- Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480426147
作品紹介・あらすじ
鴎外の文章に沈着・冷静・簡潔と香気を感じ「すぐれた散文とはこういうものか」と感動した著者が後年綴った散文には、まさに香気がただよっている。日本人のよってきたる源、遙か古代に想いをはせた表題作をはじめ、敬愛する山之口貘、吉野弘、山本安英、木下順二等について綴った選りすぐりのエッセイ集。
感想・レビュー・書評
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茨木さんの文章は、その詩同様、言葉一つ一つが飾り気なく、ストレートにグッとくる。その言葉に触れるたびに、シャンとなる。
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一本の茎の上に(ちくま文庫)
著作者:茨木のり子
発行者:筑摩書房
タイムライン
http://booklog.jp/timeline/users/collabo39698
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「一本の茎の上に」茨木のり子著、ちくま文庫、2009.07.10
205p ¥630 C0195 (2019.02.13読了)(2019.02.10借入)
単行本が刊行されたのは、1994年11月です。あちこちに書いた文章が大分溜まって来たので一冊にまとめましょうと提案されたので、刊行に至った。以前書いたもののうち、読み直して自分で興ざめとなったものを捨てたら、分量が足りなくなったので、発表する気もなく書いておいた草稿に手を加えたりして、いくつか追加した。(197頁)
収録されている散文は、1975年から1994年までのものです。
詩を読むよりは、随筆を読むほうが好きなので詩集ではなく随筆を借りてきました。
「晩学の泥棒」によると、茨木のり子さんは、50歳を過ぎてからハングルを学びはじめ、「始まりが半分」という韓国の諺に励まされて学び続けた。韓国に出かけて会話を楽しんだり、韓国語の本を読んだり、挙句の果てには、友人たちと韓国の詩や小説まで翻訳するに至ったということです。その結果として、「ハングルへの旅」「韓国現代詩選」などが刊行されています。
全体的に、詩人や詩にまつわる話、韓国の土地や人に関する話が多いかな。
金子光晴、山之口獏、吉野弘、山本安英、木下順二、森鴎外、といったあたりの人たちが登場しています。金子光晴、吉野弘、といったあたりは、かみさんの本棚にあるので機会があれば、覗いてみようと思います。
著者のものの見方が新鮮で、感心しながら読ませてもらいました。著者も楽しみながら書いているのかと思います。
【目次】
一本の茎の上に
内海
涼しさや
もう一つの勧進帳
歌物語
女へのまなざし
平熱の詩
祝婚歌
尹東柱について
晩学の泥棒
韓の国の白い花
ものに会う ひとに会う
山本安英の花
去りゆくつうに
品格について
花一輪といえども
おいてけぼり
散文
あとがき
解説 茨木さんの韓国語 金裕鴻
●基本的感受性(139頁)
他人に対するはにかみや恐れ、みっともなく赤くなる、ぎくしゃく、失語症、傷つきやすさ、それらを早く克服したいと願っていたのだけれど、それは逆であって、人を人とも思わなくなったりこの世のことすべてに多寡をくくることのほうが、ずっと怖いことであり、そういう弱点はむしろ一番大切にすべき人間の基本的感受性なのだった。
●詩が成った(188頁)
詩には「成った!」と思われる瞬間が確かにあり、それは何ものにも代えがたい喜びである。もはや付け加えるものも削るものも何一つない。幼稚でも下手でもこれっきりという断念の潔さに達する。
●随筆とエッセイ(190頁)
随筆は身辺雑記で、エッセイはもっと思索性、批評性の強いものを指すらしい
(モンテーニュの「エセー」とかを念頭に置いているのでしょうか。)
☆関連図書(既読)
「詩のこころを読む」茨木のり子著、岩波ジュニア新書、1979.10.22
「おんなのことば」茨木のり子著、童話屋、1994.08.17
「倚りかからず」茨木のり子著、筑摩書房、1999.10.07
「特別授業『自分の感受性くらい』」若松英輔著、NHK出版、2018.12.30
(2019年2月14日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
鴎外の文章に沈着・冷静・簡潔と香気を感じ「すぐれた散文とはこういうものか」と感動した著者が後年綴った散文には、まさに香気がただよっている。日本人のよってきたる源、遙か古代に想いをはせた表題作をはじめ、敬愛する山之口貘、吉野弘、山本安英、木下順二等について綴った選りすぐりのエッセイ集。 -
リスペクトする人たち、特に言葉や生きる佇まいを大事にする人たちについて綴った「小布」を集め、「一枚の布」に仕上げた本。
どの「小布」も、重くて深いメッセージだったけれど、特に気に入ったのが二つ。山之口貘の『応召』について綴った「平熱の詩」、吉野弘の『祝婚歌』について綴った「祝婚歌」。
やっぱりこの人の言葉は、格好いい。厳しいのと、優しいのとが混じり合っていて、なんだかたまらない。
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自分のやっていることに迷いが出た時、この方の詩を読むと、遠くにほのかに目標となるものが見えるような、背中を押してもらえるような、そんな感じになる。
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この人の言葉はどうしてこんなに凛としているんだろう、と思ったら随筆にも手を出してしまった。
ご自分では、ぼんやりと言葉を受け入れていると仰っているが、充分に瑞々しい感性で言葉を捉え、練り上げ、しかし練り上げたとは気づかせない自然さで吐き出している。呼吸みたいに。