味も違った味わいを演出している。現代語訳『源氏物語』の、新たなスタンダードといっても過言ではないだろう。

    この作品は全6巻からなり、第1巻には桐壺から帚木、空蝉、夕顔、若紫、末摘花、紅葉賀、花の宴、葵、賢木までの10帖を収録。

    本の内容
    『源氏物語』を現代に通じる物語として鋭く読み解いてきた古典エッセイスト・大塚ひかり個人全訳。原文を重視した逐語訳でありながら、人物像や心理が際立ち、平安朝の物語が現代に通じる非常にリアリティのある物語として読める。随所に配された「ひかりナビ」という解説によって読むべき「ツボ」も押さえられ、さらに納得度が深くなる。第一巻は光源氏出生から二十台前半の「桐壺」~「賢木」。

    著者情報
    大塚 ひかり(オオツカ ヒカリ)
    エッセイスト。1961年、神奈川県生れ、早稲田大学第一文学部日本史学専攻卒業。出版社勤務を経て、1988年、失恋体験を綴った『いつの日か別の日か—みつばちの孤独』(主婦の友社)以後、古典エッセイが多数ある。

  • 大河ドラマ『光る君へ』(2024年)を見ていたら『源氏物語』を読みたくなったので、本書を手に取りました。この第一巻には、「桐壺」から「賢木」までの10帖が収録されています。

    大塚ひかりさんは、敷居の高い古典を、現代人にわかりやすいようユーモラスかつカジュアルに解説してくれるので、この人の訳なら楽しく読めるのではと、2008年発売時に全6巻を購入したのでした。

    本書の一番の特色は、本文中に〈ひかりナビ〉という解説がたびたび挿入されること。背景知識や歌の出典などが解説されています。ただ、その後のネタバレになるようなことがしれっと書かれていたり、大塚さんの個人的な解釈が「〜だと私は思います」などと書いてあったりするので、読む人によっては評価が分かれそう。

    訳文については、「はじめに」によると、〈原文重視の逐語訳、それでいて「わかる『源氏物語』」〉を心がけた、とのこと。現代語にすると不自然になってしまうような敬語や謙譲語は最低限に抑え、〈主語を補った〉とあります。

    がしかし、私にはこの訳文は合いませんでした。途中で何度も投げ出そうとしましたが、せめてなんとか1巻だけは読んで、続きは他の人の訳に切り替えようと決めて、流すように読んでいました。でも10帖も収録されていて、〈ひかりナビ〉もちょくちょく挟まるので、読んでも読んでも終わらない。おかげで3ヶ月以上かかってしまった。

    主語を補ったとあるものの、どういうことなのかさっぱりわからないことが多々ありました。表情とセリフと心情が一致せずちぐはぐなシーンもあるし、登場人物が心中で思っていることもカギかっこで括られているので、セリフかと思って読んでいたら違ったなんてこともちょくちょく。「帝」を「ミカド」とカタカナ表記にしているのもなぜなのかわからないし、「〜につけても」が多すぎるし、理解を促すためにあえてなのかもしれませんが品のない言葉が使われていたり、全然物語の中に入り込めなかった。

    こんな状況では、この本だけではとうてい読み通せる気がしないので、先に少し触れましたが他の人の訳本も並行して読んでいます。瀬戸内寂聴訳と、角田光代訳です。寂聴訳はうちに3冊だけあるのでとりあえずある分だけ読みますが、角田訳のほうは全巻購入したので(詳しくはそれぞれの感想に書きます)、今後は角田訳をメインに読んでいくことにします。

    自分のメモとして、この三者の訳をいくつか比較しておきます。

    まず「帚木」の帖、大塚訳に 〈お手紙はいつもあります〉といきなりこの一文で始まる段落があって、「手紙がいつもある」とはどういうことなのかわからなかったので寂聴訳を見てみたら〈女へのお手紙も終始お持たせになります〉とあり、さらに角田訳では〈女の元には、光君からの手紙がしょっちゅう届く〉とあり、なるほどと理解できました。

