図書館の神様 (ちくま文庫 せ 11-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480426260

作品紹介・あらすじ

思い描いていた未来をあきらめて赴任した高校で、驚いたことに"私"は文芸部の顧問になった。…「垣内君って、どうして文芸部なの?」「文学が好きだからです」「まさか」!…清く正しくまっすぐな青春を送ってきた"私"には、思いがけないことばかり。不思議な出会いから、傷ついた心を回復していく再生の物語。ほかに、単行本未収録の短篇「雲行き」を収録。

感想・レビュー・書評

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  • ブクログの学校小説5選で紹介されていたので、読みました。

    女教師が不倫をしているのは、ちょっと学校小説としてはどうかと・・・
    でもその先生 清と中学時代はサッカー部、高校は文芸部 という垣内君。
    顧問と部長のふたりだけの文芸部で、このふたりの関係がとても素敵。
    どちらが先生か分らなくなりそうですが、表には出ないけれどお互いが深いところでつながっている。
    愛ではないけれど、先生と生徒、人として純粋に信頼しあっている。

    最後は本当にシンプルな言葉だけれど、それゆえに胸が熱くなりました。

  • 瀬尾まいこ 著

    いや〜参りました。とんでもなく良かったですよ!この本(о´∀`о)
    激動の人生を送り、深く人生を掘り起こし、心揺さぶるような感動巨編というわけでは決してない!
    でも、純粋に好きだって思う。
    ミステリーでもないのに、読む手を止められず、どんどん読み進めてしまう。

    呆れるわ、と笑いつつも自然に主人公に寄り添って感心したり戸惑ったりしてしまう。
    作者、瀬尾まいこさんの作品のイメージは、
    まず、清く正しく嫌な事があっても、爽やかでいて悪い人は登場しないというセオリーをやっぱり崩さない作家さんだなぁって思う。

    私も自分のセオリーどおり読後に山本幸久さんの解説を読んだ。
    開口一番「ぼくは垣内君の意見に賛同する」という文が飛び込んでくる!
    本に向かって「そう!私も絶対、賛同する」って晴れやかに心の中で声をあげた(^。^)

    『図書館の神様』と題する本作、厄介な体調不良を抱えながら”健全な魂は不健康な身体にこそ宿るのだ”と言わしめる(゚o゚;;
    まずその言葉に面食らった‼︎( ・∇・)
    そんな言葉聞いたことない、健康な身体に健康な精神は宿る…じゃなかったっけ~(・・?
    でも、その聞いたことのないような言葉に病気持ちの私は少し救われた気分になった^^;

    しかもバレボールに打ち込むことで、より元気チャージされて不健康とは程遠い体育会系ではないか⁉︎この話の展開から図書館の神様とはどういう事なのか…興味をそそられない訳がない。一体いつどこに図書館の神様は現れるのだ⁉︎

    「黙るべき時を知る人は言うべき時を知る」文中に垣内君の会話の中で出てくるんだけど…『言うべきときを知る者は、黙すべきときを知る』ってアルキメデスの言葉じゃなかったっけ?なんて思いつつも、要はそんなことはどうでもいいのだ、
    その意味合いを自分の中で知っていて、いざその時を自分で成せることが大切なんだって、そんなことまで気づかせてくれる。

    愛人の浅見や弟の拓実の登場人物はさほど関係ないかのように見えて、実は重要な存在として物語に上手くかかわってくる。その溶け込みかたや瀬尾まいこさんの描き方ってホントいいよなぁ、好きだなぁって思う。
    (弟の拓実のキャラがまたいいのよ(^^)

    ところで、ブクログの方の本棚でも見つけてレビューを読んで、とても読みたくなり、自分の本棚にも登録している山本周五郎さんの『さぶ』という小説の話しが本作にも登場して、本文の内容が少し引用されている。
    ますます、読みたくなった‼︎
    絶対私の好きな作品だ!直感で分かる(°▽°)
    私は山本周五郎賞を受賞している作家さんの作品は何冊か読んだ事があって、山本周五郎賞をとっている作品はいつも素晴らしくて好きな作風で、
    「流石、山本周五郎賞とるだけのことあるわ!」とほくそ笑んでる割に、肝心の山本周五郎本人の作品をあまり読んでないことに今更のように気付く(・・;)いやはや、是非にでもはやく手に取って読まねば、読みたいです。

