君は永遠にそいつらより若い (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
3.92
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本棚登録 : 891
レビュー : 132
  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480426123

作品紹介・あらすじ

大学卒業を間近に控え、就職も決まり、単位もばっちり。ある意味、手持ちぶさたな日々を送る主人公ホリガイは、身長175センチ、22歳、処女。バイトと学校と下宿を行き来し、友人とぐだぐだした日常をすごしている。そして、ふとした拍子に、そんな日常の裏に潜む「暴力」と「哀しみ」が顔を見せる…。第21回太宰治賞受賞作にして、芥川賞作家の鮮烈なデビュー作。

感想・レビュー・書評

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  • うわーめっちゃ良かった!読んで良かった!
    「勝手に震えてろ」「しろいろの街の、その骨の体温の」とあわせて私の中で「こじらせ女子のモラトリアム系」三大作品になった。

    就職先と仕事を選んだ理由が自分自身に大変酷似していてびっくりした。こんな理由で仕事を選んだのは私だけじゃなかったんだなー。
    私もたいがいこじらせてるから、主人公の自分に対するあきらめとか他人との距離感に共感できた。
    ベルトコンベアみたいに、他人の人生が自分の目の前を流れている感覚になることがある。それを触るときもあるけど手元に置くものではないと思ってて、流れる他人の人生を見ているだけと思ってしまう自分の感性にむなしくなる(この感覚を正しく人に伝えるのは難しい)。そのなかでも、手元に置かなくても触ったことがずっと人生に残ることもあるよなあ、と少し希望をもらった。

    冒頭で誰かのために主人公が自転車の鍵を探してるんだけど、その理由が忘れた頃に描かれる。ふざけた表現や軽快な文章だけどテーマはかなり重い。モラトリアムっていったけど、モラトリアムでは済まない。タイトルに込められたメッセージがとても心に響いた。今苦しめられてる皆、君は永遠にそいつらより若い。
    小さい映画館で見れるような映画になったら絶対に見に行きたい。

  •  22歳で恋愛経験のない主人公の大学生・ホリガイの、自分のことを「処女」ではなくあえて「女の童貞」と称する気持ちに、自分が22歳だったときのことを重ねて深く共感したのが手にとったきっかけですが、実際読んだらメインのテーマはそこじゃなかった、というか、そこにとどまらなかった。
     語り口が軽くて飄々としているので読みやすいけれど、深刻な暴力を扱っていて、主題としてはむしろかなり重い気がします。それも、デートDVや児童虐待といった、日常に潜んで見過ごされてしまいがちな、最も陰惨なかたちをとる暴力。

     小学生のときに男子二人にボコボコにされたというホリガイの思い出、イノギさんが経験したとんでもない事件など、読んでいてつらくなるような「暴力」のエピソードが幾つかあるなかで、私は恋人のリストカットの傷口をたびたび傷つけて陶酔する河北にいちばん怒りを感じました。
     河北にその話を聞かされたホリガイは「彼の陶酔を削ぐ」ような発言をして飲み物を浴びせられ、「軽んじられた仕返しに河北はわたしを呪ったのだ」と感じるのですが、「おまえ以外のひとのまえではいい人間でいるよ、本当だよ」というのは確かにものすごく悪質な呪いだと思う。

     ホリガイは自分のことを「芯がなく、あちらこちらを見遣りながら、手をこまねいていて煮え切らない」などというけれど、作中に二度ある救急車を呼ぶ場面でのホリガイは決断力も勇気もあってすごくかっこよく見える。身長も175センチあるというし。
     ただ、イノギさんとの展開はかなり意外でした。この話は理不尽な暴力にひどく傷つけられた「女の子ふたり」の話で、それが本当に予想外だった。
     最後に吐露されるホリガイのイノギさんへの気持ちはすごく切なくて、友情とも愛情とも簡単に名付けられないこういう感情がいちばん美しいとあらためて思います。 

  • 何故だ、何故こんなに重いのにサラリと描写してあるのだ。
    こんなに重いことを、こんな風にサラリとかけるのか。
    だけど、それは上っ面じゃない。
    しかし、共感と少しの笑いを誘う。そして、深く悲しむ。
    女の童貞ならず、女の太宰。。という印象。

  • 就職も決まり、残りの大学生活をだらだらと送る主人公の何気ない日常を描いているようで、その実、ときおり影を落とすやりきれない現実に対する、そんなものに負けるな、というメッセージを一貫して伝えています。
    津村さんの作品は、淡々とした語り口の中に、瑞々しさとか、清々しさ、しなやかさが感じられて好きなのです。
    2013.01.04

  • 正直、タイトルに惹かれて購入。でも中身もよかった。
    最初はくさくさした勘違い女子のモラトリアムの話が延々続くのかと思ったら、途中から全く違う印象を持って読んでいたことに気がついた。
    柴崎友香読んでたと思ったら後半別人みたいな…わかりにくいか…

    ホリガイの小学生の頃の話を聞いたイノギさんが言ったひとこと。「そこにおれんかったことが、悔しいわ」
    これがすべてな気がする。
    ここに出てくるような凄惨なものではなくても、誰でもいつか力という理不尽な壁にぶつかるときがくる、女は特に。
    そういう時の悔しさというか哀しさが思い起こされた。
    日常に隠れて暴力の影は周囲にあふれているかもしれない、帯の文句そのままだけど、そう思った。

