図書館の神様 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 4633
感想 : 523
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480426260

作品紹介・あらすじ

思い描いていた未来をあきらめて赴任した高校で、驚いたことに"私"は文芸部の顧問になった。…「垣内君って、どうして文芸部なの?」「文学が好きだからです」「まさか」!…清く正しくまっすぐな青春を送ってきた"私"には、思いがけないことばかり。不思議な出会いから、傷ついた心を回復していく再生の物語。ほかに、単行本未収録の短篇「雲行き」を収録。

感想・レビュー・書評

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  • ブクログの学校小説5選で紹介されていたので、読みました。

    女教師が不倫をしているのは、ちょっと学校小説としてはどうかと・・・
    でもその先生 清と中学時代はサッカー部、高校は文芸部 という垣内君。
    顧問と部長のふたりだけの文芸部で、このふたりの関係がとても素敵。
    どちらが先生か分らなくなりそうですが、表には出ないけれどお互いが深いところでつながっている。
    愛ではないけれど、先生と生徒、人として純粋に信頼しあっている。

    最後は本当にシンプルな言葉だけれど、それゆえに胸が熱くなりました。

  • 投げやりな生き方をしていた新任教師が、成り行きで文芸部顧問に。
    図書館で何かが始まる?

    早川清(キヨ)は、もともと正しく生きることで身体のめちゃくちゃな不調を乗り越えてきた女の子。
    高校でもバレーボーㇽに打ち込み、自分のスタイルを通していました。
    その熱意のままに、ミスをしたメンバーを叱咤したところ、その子は突然自殺してしまう。
    ‥これはきつい。すぐには立ち直りようが見当たらない。
    強い否定の言葉は人をストップさせる力があると知らなかったのは、若気の至り。とはいえ、ここまでのことには普通はならないでしょう。
    他にも何か悩みがあったのでは、とは考えられるけれど、これといって見つからないらしい。

    清は目標を見失い、離れた土地へ進学、成り行きで高校の国語講師に。
    さらに成り行きで文芸部の顧問になります。大して本を読むタイプでもないのに。
    部員は、3年生の垣内君だけ。
    彼は本好きで、文学が好きだとはっきり言える男。
    落ち着いていて、どっちが先生かって感じだが。
    淡々としている彼にも、中学時代の部活で苦い思いをした経験があったのだ…

    清く正しく生きることをやめた清は、何となく不倫相手の浅見さんと別れきれずに続いています。
    一方、清の弟の拓実は思いやりがある青年で、時々会いに来るのでした。
    やる気なく何気なく続いていくような日常で、生まれてくる親しみと新たな経験。
    人との出会いは、無意味なものではないんだなと。
    後には、高校時代のことにも、ある救いが。

    垣内君と清の間がさわやかで、恋愛ではないけれど通り一遍ではない人と人との間の絆が感じられます。
    奇妙なスタートから始まり、じわじわと心を育んでいく‥
    あたたかな読後感でした。

  • - 神様っていつやってくるんだろう?
     〈0〉章から始まる物語。主人公・早川清(キヨ)のこれまでの生い立ちが駆け足で語られます。そして、続く〈1〉章では、唐突に高等学校の国語の講師として着任した清の4月が語られます。駆け足から、ゆったりとした歩みへ、そして、清に再び転機が訪れます。

    - 神様ってどこにいるんだろう?
    清は文芸部の顧問となりますが、部員は部長一人、でも『文学を通して自分を見つめ、表現し、自分を育てる。 』という活動方針の元、二人だけの学校の図書館を舞台にした文芸部の一年がスタートします。

    - 神様にはどうやったら会えるんだろう?
    弟、不倫相手そして文芸部のたった一人の部員、三人の男性との関係が淡々と描かれていきます。高等学校時代の苦い記憶と不倫生活をズルズル引きずる清、何事にもひねくれた考え方しか出来ない自分に気づいていても変えられない、教員採用試験にも前向きになれない日々。全てが投げやりになり、どうやったら再び前を向くことができるのか、そんな考えさえできなくなっている清。