    文中に出てくる川端康成や夏目漱石然り…
    中学や高校時代に偉大な文人の小説を読めば文学に携わってるような気がして、学校帰りのバスの中で、結構読んでいたけれど、その頃は、解説の中でも紹介されてた川端康成の小説に「あ〜こんなこと書いてた場面あったなぁ」と思いつつも、あの頃の自分はちょっと気味悪い、この文章何だか引くわ〜とも感じたこともあったから、読む年代や精神的な年齢やら時代にも感じ方や受け取り方は随分違うんだろうなぁって思う。
    垣内君曰く「文学を通せば、何年も前に生きてた人と同じものを見れるんだ…、、」
    確かにねぇ、のび太のようにタイムマシーンに乗って、その時代に今ならタイムトラベルしてみたい気もする(^-^)笑

    “文学なんてみんなが好き勝手にやればいい。
    だけど、すごい面白いんだ。”クールな図書委員の垣内君の熱を帯びた言葉に頷いた
     図書館の神様、ここに現るか…。

    過去の思い出に引きずられながら…あんまり乗り気でないことも、茶化したりふざけたり、結局真面目に考え真剣になることもあるけど、ふんわりしたような人生が心地よい気分にさせてくれる本作。
    だけど、ラストに送られてきた三通の手紙
    三通の手紙の中の最後の一通の手紙に
    元々、涙脆い自分だからか…?
    泣きたくもないのに、鼻の奥がつーんとしてきて…またしても、きっちり、涙が溢れてしまいましたよ(´;ω;`)
    瀬尾まいこさん、やっぱり、ずるいよね…。

  • 高校時代のある事件がきっかけで、大好きだったバレーボールをやめ、住んでいた土地からも離れて高校の講師になった清(きよ)は、文学に興味がないのになぜか文芸部の顧問になってしまう。
    文芸部の部員は三年生の垣内君一人だけ。
    垣内君は顧問と生徒の立場が逆なんじゃないって思うくらいしっかりしていて、文学にも詳しくて、文芸部での彼の存在がとても頼もしく思えてきます。
    この物語は、心に傷を負って仕事も恋もどっちつかずの楽な道を選んでしまっている清の再生の物語であると同時に、文学の持つ楽しさ、素晴らしさも教えてくれます。
    垣内君と清の図書室コンビ、最高です。
    実は重たいテーマなのに、瀬尾さんの言葉でとても優しいものに仕上がっていますね。
    人は出会いと別れを繰り返すけれど、本はずっと一緒にいられる友達のようなものだなぁって思うと、何だか嬉しくなります。

  • 投げやりな生き方をしていた新任教師が、成り行きで文芸部顧問に。
    図書館で何かが始まる?

    早川清(キヨ)は、もともと正しく生きることで身体のめちゃくちゃな不調を乗り越えてきた女の子。
    高校でもバレーボーㇽに打ち込み、自分のスタイルを通していました。
    その熱意のままに、ミスをしたメンバーを叱咤したところ、その子は突然自殺してしまう。
    ‥これはきつい。すぐには立ち直りようが見当たらない。
    強い否定の言葉は人をストップさせる力があると知らなかったのは、若気の至り。とはいえ、ここまでのことには普通はならないでしょう。
    他にも何か悩みがあったのでは、とは考えられるけれど、これといって見つからないらしい。

    清は目標を見失い、離れた土地へ進学、成り行きで高校の国語講師に。
    さらに成り行きで文芸部の顧問になります。大して本を読むタイプでもないのに。
    部員は、3年生の垣内君だけ。
    彼は本好きで、文学が好きだとはっきり言える男。
    落ち着いていて、どっちが先生かって感じだが。
    淡々としている彼にも、中学時代の部活で苦い思いをした経験があったのだ…

