ちくま日本文学039 堀辰雄 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 155
感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480425690

感想・レビュー・書評

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  • まるまる一冊堀辰雄ワールドを堪能できる傑作集。

    「幼年時代」がとても良い。彼の複雑な生い立ちについて触れられているのだが、それも筆者の幼い頃の思い出の場所やお気に入りだったもの・風景についての愛にあふれた繊細な描写を際立たせるアクセントのようになっている。いろいろと家族や周りの人々は皆苦労をしているが、幼い筆者はそんな中でも愛されて育ったのだな、と感じる作品。

  • 女性が静かに人生に流されていくのを、横で眺めている俯瞰的な描写が頭に浮かぶ。

  • 燃ゆる頬が特別良かった。

    どの主人公も目の前の人や景色を見ているようで、いつも自分の中の心象ばかりを見ているな、と思った。

    目の前の人物そのものよりも、自分の理想像に重なった部分だけをその人物として見ていたい、というものの見方に陥るのは愚かだなあと思って笑えるけれど、当人たちは恋をしてるんだろうなあと思うと切実に読めるところもあり楽しかった。

    端的で乾いた文体が心地よく、湿っぽい内容もスルスル読めた。大胆な省略が気持ちが良かった。

  • 薄暗く甘やか。

  • 大阪樟蔭女子大学図書館OPACへのリンク
    https://library.osaka-shoin.ac.jp/opac/volume/425719

  • 2016年3月新着

  • ちくま日本文学シリーズ 1冊目

    「燃ゆる頬」目当てで手に取りました。意外にも、古典作品2つが切なくて好きでした。なんだか淡々とした文章だな、というのが堀辰雄をはじめて読んだ感想。一見、冷たいように感じるものの、風景のうつくしさや心の繊細な機敏がありありと伝わってきます。
    うぅむ、これが堀辰雄のすごさなのだろうか。

    *鳥料理
    物書きである「私」がみた夢のお話し。老婆との少女入壜争奪戦がおもしろかった。そいつをそこにぶっ倒す!容赦ない。他の堀作品と比べるとちょっと異質な感じ。この作品を冒頭にもってくる筑摩書房のセンスに脱帽。

    *ルウベンスの偽画
    デビュー作。軽井沢で出会った母娘。その娘の美しさに「ルウベンスの偽画」と名付ける彼。妄想男子がちょっと怖い。

    *麦藁帽子
    15歳だった私と13歳だったおまえ。幼なじみの二人は成長するにつれて男と女を意識しだす。兄妹でもなければ恋人でもない。でも、そんなアイツが気になるの、といった心の揺らぎが絶妙。

    *燃ゆる頬
    17歳になった「私」は高校の寄宿舎へ入った。筋肉隆々の大男魚住先輩と病弱な美少年の三枝との三角関係か?と思いきや、いつの間にか魚住先輩消えていた。どこいっちゃったの?

    *恢復期
    サナトリウムでの養療で快方へ向かいつつある「私」は叔母から別荘へ来ないかと誘われる。叔母と甥の関係をどう読み取ればいいのか最後までわからなかった。むぅ。

    *風立ちぬ
    主人公の「私」は婚約者の節子に連れ添い、八ヶ岳山麓のサナトリウムで暮らすことになる。高原の自然が移ろう中静かに毎日が過ぎてゆく。そして私は小説を書きはじめた。

    *幼年時代
    自伝小説?作者本人だと思って読んでいたら名前が違っていた。複雑な親子関係を意図も思わないのは、この幸せな幼年時代があったからこそ。大人たちの子どもに対するいとおしさが全身全霊で感じられる。血の繋がりだけが家族じゃない。

    *花を持てる女
    エッセイ。複雑な家族関係を幼少期の記憶とともに綴った作品。「花を持てる女」は若い頃の母親がうつった写真を基に書いた随筆のタイトル。「幼年時代」を書くに至った経緯など。

    *姨捨
    古典作品。平安時代、父親の転勤で京へと帰って来た娘はこの世にあるすべての物語をみたいと希んでていた。そんな夢見る少女もいつしか大人になり、宮仕えを勧められる。しかし現実は物語とは違う世界。ある冬の夜、殿上人らしい男と詞を交わした彼女は、日々想いを巡らせるようになる。

    *曠野
    古典作品。六条のほとりにひっそり静かに暮らしている老夫婦と一人娘。やがて両親は他界し、美しい娘だけが広い屋敷へ取り残された。屋敷は荒れぶれ草が生茂る中、娘はずっと恋しい男を待ち続ける。自分の人生を他人へ委ねなければいけない時代の悲哀。最後がせつない。

    *樹下
    小径のかたわらに何気なく存在する苔蒸した一体の石仏。右手を頬にあて頭を傾げる思惟像は、その姿から「歯痛の神様」として村人に拝められていた。歯痛の神様ってネーミングが可愛い。

  • (図書館)

  • 通勤車内で読み終わり、最後に年譜を眺めて驚いた。60年前の今日、亡くなった人だったのだ。偶然にしてなにか嬉しい。
    古い翻訳小説のように「俺は俺の中の…」「お前はお前の父と…」と、人称を全部訳したみたいな律儀さがなぜか印象に残る。「幼年時代」「姨捨」が好みであった。

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著者プロフィール

東京生まれ。第一高等学校時代、生涯親交の深かった神西清(ロシア文学者・小説家)と出会う。このころ、ツルゲーネフやハウプトマンの小説や戯曲、ショーペンハウアー、ニーチェなどの哲学書に接する。1923年、19歳のころに荻原朔太郎『青猫』を耽読し、大きな影響を受ける。同時期に室生犀星を知り、犀星の紹介で師・芥川龍之介と出会う。以後、軽井沢にいた芥川を訪ね、芥川の死後も度々軽井沢へ赴く。
1925年、東京帝国大学へ入学。田端にいた萩原朔太郎を訪問。翌年に中野重治、窪川鶴次郎らと雑誌『驢馬』を創刊。同誌に堀はアポリネールやコクトーの詩を訳して掲載し、自作の小品を発表。1927年に芥川が自殺し、翌年には自身も肋膜炎を患い、生死の境をさまよう。1930年、最初の作品集『不器用な天使』を改造社より刊行。同年「聖家族」を「改造」に発表。その後は病を患い入院と静養をくり返しながらも、「美しい村」「風立ちぬ」「菜穂子」と数々の名作をうみだす。その間、詩人・立原道造との出会い、また加藤多恵との結婚があった。1940年、前年に死去した立原が戯れに編んだ『堀辰雄詩集』を山本書店よりそのまま刊行し、墓前に捧げる。1953年、春先より喀血が続き、5月28日逝去。

「2022年 『木の十字架』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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