説得 (ちくま文庫)

  • 筑摩書房
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感想 : 57
  • Amazon.co.jp ・本 (430ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480425348

感想・レビュー・書評

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  • ジェイン・オースティンの最後の作品。
    私にとっては、高慢と偏見、エマに続いて3作目である。

    "サマセット州ケリンチ屋敷の当主サー・ウォルター・エリオットは、『准男爵名鑑』が唯一の愛読書であり、これ以外の書物はいっさい手にしないという人物だった。"

    "サー・ウォルターによると、この世の最高の幸せは、准男爵という社会的地位に恵まれることであり、二番目の幸せは美しい容姿に恵まれることだった。つまり、このふたつの幸せに恵まれた自分自身こそ、サー・ウォルターが最も熱烈な尊敬と愛情を捧げる人物なのである"

    オースティンのウィットに富んだ冒頭に、いきなりクスリとしてしまう。

    主人公アンの父親であるサー・ウォルターは、とにかく准男爵位と自分の美貌が自慢のナルシスト。自分に似た長女のエリザベス(こちらも父親と同じく高慢)を溺愛し、地味な次女のアンには関心を示さない。しかも浪費家で借金が嵩み、ついにはケリンチ屋敷を貸し出さなければならなくなる。
    アンは19歳のとき、海軍軍人のウェントワースと愛し合って婚約したが、当時お金も地位もなかったために周囲が反対し、結局、反対を押しきれずに婚約を解消してしまう。しかしこのことは8年経った今も、アンの心に暗い影を落とし、他の人にプロポーズされても受け入れず独身のままでいた。
    そんなアンに、思いがけない再会が待ち受けていた。ケリンチ屋敷の借り手夫妻の弟であり、今や軍人として財をなしたウェントワース大佐と再会することになったのだ…。

    これまで読んだオースティンの作品の中でも、アンの家族(父、姉、妹、そして推定相続人の甥)の強烈さは際立っていて、それ以外はむしろ普通に善良な人たちが多い。敵は身内にあり…のいい例なのかも。

    アンは27歳、これまで読んだ作品の中でも年が上なこともあってか、心は騒いでも行動は終始落ち着いていて、いつも思慮深く思いやりのある女性として描かれている。
    彼女は、立派になったウェントワース大佐と再会し、ウェントワース大佐のちょっとした行動や言葉に心が揺さぶられながらも、自分からアプローチはできず、マスグローヴ家(アンの妹メアリーの嫁ぎ先)の元気な姉妹がキャッキャとウェントワース大佐との距離を縮め、いい感じになっていくのを寂しい思いで眺めるほかない。

    うーん、そうだよね、8年前に振ってしまった男性だもの。どんなに素敵になっていたからって、今更普通に話すのは難しいのだろう。
    もしかしたらとの希望を捨て切ることはできないけれど、昔と変わってしまったという自信のなさ、見ているだけしかない辛さ、それでも妬まず、姉妹との恋が成就するときのことを覚悟している強さ。
    揺れるアンの心の動きが丁寧に描かれているのだけど、ちょっともどかしくはある。

    他方、ウェントワース大佐の気持ちがどこにあるのかはわからず、しかも他にも結婚候補となりそうな男性が現れたりして、どこにどう転ぶのだろうと目が離せない。
    コメディ要素は抑え気味で、全体的に、秋から冬にかけての物寂しい雰囲気ではあるが、最後はオースティンらしい、幸福感に溢れたラストスパート。
    しみじみと味わい深い恋愛小説だった。

  • 8年前に別れた恋人と再会する話。最後の会話が聞こえていたっていうのがオースティンらしい。名誉とか自分がどう思われているかにしか興味ない人っているよなー、と思いながら読んだ。8年前の説得はアンを心配するラッセル夫人なら当然と思うけど、それを乗り越えられなかったことが悔しい思われるのかな。大切な人と離れ離れになってしまった人におすすめ。