    - 神様って誰なんだろう?
    『教師というのは不自由な仕事だ。誰とも会いたくない時でも、たくさんの人間と接しないといけない。』とても面白い表現だと思います。国語の講師らしい文章表現だと思う一方で、こんな感じ方をしていて教師に向いているのかという二面性も感じさせる絶妙な表現だとも思いました。その一方で文芸部のただ一人の部員・垣内は『雨って、昔自分が流した涙かもしれない。心が弱くなった時に、その流しておいた涙が、僕達を慰めるために、雨になって僕達を濡らしているんだよ』とノートに記して行く。なんだかベッタベタだけどこちらも垣内らしい。学校の図書館を舞台に二人の文芸部の活動が続きます。

    - 神様って何故現れたんだろう?
    やる気を見出せなかった当初の心持ちを捨て、生徒が関心を持つような授業の工夫を考え出す清。誰でも小中高と、単純に担任だけでも12人もの先生と深く関わることになります。貴方は何人の名前を覚えているでしょうか?先生とは貴方にとってどんな存在だったのでしょうか?『教師は特別な存在でもないし、友達でも何でもない。ただの通過点に過ぎないんだなって。それでいいんだと思う。それがいいんだと思う。』と考える清。『あれ、これって青春?』『どうやらそのようですね』と垣内と語りあう清。すっかり前を向いた清。

    - 神様って何なんだろう?
    そんな教師としての一年の中で清の中に、周囲の人を、人の気持ちを受け止めていく力が芽生えて行きます。苦い過去の記憶ときちんと対峙し、自分の中で芽生えつつある夢に向けて、まずはひねくれた考え方を捨て一人の人間として再生していく、何かが彼女を変え、何かが彼女の中で生まれ、何かが彼女の中で変わっていく瞬間、再び前を向いた早川清の物語が始まる。

    あっさり、さっぱりそしてどこかまったりとした作品。うっかりすると見逃してしまいそうな、気づけないような存在、図書館の神様。読み終えてすぐに気づけなかったその意味にふと気づくことができました。じんわりとしたあたたかさが伝わってくる、そんな作品でした。

  • 若さとは、未熟で残酷だ。
    清は幼いころからの体の不調を「清く正しく」生きることで乗り越えてきた。大好きなバレーに一生懸命取り組み、他人に対しても自分と同じくらい一生懸命取り組むよう求めた。
    自殺してしまった山本さんがミスを繰り返し、試合に負けてしまった時、清が彼女に何を言ったのか、清自身は覚えていない。それほど清にとっては当たり前のことだったのだろう。
    山本さんは他に何か思い悩んでいたことがあったのかもしれない。最終的に山本さんが死を選んだ理由は、もう誰も知ることはできない。ただ、清の思い描いた未来は、山本さんの死によってくずれさった。

    同じく未熟だった高校生の自分を思い出してしまう。
    あの頃、自分の狭い世界が正義だと思い、自分以外の人が違う考えを持っていることを想像できていなかった。だからこそ、清の心の傷を想像し、胸が痛む。

    半ば成りゆきで国語の講師として赴任した清は、意に反して文芸部顧問に指名される。部員は3年生の垣内君ただ一人。淡々と本を読む垣内君だが、彼も中学の部活動で清と同じような経験をしていたことがそれとなくほのめかされる。

    この話は垣内君と清の交流が中心となっているが、その他に重要な人物として出てくるのが清の不倫相手、浅見さんと、清の弟の拓実だ。
    浅見さんは清と同様自分の正義にまっすぐで、相手の気持ちを慮ることができない。一方の拓実は、いいかげんなところもあるが、人の気持ちに寄り添うことができる優しい人間だ。