    清く正しく生きることをやめた清は、何となく不倫相手の浅見さんと別れきれずに続いています。
    一方、清の弟の拓実は思いやりがある青年で、時々会いに来るのでした。
    やる気なく何気なく続いていくような日常で、生まれてくる親しみと新たな経験。
    人との出会いは、無意味なものではないんだなと。
    後には、高校時代のことにも、ある救いが。

    垣内君と清の間がさわやかで、恋愛ではないけれど通り一遍ではない人と人との間の絆が感じられます。
    奇妙なスタートから始まり、じわじわと心を育んでいく‥
    あたたかな読後感でした。

  • なんだろう。このふわっとした空気感。

    主人公は、早川 清(きよ)、22歳。
    常に正しくあることに重きを置いた中・高校生時代。
    バレーボール部のキャプテンとして活躍。
    ところが、身体はアレルギー体質で食べられない物のオンパレード。

    ある時、清が正しいことを意見した後、部員が自殺。
    自分を責めた清は、実家から離れ、思い描いていた道とは違う方向に進みます。
    そして清は、正しさを手放すのと入れ替えに、強い体になっていきます。
    隙のない正しさは、時に相手を打ちのめしますよね。
    でも、部員の自殺は他に原因があったのでは?

    大学を卒業後、清は不倫をしながら高校で国語の講師を務めることに。
    正しくあることをやめて、いきなり不倫ですか?!?
    でも清は、すべてを分かった上で、不倫相手の浅見さんを上手に利用したような…。
    なかなか、したたかです。
    清のそばには、姉思いの弟・拓実くんがいて、さりげなく清を支えます。
    「水清ければ魚棲まず。正しいことがすべてじゃないよ」
    なんだかんだ、優しい男性たちに守られている清です。

    そして物語のメインは、何と言っても、たった一人の文芸部員・垣内君。
    放課後、運動場を見下ろす図書館で、顧問の清と垣内君が交わす言葉が素敵です。
    「文系クラブって、メリハリがないのよねえ」
    「僕は文芸部で毎日違う言葉をはぐくんでいる」
    そして、文芸部廃部の案が出たことに憤る清に垣内君がかけた言葉は、
    「そうやって正しさをアピールすると、体力を消耗します」

    垣内君が中学の時はサッカー部の部長だったことを、
    清は別の先生から知らされます。
    運動部に情熱を燃やしていたことのある二人。
    お互いを詮索することなく、図書館で、程よい距離を保って流れる静かな時間。

    卒業式前の三年生を送る会で、みんなを前に垣内君は次のようなことを語りました。
    「文学を通せば、何年も前に生きていた人と同じものを見、
    見ず知らずの人に恋することができる。
    そこにいならが、たいていのことができてしまう。
    僕は本を開いて、時代や場所を越えていく」

    垣内君は、「一年間ありがとうございました」と、高校を去っていきます。
    清は、新しい勤務先のため、拓実に手伝ってもらって引越しをします。
    オレンジ色の夕陽に感動した拓実が「こりゃ、神さまの仕業としか思えないな」と、
    ここで初めて神様という言葉が登場します。

    でも、私は思うのです。
    図書館の神様とは、本そのもののことで、
    本を開くと溢れ出てくる世界のことじゃないかな…と。

    • yyさん
      ベルガモットさん

      こんばんは。 コメント嬉しい☆彡
      ありがとうございます。
      瀬尾まいこさんの世界、ふんわりしていて不思議ですよね。...
      ベルガモットさん

      こんばんは。 コメント嬉しい☆彡
      ありがとうございます。
      瀬尾まいこさんの世界、ふんわりしていて不思議ですよね。

      私は、ベルガモットさんの『雲行き』に寄せてのコメント
      「『人を好きになるのって瞬間の積み重ねだ。』というセリフが素敵」に
      きゅん♡♪としました。

      ホントに、同じ本を読んで「そう、そう!」って思えるの楽しいですね。
      2022/08/05
    • ☆ベルガモット☆さん
      yyさん、お返事ありがとうございます!
      レビューも読んでくれて嬉しいです☆

