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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784480426123
作品紹介・あらすじ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・実写映画化決定! !◎津村記久子作品初の映画化◎主人公・堀貝佐世(ホリガイ サヨ)役は佐久間由衣さん痛ましい過去を持つ猪乃木楠子(イノギ クスコ)役は奈緒さん監督・脚本:吉野竜平さん2021年全国順次公開予定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だるい日常その裏に潜む悪意――大学卒業を間近に控え、就職も決まり、単位もばっちり。ある意味、手持ちぶさたな日々を送る主人公ホリガイは、身長175センチ、22歳、処女。バイトと学校と下宿を行き来し、友人とぐだぐだした日常をすごしている。そして、ふとした拍子に、そんな日常の裏に潜む「暴力」と「哀しみ」が顔を見せる…。第21回太宰治賞受賞作にして、芥川賞作家の鮮烈なデビュー作。解説:松浦理英子
感想・レビュー・書評
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一日で読み切ってしまった。
数日かけて読み終えるタイプの読書をするわたしとしてはなんとも珍しい。
夜中にYouTubeで「1200年の祈り 比叡山延暦寺 不滅の法灯」を観ながら、読破してた。
すっっっごい乱暴な分類をするけれど、小説の系統って「芥川賞系」と「直木賞系」に分類されると思うんだ。
で、最近の自分の読書傾向は、完全に後者だったんです。前者は、好みが合えば、海でうおおおおおおと叫び出したくなるような、言葉では現しきれないものを、胸の中に残してくれる。合わなければ、理解できないまま物語が終わってしまうこともある。だから、自分の中で「これなら!」という作品でないとなかなか手が出ない。
ちなみにこの作品は「太宰治賞」を受賞しているので、この例にあてはめると「誰だっけ」と、若干混乱する。
津村記久子さんの作品は「ポトスライムの舟」と「この世にたやすい仕事はない」の2作品しか触れたことがなく、「ポトスライムの舟」は全くと言っていいほど覚えてなくて、昔使ってたmixiレビューをふり返っても残ってなかった。悲しい。ただ、「この世に~」の方はちゃんと覚えていて、「直木賞系」の作品だった印象が強い。だから「ポトスライムの舟」で芥川賞を受賞していたにも関わらず、本作品を「直木賞系」の気持ちで読み始めちゃってて、しかし漂う「芥川賞系」の雰囲気に、「すごい、こんな作品も描けるんだ」と勝手に驚いてる自分がいた。もともとは「芥川賞系」の作家さんでした。自分が忘れてるだけでした、すみません。2021年映画化決定、津村さんのデビュー作。
「この世に~」と本作品の2作品には共通点があった。主人公の正義感の強さと、仕事内容だ。
いずれも福祉の仕事が関連していて、津村さんといえばお仕事小説なイメージがあって、だから福祉関係のお仕事をされてたのかな?と思って調べてみたら全然違った。ちなみにわたしが福祉の仕事をしているのでこの2作品はすごく印象に残った。これを想像力で成し遂げるとは。いやはや。
この作品はもともと「マンイーター」というタイトルで太宰治賞を受賞している。
マンイーターは「人食い」を意味する。この作品においての「人食い」とは。
主人公は大学卒業を控えた22歳の処女。いや、童貞の女。
表紙に「だるい日常 その裏に潜む悪意」と記載があって。
しかし、わたしは気付いている。悪意は、常に存在している。
言うなれば「だるい日常 そこに常に存在する悪意」。
悪意なんてどこにでも存在している。でもわたしたちは日常をこなすために、いつもそれを見ないように、感じないようにしている。主人公は、そうじゃない。その悪意に、ちゃんと立ち向かってゆくのだ。
主人公の飾らなさと、気遣いの人でありたいという思いは、その場の空気につぶされそうになって、時に誰かを傷つけてしまうことがある。でもだからこそ、その偽善者たろうとしない彼女の人柄は信用され、人は彼女に話をする。そして、誰かの日常の奥へと入り込み、そこで毅然として悪意へと立ち向かう。それこそが、主人公が持っている正義感だ。「そこまでするか」というこの正義感は、「この世に~」に出てくる主人公も発揮している。
つかみどころのない登場人物たちと、その日常。普段見ないように蓋をしている出来事を、じっと見つめていくような作業。物語を通して、心の奥深くに入ってまさぐられたことが少しだけ久々で、なんとも形容しがたい気持ちになっている。まだこの世界から抜け出せそうにない。
この作品を読んでからずっと、アジカンの「ソラニン」を聞いている。 -
卒業間近の大学生の日常の話
心の中にわだかまるものを抱えた女性同士が出会う
最初は何の話かわからず、全体像がつかめない
所々に主人公の諦めやら、今の状況を受け入れてる感じで話が進む
他者を力で制圧する
男性と女性、大人と子ども
力の強いものが弱いものを侵す
弱者の抗いの哀しみを
まるで
傾いて暗くなり翳りゆく部屋のような雰囲気で描きだされてるような作品だと思った
終わり方も、なんだか物語を創っていますという感じかない
自然体がよかった
津村記久子の今の作風では性的な描写が全然ないので、そういう表現があまりすきではない作家さんなんだと認識していたけど、初期の作品は結構それがあるのかな
性的な描写があって尖っている印象を受けた
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遅ればせながら、津村記久子の大ファンとなったので、デビュー作を読んでいないことを恥じ、手に取る。
なぜこの人をずっと追ってなかったのか!後悔後悔…。でもこれからの楽しみが増えたと思えば!