    「僕は相手の内面を読み取る能力が低い」という垣内君。彼は文学に触れることで人の気持ちを想像しようとする。社会人バスケチームに参加し、様々な年齢、立場の人とも交流を持つ。
    清は、浅見さんや拓実の言動を通じて、今では自分が山本さんの気持ちを理解できていなかったことをわかっているが、前に進むことができずもがいている。
    浅見さんは過去の清、垣内君はこれから進むべき清を表しているように思える。

    卒業一週間前の文芸部発表会で、垣内君は堂々とプレゼンする。
    「毎日、文学は僕の五感を刺激しまくった。」なんてかっこいい言葉だろう。
    私もこの本を読みながら、五感をフル回転し、登場人物の気持ちを一生懸命想像した。
    清も文芸部での一年を経て、きっと前に進んでいける。それを想像させるラストに思わず涙がにじんだ。

  • 『図書館の神様』ってどういう意味なのかな?
    とまず思いました。
    図書館に神様が宿っているという意味なのか、誰か登場人物のことを指しているのか。

    高校の国語講師になった22歳の早川清は本当は高校の時にやっていた、バレーボール部の顧問になりたかったのですが、文芸部の顧問にされてしまい、たった一人の部員の三年生の垣内君と二人で時間を過ごします。
    清には、高校の時、バレーボール部で部員のミスを責めて、自殺に追いやったのではないかと思い自分を責めている過去があります。
    垣内君もまた中学の時にサッカー部のキャプテンをしていて、その時の部員が事故で半年入院していたことがあったことを清はあとで知ります。

    以下、完全にネタバレですので、まっさらな気持ちでこの作品を読みたい方はご注意ください。
    (どうしても書きたかったのですいません)

    垣内君は卒業式の一週間前に文芸部の発表で語ります。
    「文学を通せば何年も前に生きてきた人と同じものを見れるんだ。見ず知らずの女の人に恋することだってできる。自分の中のものを切り出してくることだってできる。とにかくそこにいながらにして、たいていのことができてしまう。
    のび太はタイムマシーンに乗って時代を超えて、どこでもドアで世界を回る。マゼランは船で、ライト兄弟は飛行機で新しい世界に飛んでいく。僕は本を開いてそれをする」
    清は「文学は面白いけど私にとっての「それ」ではない。今の私には愛すべき人もいない。「それ」をする方法。自分以外の世界に触れる方法。今、思いつくのは一つだけだ」と教師であることに意義をみいだします。

    「神様のいる場所はきっとたくさんある。私を救ってくれるものもちゃんとそこにある」

    図書館の神様の意味はわかりました。

  • 学生時代にバレーボールに打ち込んできたが、訳あって将来の夢をあきらめた早川清。名前の通り清く正しく真っ直ぐに生きてきた学生時代、過去の苦い思いからの反動か、男女関係も少々屈折していた。

    バレーボールの顧問になれるかも?と赴任した高校で任されたのは文芸部。ただ一人の部員である垣内君。ピュアで真っ直ぐな垣内君、とても落ち着いて動ぜず高校生らしからぬ言動には、にくらしいやらほほえましいやら。

    初めての出会いと二人の会話では、おいおい、どちらが先生だよと突っ込みたくなる。いい加減、脱力感たっぷりの清に対しても、常にクールで冷静な垣内君。ときおり二人の会話のぼけとつっこみで、掛け合い漫才のように聞こえてしまうのは私だけか。

    文芸部の朝練は図書館の本の整理、分類コードをやめて分野別に全部並べ直し、重労働ですよね。

    「本屋さんになれそうですね」
    「どっちかっていうと、司書でしょう」

    そりゃそうだ。

    忘れていた気力も思いだし、答えの出るはずもない逃げ込んでいた、都合の良いだけの男女関係からも抜けだし、再度青春のパワーにさらされる清。

    最後の部活で運動部の間をぬって疾走する二人。図書室に戻り床に仰向けに寝転がる。

    「なんなんだ、これは」
    「なんなんでしょうね」
    「いやあ、ひざも笑ってるし、私も笑ってる。体中が笑ってるし」
    「あれ、これって青春」
    「どうやらそのようですね」