  • 公務員としての就職も決まっている大学生のホリガイは22才処女。恋愛に興味がないわけではないけれど、自分が男女どちらを好きなのかもよくわかっていないようなところがある。親友のオカノ、できる男らしいが人間性に問題のありそうな河北、その恋人のアスミちゃん、河北に彼女を奪われそうになった吉崎くん、吉崎くんの友達で死んでしまった穂峰くん、バイト先の主任の八木くん、バイトの後輩のヤスオカくん、そして大学の学食で出逢ったイノギさん、ホリガイと彼ら彼女らとの関わりを淡々と描いているようで、随所にピリピリする刺激(痛み)が散りばめられていて、なんというか、登場人物たちが若いせいもあるけれど「これぞデビュー作」というパンチが効いてました。

    ホリガイは、公務員になるために地道な努力を重ねる生真面目さがありつつ、ふだんの生活態度はひょうひょうとしていて汚部屋でも平気、女子力低めで恋愛経験もないが、なんかこう、イイヤツだ。そういう女性を意識させない彼女に何でも愚痴を聞いてもらうはけぐちのようにしている河北という男が、彼女をクズよばわりする場面では「お前のほうがクズだろうが!」と憤った。この自己陶酔勘違い男の河北が本当に嫌いで虫唾が走る。語るべき何も持たないのも、他人に嫉妬しているのも、ホリガイではなく河北のほうだ。ホリガイは謙虚だから自分の言い方も悪かったとか反省しちゃったりするけど、ああいう男とはできるだけ距離を置いたほうがいい。

    バイト主任の八木くんの「けつ」に執着するホリガイが愉快な替え歌を創作するあたりは爆笑したし、随所にくすっとできるユーモアがあるのは津村記久子ならではだけれど、小学生のときに男子二人がかりでボコボコにされた経験のあるホリガイ、終盤で明かされるイノギさんの壮絶な過去、穂峰くんが助けたネグレクトされている子供、アスミちゃんのリスカ癖を利用する河北など、強者から弱者へのかなりヘヴィな暴力が実はその裏にあり、このユーモアセンスがなければ読み切るのがとても辛い小説だったんじゃないかと思う。それだけに、冒頭から繋がるラスト、ホリガイがイノギさんのもとへ行こうとする場面は胸に迫るものがあった。

    もとの(投稿時の)タイトルは『マンイーター』だったそうですが(これもまた意味深)「君は永遠にそいつらより若い」という終盤でホリガイがある少年に(心の中で)贈る言葉をタイトルにしたのもかっこいい。解説は松浦理英子。

  • 淡々としていて序盤はすごく読みにくく感じたが中盤以降からのめり込んだ。
    決して明るい話ではないのに、読んだあとは不思議と励まされたような気分になった。
    自分を傷つけた大人たちよりも永遠に若いんだから、生きろ。

  • 多分一番好き

  • 童貞、処女、寝取られ、リスカ、暴力、強姦、自殺、誘拐、児童虐待etc…と、主人公の周りにいろいろ詰め込みすぎだろとは思ったけど、読み応えがあって面白かった。緊迫感の凄まじい冒頭部のあと、長くて先の見えないモノローグが続くけれど、タイトルの強烈な印象が最後まで関心を引っ張っていってくれる。主人公は最後にある人物に自ら会いに行く決断をするのだが、その場面が印象的で、その人物との出会いは偶然の重なった恩恵にすぎないのだが、その出会いを自ら掴み取り離さないと決意する様に厳然とした力強さを感じて胸が震えた。

    登場人物はみんな我が強くてそれがまた面白いのだが、一つだけ面白いのではなく素直にドン引きした場面がある。深夜に唐突に電話してきて、たったいま彼女が深く腕を切って目の前で血を流している、と言ってきた河北の行動である。恋人がリスカするという普通だったら見ていられない行為を自分は最後まで目の前で見届けられるのだ、だから俺たちは本物なのだ、ということなんだろうけど、それを言うためだけに彼女のリスカを強く止めなかったのなら本当に迷惑なので関わらないでくれとしか言いようがない…….。主人公はよく対応したわと思いました。

  • ホリガイは大学卒業を間近に控え、就職も決まり、手持ちぶさたな日々をバイトと学校と下宿を行き来して友人とぐだぐだ過ごしている。
    でも、ふとした拍子に日常に潜む「暴力」と「悲しみ」が…
    第21回太宰治賞受賞作にして芥川賞作家のデビュー作。

    今まで読んだ津村作品の中でいちばんシモネタ多くてウェットな感じでした。
    ずーっともだもだしつつも日常だったのが、終盤はたたみかけるように、実は物凄く重い話であったことが判明して。
    しかもそれぞれが痛くていやーな出来事で暗くなりました。
    最後の返事でちょっと気分上がったけど。
    行動を起こして繋がる、それが思ってもない方向でも、って尊いな-と思いました。

    これがデビュー作で、以降の作品の方が私好みなのは嬉しい傾向かな-

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著者プロフィール

津村 記久子(つむら きくこ)
1978年、大阪府大阪市生まれ。大阪府立今宮高等学校、大谷大学文学部国際文化学科卒業。
2005年「マンイーター」(改題『君は永遠にそいつらより若い』)で太宰治賞を受賞し、小説家デビュー。2008年『ミュージック・ブレス・ユー!!』で野間文芸新人賞、2009年『ポトスライムの舟』で芥川龍之介賞、2011年『ワーカーズ・ダイジェスト』で織田作之助賞、2013年「給水塔と亀」で川端康成賞、2016年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞、2017年『浮遊霊ブラジル』で紫式部文学賞、同年『アレグリアとは仕事はできない』で第13回酒飲み書店員大賞受賞をそれぞれ受賞。
近刊に、『ディス・イズ・ザ・デイ』がある。

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