ちくま日本文学005 幸田文 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 181
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480425058

作品紹介・あらすじ

自らの足跡を刻むように文筆を続けた人。

感想・レビュー・書評

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  • 少し幸田文を読んでみたくて、ちくま日本文学。このシリーズは文庫とは言え、巻一に内田百けんを据えるなど、なかなか侮れないコレクションで、各冊も秀逸なアンソロジーとなっている。第5巻 幸田文も、父露伴を描いた『勲章』『蜜柑の花まで』、離婚に終わった自らの結婚生活を描いた『結婚雑談』『雛』といったエッセイ風の私小説から、秀逸な小説である『黒い裾』、あっと驚くラストが印象的な『段』『鳩』、そして自らの小学生時代の心象を鮮やかに描いた(そう、こんなに鮮やかに子供の頃の気持を覚えているものかと驚かされる)自伝的中編『みそっかす』とバラエティに豊み、偏らない。

  • 擬態語の独特な感じ、文の小気味よさ
    言葉の無駄のなさ、見て見てよく見ることからくる鋭い観察•洞察
    目に浮かぶ描写

  • 自伝的短編小説&随筆集。
    幸田露伴という偉大な父への深い敬愛の気持ちが全編にわたって溢れている。なんなら若干食傷気味になるくらい。
    文学史にも出てくるような幸田文の代表作は意外にも収録されていないのだけれど、本の後半全体を占める『みそっかす』が特に秀逸。作者の幼少期を綴った随筆で、歯切れの良い文章が利かん気の強い子供だったであろう作者の姿を生き生きと想像させてくれる。むかーし、国語の試験にこの作品から「父・露伴に毎朝百人一首を暗唱させられる」くだりが出題されていて、試験なのに引き込まれた思い出が…。
    続編があるようなので探して読んでみようかな。

  • 子供の頃の気持ちをこんなに覚えていて、書けるというのは、子供冥利に尽きる。
    日々の生活から、木や緑や、雨風の匂いがするような文章だった。
    安野光雅さんの解説も面白い。

  • ブックオフ秋葉原、¥500.

  • 幸田文の父への思い、離婚への思い、また様々なぐるりへの思いがよく伺える短編集。

    女性らしく、しかし男性にひけを取らない一本線と意地が垣間見られる幸田文。
    その意地が愛嬌のようにも思えてきてしまう。

    ハッとしたのが「段」。
    食事の段取りが順調にゆき、そのことに機嫌を良くした主人公が、だからこそ食事に間を空けたくないと思い、娘の使いが帰る前に酒を出す。
    その酒はメチルが混ぜられたものだと帰ってきた娘から聞かされ、呆然とするという内容である。

    淡々と刻まれていたリズムが、ぴん、と止まってしまう瞬間を感じた。面白かった。

  • 圧巻は『みそっかす』
    心映えも良く聡明だった姉歌子とやんちゃで愛された弟の間に挟まれて、満たされぬ思いを抱えながら成長していく文(あや)。

    往時の自分と家族を、成長した大人の目で見直しつつ綴られているので、内容が深いのだろう。

    父露伴の言葉の深さはもちろんだが、父方の親族の佇まいもそれぞれ端正である。義母と父の不和はつらかったにちがいなかろうが、まだ何者でもない若い文(あや)が、義母の悲しみをもしっかり受けとめているところなど、さすがである。

    枠にはまりきれない彼女を「将来楽しみ」と語ったという2人の恩師のエピソードがよかった。



    作成日時 2008年02月23日 14:56

  • 文さんの女の強さ、お母さんと継母さんのそれぞれの強さを感じる作品。
    当時はもっと、人の死が身近なことだったんだなと思いました。
    死の気配もしかり。
    そして、心の中で、それぞれが折り合いをつけて乗り越えていけていたんだなと。

    みそっかすが、家族の話がたくさんあってほほえましいです。
    こんなに自分のことで、きれいに文章をまとめられるってすごい!
    文には品があるのに、内容は本当にかわいらしい、そんな文章です。

    かっこいい女になりたいです。

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著者プロフィール

1904年東京向島生まれ。文豪幸田露伴の次女。女子学院卒。’28年結婚。10年間の結婚生活の後、娘玉を連れて離婚、幸田家に戻る。’47年父との思い出の記「雑記」「終焉」「葬送の記」を執筆。’56年『黒い裾』で読売文学賞、’57年『流れる』で日本藝術院賞、新潮社文学賞を受賞。他の作品に『おとうと』『闘』(女流文学賞)、没後刊行された『崩れ』『木』『台所のおと』(本書)『きもの』『季節のかたみ』等多数。1990年、86歳で逝去。


「2021年 『台所のおと 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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