菊池寛 (ちくま日本文学 27)

著者 :
  • 筑摩書房
4.25
  • (18)
  • (9)
  • (9)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 138
感想 : 23
  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480425270

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 菊池寛 ちくま日本文学全集



    菊池寛はテーマ主義者であると言われている。なによりもまず、明確にテーマを設定する。そしてそのテーマを、無造作な表現で、率直かつ端的に、読者にぶちまける、これが彼の方法だというのである。
    たしかにそれはそのとうりだが、テーマを展開し、押し通した末に、彼が決まってたどり着く「結末の明るさ」に注目したい。幾つか例外はあるけれども、彼の作品は、大抵明るく締めくくらている。

    涙の谷で根無し草。
    「忠直卿行状記」

    「入れ札」

    「藤十郎の恋」

    「恩讐の彼方に」

    「仇討ち禁止令」

  • 菊池寛の名作がぎっしり詰まった、素晴らしい一冊。

    説明不要の名作「忠直卿行状記」は何度読み返しても、素晴らしいと改めて思いました。

    徳川家康の孫である、松平忠直。
    大阪の陣では、真田幸村を討ち取るという武功を得ながら、失意の晩年を過ごした悲劇の大名として有名です。
    この作品では、松平忠直の勇ましさと繊細さという相反する個性を浮き彫りにしつつ、階級社会における君主の孤独をきちんと描いています。

    具体的に説明しますと、安定期に向かう武家階級社会においては、秩序を維持するための「礼」が必要になります。
    ところが、武家社会においては、しばしば武威による「実力」が求められます。
    この、「礼」と「実力」という相反する矛盾が、武士階級における「欺瞞」を顕在化させてしまします。

    情熱にあふれた若き君主である忠直は、武士階級社会の「欺瞞」にきづくのですが、それは同時に武家社会そのものを根本から支える秩序であるため、苦悶し自らの地位を転落させることになるのが、この小説の読みどころです。

    非常に簡潔な筆致と、スピード感あふれる転落劇!
    後半は、ジェットコースターノベル的な様相を展開します。


    また、凶悪犯と被害者家族を中心に、罪と赦しを問うた傑作、「ある抗議書」「恩讐の彼方に」も素晴らしい作品。

    特に「ある抗議書」は問題作として有名らしく、海外の映画等に影響を与えているようです。
    数年前、カンヌで賞をとった韓国映画「シークレットサンシャイン」は同じモチーフでつくられれいます。

    「シークレットサンシャイン」を鑑賞後、感動のあまり呆然自失となっていましたが、原型は「ある抗議書」にあったと分かった瞬間にその感動も薄れました。

    最近小ネタの多い日本映画ですが、こういった近代の古典的な作品のモチーフを活かすことで、クオリティの高い作品作りにつなげて欲しいと思いました。

  • 菊池寛
    (和書)2010年05月18日 19:42
    1991 筑摩書房 菊池 寛


    菊池寛はあまり読んだ覚えがなかったけど、そういえばこの話読んだことあるなって感じの作品がいくつかありました。

    読後感も良く、それぞれ申し分のないできの作品だなって思います。

    他の作品も読んでいこうと思う良作揃いでした。

  • Eテレ「にほんごであそぼ」で紹介された「恩讐の彼方に」の続きが気になっていたこともあり、他の菊池寛作品が読みたくなり購入。
    読みやすい文体がすらすらと頭に入ってくる。人物の精神描写がまるで自分が感じていることのような臨場感があり、「忠直卿行状記」では共感性羞恥にも似た感情が味わえた。
    巻末の解説(井上ひさし)も、著者の作品のような軽妙さがあり、紹介している未収録作品を読みたくなる文だった。

  • ちくま文庫

    菊池寛 「忠直卿行状記」「藤十郎の恋」「ある抗議書」「恩讐の彼方に」など 人間の苦悩、悲劇、再生を描いたエンタメ小説傑作選。面白い。

    勝負事
    *賭博で一文無しになった祖父〜家族の悲劇

    三浦右衛門の最後
    *命を捨てる武士道の中、命を惜しむ 人間らしい人間の悲劇
    *人間の生をもてあそぶまで堕落した武士の悲劇でもある?

    忠直卿行状記
    *殿様の狂気の物語〜自分を信じられなくなったことの狂気
    *忠直卿の残虐は 臣下が忠直卿を人間扱いしないので、忠直卿も臣下を人間扱いしなくなった

    藤十郎の恋
    *やつし=美男子、色事師の演技〜芸術的な苦悶の物語
    *芸の肥しのために 人生が変わってしまう女性の悲劇

    入れ札
    *他人の嘘を咎めるには 自分の恥を打ち明けなければいけない状況の物語

    ある抗議書
    *殺人加害者がキリスト改宗したことにより 幸福感を得ながら死刑されることへの 被害者家族の苦悩

    恩讐の彼方に
    *殺人加害者が 仏道に帰依し 衆生済度のため 身命を捨てて人を救うと共に 自身も救う物語。感動のラスト

  • 菊池寛の作品集初挑戦。読んでて常に思ったのは、この小説は、歌舞伎芝居や演劇などの素養のある人が書いた物語だなぁ、という印象。
    実際に歌舞伎になったり演劇になったりしている作品もありますが、とにかく全体を通して、話をまとめるための良い意味での予定調和、「そこ」へ向かって突き進むストーリー性、登場人物の心情吐露が義太夫節……みたいな感じなんですよね。非常に判りやすく、テンポ良く、ドラマチックで面白かった。(歌舞伎をノベライズしたら、こんな小説になるよね!みたいな書き方してるんですよねー)

    あと、『私の日常道徳』がとても、菊池寛!な感じで笑っちゃった。

    巻末解説は井上ひさし。井上らしい、菊池寛作品の「結末の明るさ」に対する考察も面白いので一読オススメ。

  • 2016年3月新着

  • 各小説の主題が、とても分かりやすく書かれているように感じた。

  • 「恩讐の彼方に」を読むために図書館で借りたが、「忠直卿行状記」がダントツでよかった。
    リーダーとして他人の上に立つ人の孤独感がひしひしと伝わる。
    ひょっとしたら総理大臣も、会社の社長も、こんな気持ちになるのかもなぁ…。
    どの作品を読んでも、人の心理を描くのが巧みな作家だなと思った。

  • 純粋に読み物としておもしろい話が多い。重くなく、かといって軽くはない。短編が中心の構成。時代物が多い気がするが十分に楽しめる。

全23件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

菊池寛

一八八八年(明治二十一)香川県生まれ。本名・寛(ひろし)。第一高等学校を中退後、京都帝国大学英文科に入学。芥川龍之介、久米正雄らと第三次、第四次『新思潮』に参加。京大を卒業後、時事新報社に勤務するかたわら小説を発表、『無名作家の日記』『忠直卿行状記』『恩讐の彼方に』などで世評を得る。一九二〇年(大正九)に発表した『真珠夫人』が成功をおさめ、以後、約五十篇に及ぶ通俗小説を発表。その他の小説・戯曲に『父帰る』『藤十郎の恋』『蘭学事始』『入れ札』などがある。雑誌『文藝春秋』の創刊、文藝家協会の設立、芥川賞・直木賞の創設、映画事業への参画など、多方面に活躍した。一九四八年(昭和二十三)死去。

「2021年 『受難華』 で使われていた紹介文から引用しています。」

菊池寛の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三島由紀夫
谷崎潤一郎
梶井基次郎
村上 春樹
有効な右矢印 無効な右矢印
ツイートする
×