リアリティに寄与するユーモアの匙加減が心地よい。群像を描いて種をばら撒き、どこに到着するかわからない書き方は新鮮。
仕掛けられた種が想像もつかないところに芽をふくのが楽しい。
そう来たか!
最後は泣けました。 -
ゆるい大学生活と、あの時がなければというような巡り合わせから、後半が強烈だった。
ホリガイは変わってると言われようと、うまい返しが出来なかろうと、妄想だろうと、弱い者に心を痛めて行動を起こすような確かな芯があるのだし、何もおかしくないと思う。
彼女の志望動機や自転車の鍵を探す衝動は、私はそんな風に考えないけどわかるというか、読んでいると本当にそれしかない、そうせずにはいられないと焦るような気持ちになる。
「君は永遠にそいつらより若い」なんて、何の保証にもならない、すごい言葉だ。気持ちだけだ。まっすぐ刺さった。 -
また素晴らしい小説に出会えたことに感謝。そして、また大好きな作家が増えました。津村氏の語る言葉のあまりの熱量と、また、それを軽くいなすようなユーモアセンス、言葉のチョイスなど、どれも最高っす!イノギの「そこにおれんかったことが、悔しいわ」は最強に優しい。
主人公ホリガイのブレブレではあるが
やるべき時にはやる、行動力は素敵すぎる。動くべき時のために普段いかに準備しておけるか。誰かの為に…。 -
津村記久子のデビュー作のタイトル「君は永遠にそいつらより若い」は改題されてつけられたものらしい。作品を象徴するとても秀逸なタイトルだと思う。このタイトルに惹かれ、沢っっ山の人に作品が読まれるといいなと思う。
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プロローグでの不穏な始まりは、大学生活での様々なエピソードを読んでいるうちにすっかり忘れてしまい、じわじわ語られる、弱いものが強いものに蹂躙される問題に嫌味なく切り込んでいく。そしてプロローグに通じるラストにはっとさせられます。とは言え、青臭い大学生活も楽しく重いテーマではあるがクスりとさせる文体もあって重たさは感じられません。文体と言えば、様々な表現、言葉の組み合わせに、反芻して読むことも多く、楽しい読書でした。セリフが少なく、主人公による癖があるものの読みやすい文書が好みです。最後に着信したメールに嬉しさが込み上げました。
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他の方も書かれているが、タイトルが圧倒的に素晴らしい。そして、タイトルの意味もわからぬままダラダラと読み進める、大学時代のダラダラとしたやるせない日々の物語りはなかなか面白い。本題はなかなか提示されない。
「雨のように降ってくるトラブルを、僕たちは夢中になって拾い集め、ポケットに詰め込んだ。」
たまたま並行して読んでる関係のない小説の一節だが、そんな無意味にも見えるけど愛おしい日々。だけどそんな日々のトラブルの中に、雷のような悪意が潜んでいた。
かつてはやり過ごすしかなかった理不尽な悪意に対し、今でも解決出来るかは判らないけれど、それでも前向きに進んでいく、そんな主人公に寄り添いたくなる小説です。 -
うわーめっちゃ良かった!読んで良かった!
「勝手に震えてろ」「しろいろの街の、その骨の体温の」とあわせて私の中で「こじらせ女子のモラトリアム系」三大作品になった。
就職先と仕事を選んだ理由が自分自身に大変酷似していてびっくりした。こんな理由で仕事を選んだのは私だけじゃなかったんだなー。
私もたいがいこじらせてるから、主人公の自分に対するあきらめとか他人との距離感に共感できた。
ベルトコンベアみたいに、他人の人生が自分の目の前を流れている感覚になることがある。それを触るときもあるけど手元に置くものではないと思ってて、流れる他人の人生を見ているだけと思ってしまう自分の感性にむなしくなる(この感覚を正しく人に伝えるのは難しい)。そのなかでも、手元に置かなくても触ったことがずっと人生に残ることもあるよなあ、と少し希望をもらった。
冒頭で誰かのために主人公が自転車の鍵を探してるんだけど、その理由が忘れた頃に描かれる。ふざけた表現や軽快な文章だけどテーマはかなり重い。モラトリアムっていったけど、モラトリアムでは済まない。タイトルに込められたメッセージがとても心に響いた。今苦しめられてる皆、君は永遠にそいつらより若い。
小さい映画館で見れるような映画になったら絶対に見に行きたい。 -
Na図書館本
映画になってるので読んでみました。
デビュー作だそうです。パンチあります。
登場人物が多くて、ちょい混乱しました。
君は永遠にそいつらより若い という意味が分かりました。 -
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楽しい事や悩み事が有りながら、日常を過ごす若者。
日常の中ある突然の計り知れないほどの暴力行為。
サラリとした文章で書く事で主人公や周りの人達の心情がよりどんなものか分かり、引き寄せられる。
希望と言うベースがきちんとある事が嬉しかった。 -
これ、映画化するの!?
