ちくま日本文学016 稲垣足穂 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 33
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480425164

感想・レビュー・書評

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  • 夢の記憶を書いたメモのような、なにかを暗示した詩のような、不思議な話たち。

  • 中身を理解するというより、読んでいるうち、自分が異空間にいるような、重量や時間、観念を越えた 美しく妖しい中に漂う感覚。

  •  アンソロジー。
     著者は、天文学が好きで月やら星やらのことをよく書いているようだ。他には少年愛や機械を好む傾向がある。日記的な作品を読むと、戦時中の灯火管制の下(星や月がよく見えただろう)このように楽しんでいたとすると、強かというかやるなと思う。
     「一千一秒物語」はたしかに楽しい。日本人的な作品ではない。現代でいうとこの話の短さは、リディアデイヴィスのようだ。しかし、内容としては、月や星をなんでそんなに急に殴りつけたりしたいのか不明だ。暴力的すぎるだろ。それから同じような話が何度も出てきて飽きる。星の粉をパンにしたり、星を飲んだり吸ったりしているのは、おいしそうではある。他にも「星を売る店」は詩的で素敵である。
     収録されている、「山ン本五郎左衛門退散仕る」はすごく面白い。原作は平太郎化物日記(稲生物怪録)として知られているもの。
     最後に収録されている「異物と滑翔」は読むのがものすごく苦痛な代物。澁澤龍彦感がある話題だが、訳のわからない独善的な文章で自分の妄想をベルクソンやらフロイトやらハイデガーやらフランスの詩人やらのことを引き合いに出してこじつけながら嬉しそうに話しているのが気持ち悪くてしょうがない。意味不明であり、主張していることも何ら正しいとは思えない。フロイトが過去の遺物になるに伴って、フロイトの話に依拠してきたこういう作品も唾棄すべきものとなるのは必然なのだろう。

  • 一千一秒物語は、たむらしげるさんのファンタスマゴリアの源泉だったりしないかなぁ、なんて思ったり。

  • 稲垣足穂 1900-1977
    「大阪・船場の生まれ。幼いころ兵庫県の明石に転じ、神戸界隈で育つ。少年時はヒコーキに熱中。関西学院卒業後、上京。はじめ飛行家、ついで画家をめざした。文学に転じたのち佐藤春夫の知己を得て「チョコレット」「星を造る人」を発表。イナガキ・タルホの名前で「一千一秒物語」を出す。放浪生活のかたわら、文壇とは遠いところで独特の作風による小説を書きつづけた。」(表紙カバーの折り返しより引用)

    どういう経歴だ、とつっこみつつ、作品を読むと妙に納得してしまう。

    「一千一秒物語」では、ひたすらお月様とお星様とケンカをしている気がする。カチン!パタン!ピシャ!という衝突音が聞こえて、目の前がチカチカしてくる。
    しかし、月や星を単純に擬人化しているのとも異なる。「ポケットの中の月」の冒頭を読んで、目が点になった。「ある夕方 お月様がポケットの中へ自分を入れて歩いていた」 こんな自由な一行は、どんなに純粋な子供にだって書けないのではないか。

    決まりめいたものから超越した、浮遊感のある世界。正直なところ、私には合わなくて、「一千一秒物語」と「チョコレット」だけで挫折してしまった。
    勿論メルヘンチックな作品ばかりではないし、『少年愛の美学』は読みたいと思ったこともあったが、本書の「異物と滑翔」すら読めそうにない。

  • カテゴリを小説にしていいものかどうか。

    クラフト・エヴィング商會にはまって以来、いつかは読んでみたいと思っていた稲垣足穂。ようやく読めました。
    んで、読んでようやく、本当の意味でクラフト・エヴィング商會を楽しめるような気もしています。

    リンクというかすべてが彼らにつながっているように感じました。しかしながら稲垣足穂のすべてを読んだわけではないので、まだまだこれからなんでしょうね。

  • めまいがする

  • しょわしょわとした炭酸水のような軽やかさ。
    秋から冬にかけて読みたくなります。

    というのもお月さまや星やシガレットがふんだんに登場するのですよ。

    特に『一千一秒物語』という掌編がお勧めであります。
    ムーンライダーズのバンド名の由来は「THE MOONRIDERS」という一篇だったりするらしい。

    また『横寺日記』『雪ヶ谷日記』は足穂の星空観察日記でもあり、文系的星空の楽しみを満喫できる。

    『横寺日記』の9月22日より引用いたす。
    「はくちょうは頭上に、北斗は彼方に花を零したがごとく…こちら側にはカシオペアのWが往古の貴婦人の胸飾りのように輝いている。秋になって星に気付くのか、星に気付いて秋を知るのか…」

    月光のもとでひたって頂きたい。

  • どこかの街の情景が見えてくる。

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著者プロフィール

稲垣足穂(1900・12・26~1977・10・25) 小説家。大阪市船場生まれ。幼少期に兵庫・明石に移り、神戸で育つ。関西学院中学部卒業後、上京。飛行家、画家を志すが、佐藤春夫の知己を得て小説作品を発表。1923年、『一千一秒物語』を著す。新感覚派の一人として迎えらたが、30年代以降は不遇を託つ。戦後、『弥勒』『ヰタ・マキニカリス』『A感覚とV感覚』などを発表し、注目を集める。50年に結婚、京都に移り、同人誌『作家』を主戦場に自作の改稿とエッセイを中心に旺盛に活動し始める。69年、『少年愛の美学』で第1回日本文学大賞受賞、『稲垣足穂大全』全6巻が刊行されるなど「タルホ・ブーム」が起こる。

「2020年 『稲垣足穂詩文集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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