    また「若紫」のワンシーン、大塚訳の〈「こちらへ」と言うと、膝をついて座っています〉という一文、「こちらへ」と促しているのにもうすでに座っているのはおかしいと思い、確認してみました。すると寂聴訳では〈「こちらへおいで」と呼び寄せますと、その子は尼君のそばへ来て畏まって坐りました〉とあり、角田訳では〈「こっちへいらっしゃい」と呼ぶと、女童はそこに膝をついて座る〉となっていて、納得できました。

    それから「末摘花」、大塚訳では〈ただ源氏の君のまれなお情けの魅力を拒めずにいたところ〉となっている箇所、「まれなお情けの魅力を拒む」とはいったいどういうことなのかさっぱりわからなかったのですが、寂聴訳〈源氏の君のほんの時たまこうしておかけ下さるお情けが慕わしくて、そんな関係を拒みきれないでいるのでした〉、角田訳〈ただ光君がほんのときたま掛けてくれるお情けがうれしく、そればかりを慕わしく待っているのだが、……〉と、ここもお二人のおかげでよくわかりました。

    他にも山ほど書き出してありますが、キリがないのでもう一箇所だけ。「賢木」、大塚訳の〈君は昔と変わったご境遇などを、とくに苦にすることもなく、このようなちょっとしたことに、気の紛れることもないまま、あれこれと心を悩ませています〉という一文、どういうことなのかまったく意味がわかりませんでしたが、寂聴訳では〈源氏の君は昔に変わる現在の、何かと不如意なご境遇などを、格別にお気にもされないで、このようなとりとめもない恋の遊戯を、お暇にまかせて試みては、あちらこちらと気を揉んでいらっしゃるのでした〉、角田訳では〈光君は以前とは様変わりした今の境遇をとくに気にすることもなく、朝顔の君に、右大臣家の六の君にと、とりとめのない恋に悩んでいる〉、とお二人の訳でようやく理解できました。

    本書の巻末にある「装束・内裏図・信仰の背景」という付録は、時代背景が図などで解説されていて、興味深く読めました。ただここでも、二巻以降の『源氏物語』全体の内容がガッツリ解説されちゃってます、けど、う〜ん……どうなんだろ、古典だからもうネタバレは時効というか、もう関係ないということなのだろうか。

    まぁとりあえずひと通り読み終えたのでホッとしています。ここから先は、他の人の訳で内容を楽しんでいけたらと思います。

  • p.2009/2/2

  • 2024.01.06読了

  • 和歌や文化的背景を解説した「ひかりナビ」がありがたい。今風の表現に徹したおかげで人物の関係や行動がわかる。原文にあたる前の一歩に最適だと思う。知識で知っていた有名な場面やイベントはこの10帖でだいたい起こっているのだな…。全6巻、あとも楽しみ。

  • 訳者による解説が堅苦しくなくて、読みやすいです。

  • 日本人なら誰しも知っている『源氏物語』が堅苦しくさを感じずに、楽に読める。
    あまりにも簡易すぎる箇所もありますが、読書の楽しみとして読むなら、十分な内容。
    充実のひかりナビがあるので、文化的背景や当時の文学的知識がなくても読めちゃいます。

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著者プロフィール

1961年横浜市生まれ。古典エッセイスト。早稲田大学第一文学部日本史学専攻。個人全訳『源氏物語』全六巻、『源氏の男はみんなサイテー』『カラダで感じる源氏物語』『ブス論』『愛とまぐはひの古事記』『女嫌いの平家物語』(以上、ちくま文庫)、『快楽でよみとく古典文学』(小学館)、『ひかりナビで読む竹取物語』(文春文庫)、『本当はひどかった昔の日本』(新潮社)など著書多数。

「2016年 『文庫 昔話はなぜ、お爺さんとお婆さんが主役なのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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