私がこの作品を読み終えて一番に思った感想でした。
主人公のホリガイの大学4回生に起きた、彼女と彼女の周りの人たち、イノギさんの話。
生きづらさというのは、日常に確実に紛れ込んでいて、自覚していてもしていなくても、おそらくほとんどの人たちの中にあるのだ。その中で必死に必死に息をして、必死に必死に立とうとしている。たとえ、狂気や自己嫌悪や諦めがあったとしても。たとえ息ができなくなったとしても。
君は永遠にそいつらより若い
大丈夫。
だから、そう、その調子で。 -
何故だ、何故こんなに重いのにサラリと描写してあるのだ。
こんなに重いことを、こんな風にサラリとかけるのか。
だけど、それは上っ面じゃない。
しかし、共感と少しの笑いを誘う。そして、深く悲しむ。
女の童貞ならず、女の太宰。。という印象。 -
面白かった。主人公の、ひんやりとした自己分析が、「あーわかるわかる、この気持ちは確かに言葉にしたらこんな感じだよね」というのが何度もあり、小説を読む醍醐味だと思った。
ただ、一方、私の読解力が低いからなのか、最後の結末(タイトルがそのまま出てくるところ)が、少し唐突に感じたというか、それまでとの文脈と上手く自分の中で繋がらなかった。 -
この作品の感想としては、非常に読みやくて心に残る作品であった。
映画化されるということで、どんな作品になるのか楽しみです。大宰治賞受賞作
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就職も決まり、残りの大学生活をだらだらと送る主人公の何気ない日常を描いているようで、その実、ときおり影を落とすやりきれない現実に対する、そんなものに負けるな、というメッセージを一貫して伝えています。
津村さんの作品は、淡々とした語り口の中に、瑞々しさとか、清々しさ、しなやかさが感じられて好きなのです。
2013.01.04 -
なんとなくだらだらと読み進めていて、ただの大学生の話かなって思っていたので、後半に読み進めていくと驚きがありました。それぞれの持つ困難や痛み葛藤などか明らかになり、胸に迫ってくるものがあります。著者のデビュー作品と知ってまた驚きです。
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態度に出さない、他人に言わないだけで、主人公にも秘めたものがある。児童福祉に関わろうと思った理由、ホミネ君のアパート下の翔吾君を救ったこと、イノギさんに会いに行くこと。
理不尽な暴力にさらされることがあるかもしれない。だけど、”君は永遠にそいつらより若い”のだ。
余談だけど、初読は10年以上前で、主人公が翔吾君を救う時にベランダで「君は!永遠に!そいつらより若い!!」と叫んで助けるのがラストシーンだと思っていて、全然違ってびっくりした。 -
兎にも角にも、ずっとすごーーーー!と思いながら読み進めた。
かなりパワーがあるのに言葉の優しさとか柔軟さが際立っている感じ
キャラの濃さもそこそこにあるけれど、まどろっこしさは全然感じなくて、いやこういう人たち居るなあってしみじみするような
勝手に私もホリガイになったような気持ちで色々な人に関わって苦しんでもがいて少し嬉しくなったりした。私も日々の不安や様々な感情と真正面から向き合ってちゃんと言葉にしていけたら、、と思う。
著者プロフィール
津村記久子の作品
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感想 :

こんにちは(・∀・)
いつもいいねありがとうございます!
ですよね!読みやすいし、芥川賞系の、いい意味でドロっとし...
こんにちは(・∀・)
いつもいいねありがとうございます!
ですよね!読みやすいし、芥川賞系の、いい意味でドロっとした感じがしないので、すっかり騙されてました(笑)でも最近の作風的にもしかしたら直木賞受賞もありかもしれないですよね!
わたしが作品を描いたわけではないのに、レビューを読んで、と言われるととっても嬉しいです!!(笑)
読み終わったら是非、かおりさんの感想を聞かせてください!共有できたら嬉しいです♪
これからもよろしくお願いします^^
こんばんは!コメントありがとうございます^^
なるほど、そうだったんですね!
是非読んでみてください!感想共有できたら...
こんばんは!コメントありがとうございます^^
なるほど、そうだったんですね!
是非読んでみてください!感想共有できたら嬉しいです♪
楽しく読めますように…