ちくま日本文学027 菊池寛 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480425270

感想・レビュー・書評

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  • 戯曲も、含め、読みやすく面白かった。後書きの井上ひさしさんもよい。
    他の作品も読んでみたい。

  • 菊池寛 ちくま日本文学全集



    菊池寛はテーマ主義者であると言われている。なによりもまず、明確にテーマを設定する。そしてそのテーマを、無造作な表現で、率直かつ端的に、読者にぶちまける、これが彼の方法だというのである。
    たしかにそれはそのとうりだが、テーマを展開し、押し通した末に、彼が決まってたどり着く「結末の明るさ」に注目したい。幾つか例外はあるけれども、彼の作品は、大抵明るく締めくくらている。

    涙の谷で根無し草。
    「忠直卿行状記」

    「入れ札」

    「藤十郎の恋」

    「恩讐の彼方に」

    「仇討ち禁止令」

  • 菊池寛の名作がぎっしり詰まった、素晴らしい一冊。

    説明不要の名作「忠直卿行状記」は何度読み返しても、素晴らしいと改めて思いました。

    徳川家康の孫である、松平忠直。
    大阪の陣では、真田幸村を討ち取るという武功を得ながら、失意の晩年を過ごした悲劇の大名として有名です。
    この作品では、松平忠直の勇ましさと繊細さという相反する個性を浮き彫りにしつつ、階級社会における君主の孤独をきちんと描いています。

    具体的に説明しますと、安定期に向かう武家階級社会においては、秩序を維持するための「礼」が必要になります。
    ところが、武家社会においては、しばしば武威による「実力」が求められます。
    この、「礼」と「実力」という相反する矛盾が、武士階級における「欺瞞」を顕在化させてしまします。

    情熱にあふれた若き君主である忠直は、武士階級社会の「欺瞞」にきづくのですが、それは同時に武家社会そのものを根本から支える秩序であるため、苦悶し自らの地位を転落させることになるのが、この小説の読みどころです。

    非常に簡潔な筆致と、スピード感あふれる転落劇!
    後半は、ジェットコースターノベル的な様相を展開します。


    また、凶悪犯と被害者家族を中心に、罪と赦しを問うた傑作、「ある抗議書」「恩讐の彼方に」も素晴らしい作品。

    特に「ある抗議書」は問題作として有名らしく、海外の映画等に影響を与えているようです。
    数年前、カンヌで賞をとった韓国映画「シークレットサンシャイン」は同じモチーフでつくられれいます。

    「シークレットサンシャイン」を鑑賞後、感動のあまり呆然自失となっていましたが、原型は「ある抗議書」にあったと分かった瞬間にその感動も薄れました。

    最近小ネタの多い日本映画ですが、こういった近代の古典的な作品のモチーフを活かすことで、クオリティの高い作品作りにつなげて欲しいと思いました。



  • 筑摩書房 
    菊池寛 短編集

    ちくま日本文学 シリーズ。面白い。作品だけでなく年譜も面白い。波瀾万丈すぎる。著者が創刊した文芸春秋 が、菊池寛作品や作家の面白さを 世に出さない理由がわからない


    小説は、終わり方がいい。考えさせるわけでなく、白黒はっきりさせるわけでもない。「人間ってそうだよね」で終わる感じ。特に「赦す」という人間像を描いている小説は 心地いい



    「恩讐の彼方」など仇討もの、「忠直卿行状記」など戦国武将もの は 義理と命、敵と赦し を軽妙に描いている。公的な義務としての義理を批判し、義理と人情を同列に見ている


    「三浦右衛門の最後」は 命乞いをして生きようとした武士から 生命の尊さを見出している。生きることを「人間の最高にして至純たる欲求」と位置付けている。傑作だと思う


    「藤十郎の恋」「入れ札」「ある抗議書」「島原心中」の 人間の闇の描写は 見事。学校では教えない人間研究の作品群

  • 菊池寛
    (和書)2010年05月18日 19:42
    1991 筑摩書房 菊池 寛


    菊池寛はあまり読んだ覚えがなかったけど、そういえばこの話読んだことあるなって感じの作品がいくつかありました。

    読後感も良く、それぞれ申し分のないできの作品だなって思います。

    他の作品も読んでいこうと思う良作揃いでした。

  • Eテレ「にほんごであそぼ」で紹介された「恩讐の彼方に」の続きが気になっていたこともあり、他の菊池寛作品が読みたくなり購入。
    読みやすい文体がすらすらと頭に入ってくる。人物の精神描写がまるで自分が感じていることのような臨場感があり、「忠直卿行状記」では共感性羞恥にも似た感情が味わえた。
    巻末の解説(井上ひさし)も、著者の作品のような軽妙さがあり、紹介している未収録作品を読みたくなる文だった。

  • 菊池寛の作品集初挑戦。読んでて常に思ったのは、この小説は、歌舞伎芝居や演劇などの素養のある人が書いた物語だなぁ、という印象。
    実際に歌舞伎になったり演劇になったりしている作品もありますが、とにかく全体を通して、話をまとめるための良い意味での予定調和、「そこ」へ向かって突き進むストーリー性、登場人物の心情吐露が義太夫節……みたいな感じなんですよね。非常に判りやすく、テンポ良く、ドラマチックで面白かった。(歌舞伎をノベライズしたら、こんな小説になるよね!みたいな書き方してるんですよねー)

    あと、『私の日常道徳』がとても、菊池寛!な感じで笑っちゃった。

    巻末解説は井上ひさし。井上らしい、菊池寛作品の「結末の明るさ」に対する考察も面白いので一読オススメ。

  • 2016年3月新着

  • 各小説の主題が、とても分かりやすく書かれているように感じた。

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著者プロフィール

1888年生まれ、1948年没。小説家、劇作家、ジャーナリスト。実業家としても文藝春秋社を興し、芥川賞、直木賞、菊池寛賞の創設に携わる。戯曲『父帰る』が舞台化をきっかけに絶賛され、本作は菊池を代表する作品となった。その後、面白さと平易さを重視した新聞小説『真珠夫人』などが成功をおさめる一方、鋭いジャーナリスト感覚から「文藝春秋」を創刊。文芸家協会会長等を務め、文壇の大御所と呼ばれた。

「2023年 『芥川龍之介・菊池寛共訳 完全版 アリス物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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