    瀬尾さんの優しさいっぱいのドラマでした。

  • 図書館本

    川端康成の骨拾いとか、山本周五郎のさぶ、漱石の夢十夜を再読したくなる。
    私にとっても図書館に神様がいるな。
    神様はどんなところにもいて、力をくれる。

  • 自分の正しさが、いつでも世の中の正しさと一致するとは限らない。けれどそんなことに気づくのは、信じていたものに裏切られたり、心がぽきりと折れてしまったり。哀しいことに自分が傷ついて初めてわかることなのかもしれない。

    傷ついた心は、たやすく他人に委ねることが出来ないのだけれど、人は、恋人や家族、周囲の人々に救いを求めながら癒していくのじゃないかな。たとえ、どれだけ頑なに背を向けていようとも。知らず知らずにだとしても、やっぱり人はひとりでは生きられないのだから。

    清と垣内君の関係が気持ちいいくらい清々しく、さっぱりとしている。お互いに傷をさらけだしたり、舐め合ったり決してそんなことはしない。お互いに踏み込まず、ただ、図書室での文芸部の活動を通して。同志のような絆なのかな。なにもかも知る必要もなく、カミングアウトする必要もない。それでも自分の生きる道が自ずから見えてくるのは、実は答えはとっくの昔にあるのだから。

    あ、一番惹かれたのは垣内くんの文学にたいする姿勢だ。それはそれは格好いいのだ。

  • うーん、さすが瀬尾まいこさん、うまいなぁという一冊でした。

    特に、やりたくもないのに文芸部の顧問になってしまった主人公の女性、早川清と、たった一人の文芸部部長の垣内君のやりとりが、なんとも心に染みる。なんだろうなぁ、この感じ。いい加減で、文学や本にも特別な愛着もないし、ましてや教師らしくもない主人公の清。でもそんなだらけた感じがかえって親近感を感じてしまう。言い換えればとても人間臭い。それに対して、本当はスポーツもできるのに、たった一人で文芸部にいて、放課後を図書館で過ごす垣内君。顧問の先生(清)との会話がなんとも面白い。どっちが先生なんだかと思ってしまうが、それが二人のほどよい距離感を表しているようで微笑ましい。次第に文学に興味を持ちだしていく清。読書に夢中になる姿になんだか嬉しい気持ちになる。そして、最後の主張大会での垣内君のスピーチも素敵だったなぁ。人に何かを伝えるとき、書いたものを読みあげてもあまり伝わらない。垣内君は推敲に推敲を重ねた原稿を捨てて、自分の3年間の率直な思いをストレートに短く告げる。そう!こういうのが心に響くんだよね!

    そして先生(清)が引っ越しする日に届いた手紙も素敵でした。垣内君らしい短く先生を思った素敵な文章だなと思いましたね。

    ほかの登場人物との話も色々あり、本書は人によって、そっちの方がひっかかったり、不快になったり、合わないと思う人もいるのではないかと思います。でも私はこの話の中で、特に主人公、先生の清と垣内君の一年間の様子に惹かれ、そしてとても心に残りました。こういう読後感を残せるのが、瀬尾まいこさんなんだなぁと改めて感心しました。

  • なんだか主人公の清が好きになれないなぁ...とモヤモヤしながら読み進めてたのですが、読後感は温かく爽やかでした。

    正論や単純明快なルールに従って生きるのは簡単だけど、清いばかりが全てではない。
    自分と他人をうまく騙して適当に過ごすのは楽だけど、それでは生きる意味を見いだせない。

    一歩を踏み出した清が、どうか幸せになれますように。海の描写も印象的でした。

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著者プロフィール

1974年大阪府生まれ。大谷女子大学国文科卒。2001年「卵の緒」で坊っちゃん文学賞大賞を受賞。翌年単行本『卵の緒』でデビュー。05年『幸福な食卓』で吉川英治新人賞を受賞。その他の著書に『図書館の神様』『強運の持ち主』など。

「2019年 『ありがとう、さようなら』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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