- Amazon.co.jp ・本 (339ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480426215
感想・レビュー・書評
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マンガ論としても秀逸なのだが、「笑い」の論考としても秀逸だと思う。具体的な作品を持ちだし、その作品がなぜその当時「笑えた」のか、を構造的な観点と倫理的な観点から切り込むので当時を知らない私にも考える入口を与えてくれる。著者が、自分にとって懐かしい作品をノスタルジックに語らないように事細かに配慮している(なぜなら、ノスタルジーは「笑い」の大敵だからである)のがとても功を奏していると思われる。共感する者同士で楽しむ、というマンガ論も少なくないが、この本にはそれに抗する力があるように感じられる。
最終章には西洋哲学で論じられた内容についてもまとめ、マンガの笑いに絡めて考察している。言葉づかいが固くはないが明朗で、分かりやすい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
最近、藤子・F・不二雄とかを読んでいて、また、松本 零士とかを読んでいて、疑問に思っていたことが、
「赤塚 不二雄とか、江口 寿史とか、ギャグマンガ家たちは、なんでつぶれていったのか?」
ということだったのです。
藤子・F・不二雄や、松本 零士は、永遠に同じことを繰り返していられるのに、どうして、赤塚 不二雄や、江口 寿史は、続けられなかったのか。
その疑問というか、前者と後者の間にある溝がなんなのかが、この本を読むことで、ちょっとだけ、わかった気がしました。
ものすごくとんがったところを目指すと、どんどんとんがり続けてしまうというおそろしい罠があるようです。
でも、笑いって難しいですね。
最後の笑いの考察も、今まで自分が考えたこともなかったようなことでした。
そうして、笑いについて考えているものの顔は、笑っていないという……。