- Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480425096
感想・レビュー・書評
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安吾の代表作をほぼ網羅した編纂本。小説もエッセイも初読の作品が並ぶけど、その作品が作家の体をなした徹底的に現実的な社会史観の語り部としての部分特に面白く読めた。
「続堕落論」の「文学は常に制度の、また、政治への反逆であり、人間の制度に対する復讐であり、しかして、その反逆と復讐によって政治に協力しているのだ。反逆自体が協力なのだ。愛情なのだ。これは文学の宿命であり、文学と政治との絶対不変の関係なのである。」。
日本文化史観の「法隆寺も平等院も焼けてしまって一向に困らぬ。必要ならば、法隆寺を取り壊して停車場をつくるがいい。我が民族の光輝ある文化や伝統は、そのことによって決して滅びはしないのである。(中略)必要ならば公園をひっくり返して菜園にせよ。それが真に必要ならば、必ずそこに真の美が生まれる。そこに真実の生活があるからだ。そうして、真に生活する限り、猿真似に恥じることはないのである。それが真実の生活である限り、猿真似にも、独創と同一の優越があるのである。」。
市井の善良な体をとる思考停止に対する冷徹な安吾の声。自分はきちんと思考しているか?いま改めて日本人としてしっかと彼の姿勢を受け止めたい。
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『新潮』に新発掘の安吾の探偵小説が掲載される、と聞いて読んでみようかと思ったところ、むしろ、今までまともに安吾を読んでこなかったなと思い直してこちらを読んだ。『桜の森の満開の下』くらいしか既読がなかった。
『白痴』『堕落論』『日本文化私観』あたりの迫力がすごかった。『勉強記』などの自伝的なものも面白い。著作はものすごい量だけどもっと読みたいなと思った。安吾、面白かった。
ところで『勉強記』の比較的頭の方に「尾籠な話で恐縮だが」で始まる文があり、どうもこの言葉には三島の日記のイメージが強くて、面白くなってしまった。次は三島を読もうかな…。 -
風博士の遺書が面白すぎる
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「堕落論」「白痴」といった代表的作品ほか、随筆・小説を合わせた計14篇収録(※青空文庫でも読めます)。端々に本人の実体験が織り込まれているため、冒頭だけでは随筆なのか小説なのか捉えかねる作品もあり、書き手自身と切り離さないほうが、より味わえる作家だと思いました。多分に毒を含んだ内容ながら、人間らしさやユーモアが見え隠れする描写で、粗野に感じられないのが不思議です。良い意味で中毒性がありました。
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・風博士
・村のひと騒ぎ
・FARCEに就て
・石の思い
・風と光と二十の私と
・勉強記
・日本文化私観
・堕落論
・続堕落論
・白痴
・金銭無情
・湯の町エレジー
・高千穂に冬雨ふれり
・桜の森の満開の下 -
おばあちゃんは坂口安吾と同時代を生きてきたんだなとなんとなく思って、そう思ったら文学がとても身近に感じた。たった50年60年前の日本なのに全然ちがう生活。あ〜でも人間がお金のことと色恋のことだけ考えて生きてるってのは今もそんな変わってないか。これから50年後どうなってるんだろうか。それを知るためにも生活を続けていくのも面白いかもしれないな。
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風博士/村のひと騒ぎ/FARCEに就て/石の思い/風と光と二十の私と/勉強記/日本文化私観/堕落論/続堕落論/白痴/金銭無情/湯の町エレジー/高千穂に冬雨ふれり/桜の森の満開の下
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日本の荒れた山賊の話はなぜこんなに魅惑的
桜が咲く前に「桜の森の満開の下」が読みたいな、と思ったのに、読めたのは5月も中ごろという。
「桜の森の満開の下」に「堕落論」「白痴」が入っているものを、となるとこの本になりました。
昔谷崎潤一郎を読んだ記憶があるちくま日本文学です。
堕落論と白痴は学生時代に読んだのですが、当時よりも味わい深く、楽しく読み終えることができました。
読むのには若すぎたのか。最近戦争関係の本を多少は読んだので、心得が違ったのか。
小説と随筆が混ざるなか、「石の思い」「風と光と二十の私と」での学生時代・代用教員の思い出話に沿って出てくる、白痴への思い、堕落への背景。それが戦中、戦後の「日本文化私観」「堕落論」「白痴」に結実するのでしょう。
「桜の森の満開の下」は初めて読んだのですが、芥川といい、日本の荒れた山賊の話はなぜこんなに魅惑的なのでしょう。桜の下に大勢の人が集まるのは、無人になった時の桜の力を怖れるかのようですね。
この作品を読む前と読んでからでは、桜への対応方法が変わってくると思います。来年の春は、一人で桜の下に行けないのでは。
ああ、思い出した。カレカノで出てくる話だ。
(彼氏彼女の事情)
この漫画を読んだ当時に読みたいなと思っていたのに、実際読むのには15年ほど間が空いてしまいました。 -
『村のひと騒ぎ』『堕落論』『続堕落論』『桜の森の満開の下』が良かった。
坂口安吾って、難しい人なんだなぁと思った…