  • オースティンは本当に素敵だ。頭をからっぽにして、難しいことを何も考えずに、ただただ小説世界の面白さに没頭できる。大人になると色々とこまっしゃくれた小説ばかりに取り囲まれてしまって、こういう単純なようでいて読ませる力のある小説に出会うと、「小説を読むってこういうことだった」と思い出される感。27歳の主人公、最年長だがしみじみとした味わいがあり、繊細な恋の駆け引きが相変わらず読ませる。主人公が高潔さを最後まで失わないというのも信頼して読めるところか。「説き伏せられて」という邦題もあり、私は通読した上で「説得」よりも「説き伏せられて」のほうがぽいかもと思った。アンは一度「説き伏せられた」女の子なのだ。「られて」というところに、説得のその後を感じさせるような余韻があって私は好きだな。

  • オースティンの物語の主人公たちはいつもジェントリ出身であり──それは当時の文学界(作家・批評家・読者たちの構成する世界)のあり方の一端を想像させるけれど──、当時で言えばよほど生活に余裕がある人びとではあるけれど現代的にいえば「上流」に近接した「中流」である彼らの精神世界は、意識されるものであれそうでないものであれ、隣接する"クラス"との関係性により規定されている。

    上級貴族階級に対する憧れ・上昇願望はいつも公式の階級制度(爵位)によりさまたげられており、商人階級や農民階級に対する優位は彼らの経済的成功によりいつも脅かされている(産業革命、植民地帝国の版図拡大や第一帝制フランスとの戦争がこれを助長した)。

    したがって、公的権限の制約、経済的優位性の危機、構成メンバーの流動性(≒歴史と伝統の欠如)という事態に直面して、「教養」や「理性」、「礼節」や「気品」といった概念が持ちだされる。ようするに用法次第でどうとでもなる概念であり、メンバー間の暗黙の合意のもとで使用されることで"閉鎖性"を創り出すことば。それらの涙ぐましい努力について、作者は明らかにときに真剣にときに茶化して、繰り返し言及している。

    加えてオースティンの作品を読んでいて気が付くのは、19世紀初頭のそうしたジェントリの子女たちのこころが、いつもどちらかと言えば上方への同化願望ではなく下方への差異化願望により多く占められていることであり、当時における男女の対称性が透かし見える気がしなくもない。つまるところ上昇婚よりも、その反対のほうが大いにあり得るし、実際女性の側で何か"手を打つ"ことができるとすれば、それはやはり自身の地位を守るという方面においてだったということ。

    作者は、以上のようなことをどこまで意識的に自身の作品の中に織り込んでいったのか。それやこれや考えながら読むことができるのがおもしろい。

  • 映画「ジェイン・オースティンの読書会」の中で一番印象に残った作品。

  • あっという間に読んでしまった!
    今までのオースティン作品を連想する小説だったな。
    アンは今までで1番冷静で善良な女性という印象。
    だろうな。って結果だけどめでたし!よかった。

  • アンの控えめな美しさややさしさが、ずっと物語の根底に流れている作品でした。
    突き抜けた明るさや闊達さはありませんが、これはこれでおもしろかった。

    アラサーくらいになると、『高慢と偏見』よりもこちらの作品の方がしっくりくるかな。

  • ジェーンオースティンは、映画で題材の作品を観ることはあって、名前は知っていても読むことがありませんでした。

    今回初めて説得という作品を読み、こんな昔の作品なのになんだか自分もイギリスのこの舞台にいる気分になりました。


    アンという女性が繊細に描かれていて、その周りの人物の心理もとてもわかりやすく、結末がだいたいわかっていてもじっくりと読めました。

    こんな才能ある女流作家さんがいたんだなぁと。

    他の作品も読みたいです。

  • 解説に取り上げられている quotes は、物語を読んでいて自然と私が感激した箇所と一致していて嬉しい。円熟した作品だからこその、あの優れた表現なのだろうか! こういう引用したくなる優れた表現は、長編6作品を読んだが、唯一だと思う。

    ところで、主人公アンは、大人しいタイプに入るが、「マンスフィールド・パーク」のファニーや、「分別と多感」のエリナーとは違う。だから私は彼女に苛つかなかったし、彼女は家族から冷遇されているけれども、結末まで楽しく読むことができた。

  • こうなるはず、というところへの進み方を楽しむ本ですね。終盤、キタァ!!という気分でした。

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著者プロフィール

ジェイン・オースティン(Jane Austen)
1775年生まれ。イギリスの小説家。
作品に、『分別と多感』、『高慢と偏見』、『エマ』、『マンスフィールド・パーク』、『ノーサンガー・アビー』、『説得されて』など。
1817年没。

「2019年 『説得されて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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