坂口安吾 [ちくま日本文学009]

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 407
感想 : 49
  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480425096

感想・レビュー・書評

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  • これが初めての安吾。いつまでも7歳の心を大事にしていた人なんだなと思った。そのときそのときの自分の心の揺らぎを見なかったことにできないというのはなかなかハードなことだろうけれど(身近な人を振り回さざるを得ないだろうしね)、こういう人がある程度いないと世界が息苦しい。いてくれてよかった。以下よかったもの。

    「風博士」、「村のひと騒ぎ」。可笑しいんだけど、読み終わってみるとお祭りの後のようになにか物悲しい。「まあお話なんですけれど、本当にこういうのがあったらうれしいような気がしませんか」、って言われている気がする。

    自伝的な「石の思い」、「風と光と二十の私と」。子供時代のかなしみと潔癖。出来が悪くて教室にいたくなくて、自分の部屋で固まっていたころを思い出した。どうしてあんなに身の置き所がなかったかって、子供って自分のことをまだ引き受けられないんだよね。保護される身って辛い。ただ息をしているしかなくて。

    「桜の森の満開の下」。破滅的な美に魅入られる山賊の話。満開の桜を見上げたときの圧倒される感じ、リミッターを超えてしまいそうな感覚は、お花見をしたことがある人ならだれでも知っているわけだけれど、それをこういう風に魅力的な忌まわしさと絡めて描くなんて、やられたー、という気持ち。最後山賊は消滅してしまうわけだけれど、そういう後戻りできない禍々しい磁力にやれらて落ちるって、実際自分が吸い取られてしまうような体験なんだろう。

  • 安吾の代表作をほぼ網羅した編纂本。小説もエッセイも初読の作品が並ぶけど、その作品が作家の体をなした徹底的に現実的な社会史観の語り部としての部分特に面白く読めた。
    「続堕落論」の「文学は常に制度の、また、政治への反逆であり、人間の制度に対する復讐であり、しかして、その反逆と復讐によって政治に協力しているのだ。反逆自体が協力なのだ。愛情なのだ。これは文学の宿命であり、文学と政治との絶対不変の関係なのである。」。
    日本文化史観の「法隆寺も平等院も焼けてしまって一向に困らぬ。必要ならば、法隆寺を取り壊して停車場をつくるがいい。我が民族の光輝ある文化や伝統は、そのことによって決して滅びはしないのである。(中略)必要ならば公園をひっくり返して菜園にせよ。それが真に必要ならば、必ずそこに真の美が生まれる。そこに真実の生活があるからだ。そうして、真に生活する限り、猿真似に恥じることはないのである。それが真実の生活である限り、猿真似にも、独創と同一の優越があるのである。」。
    市井の善良な体をとる思考停止に対する冷徹な安吾の声。自分はきちんと思考しているか?いま改めて日本人としてしっかと彼の姿勢を受け止めたい。

  •  

  • 本書に収められている作品の中では、「桜の森の満開の下」が一番好きな話でした。幻想的かつ幽玄的な世界観、雰囲気に惹き込まれます。独特なリズムを持つ文体も魅力的です。

  • 僕の乏しい読書履歴。
    小学生の頃はふつうにスニーカー文庫とか読んでました。
    (今で言う「ラノベ」とは当時はちょっとニュアンスが違ったと思う)
    でも思春期から20代まで、読書を全然しない人間になってしまって。
    中学生の頃はホームズ全集を読んだだけ。
    高校生の頃は安野光雅の本を図書館で一冊借りただけ。
    『旅の絵本』が好きだったので。

    若い子は知らないと思うけど、昔『知ってるつもり?!』って番組があって、
    僕が高校生の頃、坂口安吾の回がありました。('96年の6月)
    TVの内容は全然覚えてないんだけど
    それがたぶん、めちゃくちゃ面白かったんでしょうね。
    次の週の現国の授業、小論文の課題かなにかに
    安吾のことをびっちりと書いた記憶があります。
    安吾を読んだこともないのに!!!(笑)

    今考えたらまったく意味不明で、
    「当時の俺はいったい何を考えてたんだろう・・・」と不思議になります。
    思春期ってほんと、変なことをやらかしてる。
    頭おかしかったんだろうか・・・。


    この、ちくま日本文学全集の坂口安吾のやつは
    読書をまったくしなくなった僕が、大学生の頃に唯一買った本。
    大学の生協でふら~っと、表紙に惹かれて。ジャケ買いですわな。
    なんかこれ、かわいいんですよ・・・。

    あとは
    『安吾なんて知らないよって あの娘は言った
    自分の事をボクと呼ぶ女の娘が増えている』
    の影響だったんじゃないかなあ。
    『夕暮れ模様の俺の部屋
    ニューヨークの音楽が鳴り響くときもある』
    ですね。

    最近になって、この表紙と装丁が安野光雅さんだと知ってびっくり。
    やっぱり安野さん良いなあ。

    それで、これさっき知ったんですけど
    ちくま文庫の松田哲夫さんってトマソンをやってた人なんですね。
    そりゃ好きになるわ・・・。
    安野光雅→松田哲夫→トマソン→赤瀬川原平→ネオダダ→磯崎新
    ってね。
    赤瀬川原平も磯崎新も、僕のGMTにゆかりがある方なので。

    磯崎建築は使いにくいって話もありますけど(笑)、
    県立図書館、旧県立図書館(現アートプラザ、展覧会したりするとこ)
    それから北九州に居た頃は市立図書館等々
    僕が通ってきた図書館は全部磯崎さんの設計したやつですので
    だいぶお世話にはなってるなあ。

    そんなわけで、ちくま文庫がより大好きになってきました。
    (本文と本の内容は関係ありません)

  • 桜の森の満開の下──なんとも女が美しい。山男に触れさせず一つ一つ美を構成していく様は理想。

  • 風博士の遺書が面白すぎる

  • 「堕落論」「白痴」といった代表的作品ほか、随筆・小説を合わせた計14篇収録(※青空文庫でも読めます)。端々に本人の実体験が織り込まれているため、冒頭だけでは随筆なのか小説なのか捉えかねる作品もあり、書き手自身と切り離さないほうが、より味わえる作家だと思いました。多分に毒を含んだ内容ながら、人間らしさやユーモアが見え隠れする描写で、粗野に感じられないのが不思議です。良い意味で中毒性がありました。

  • 高校生のころ、日本文化私観の一部分をたまたま読んでから坂口安吾ワールドにどっぷりハマった。
    その中でもこの本は安吾の代表作が多く収められており、重宝する一冊。

  • 「白痴」だけ読んだ。
    現実逃避のために女を匿ったのかなと思った。
    あの後、バットエンドにしかならないと思ったけど、主人公はそれを求めていたのかもしれない。

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著者プロフィール

戦前戦後にかけて活躍し日本文学の代表的作家。純文学のみならず歴史小説や推理小説を執筆。風俗から歴史から題材をとる随筆など多岐に活躍。

「2021年 『残酷な遊戯・花妖』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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