      ふわっとした空気感、ふんわりとしていて不思議というコメン...
      yyさん、お返事ありがとうございます!
      レビューも読んでくれて嬉しいです☆

      ふわっとした空気感、ふんわりとしていて不思議というコメントも
      「そう、そう!」ってなっちゃいます~
      同じ本の読後感を楽しめるなんて、ホント贅沢です♪
      これからもよろしくお願いしまーす♡
      2022/08/05
    • yyさん
      ベルガモットさん

      こうやって意見交換できるの楽しい!
      こちらの方こそよろしくです☆彡
      ベルガモットさん

      こうやって意見交換できるの楽しい!
      こちらの方こそよろしくです☆彡
      2022/08/05
  • - 神様っていつやってくるんだろう?
     〈0〉章から始まる物語。主人公・早川清(キヨ)のこれまでの生い立ちが駆け足で語られます。そして、続く〈1〉章では、唐突に高等学校の国語の講師として着任した清の4月が語られます。駆け足から、ゆったりとした歩みへ、そして、清に再び転機が訪れます。

    - 神様ってどこにいるんだろう?
    清は文芸部の顧問となりますが、部員は部長一人、でも『文学を通して自分を見つめ、表現し、自分を育てる。 』という活動方針の元、二人だけの学校の図書館を舞台にした文芸部の一年がスタートします。

    - 神様にはどうやったら会えるんだろう?
    弟、不倫相手そして文芸部のたった一人の部員、三人の男性との関係が淡々と描かれていきます。高等学校時代の苦い記憶と不倫生活をズルズル引きずる清、何事にもひねくれた考え方しか出来ない自分に気づいていても変えられない、教員採用試験にも前向きになれない日々。全てが投げやりになり、どうやったら再び前を向くことができるのか、そんな考えさえできなくなっている清。

    - 神様って誰なんだろう?
    『教師というのは不自由な仕事だ。誰とも会いたくない時でも、たくさんの人間と接しないといけない。』とても面白い表現だと思います。国語の講師らしい文章表現だと思う一方で、こんな感じ方をしていて教師に向いているのかという二面性も感じさせる絶妙な表現だとも思いました。その一方で文芸部のただ一人の部員・垣内は『雨って、昔自分が流した涙かもしれない。心が弱くなった時に、その流しておいた涙が、僕達を慰めるために、雨になって僕達を濡らしているんだよ』とノートに記して行く。なんだかベッタベタだけどこちらも垣内らしい。学校の図書館を舞台に二人の文芸部の活動が続きます。

    - 神様って何故現れたんだろう?
    やる気を見出せなかった当初の心持ちを捨て、生徒が関心を持つような授業の工夫を考え出す清。誰でも小中高と、単純に担任だけでも12人もの先生と深く関わることになります。貴方は何人の名前を覚えているでしょうか?先生とは貴方にとってどんな存在だったのでしょうか?『教師は特別な存在でもないし、友達でも何でもない。ただの通過点に過ぎないんだなって。それでいいんだと思う。それがいいんだと思う。』と考える清。『あれ、これって青春?』『どうやらそのようですね』と垣内と語りあう清。すっかり前を向いた清。

    - 神様って何なんだろう?
    そんな教師としての一年の中で清の中に、周囲の人を、人の気持ちを受け止めていく力が芽生えて行きます。苦い過去の記憶ときちんと対峙し、自分の中で芽生えつつある夢に向けて、まずはひねくれた考え方を捨て一人の人間として再生していく、何かが彼女を変え、何かが彼女の中で生まれ、何かが彼女の中で変わっていく瞬間、再び前を向いた早川清の物語が始まる。

    あっさり、さっぱりそしてどこかまったりとした作品。うっかりすると見逃してしまいそうな、気づけないような存在、図書館の神様。読み終えてすぐに気づけなかったその意味にふと気づくことができました。じんわりとしたあたたかさが伝わってくる、そんな作品でした。

  • 若さとは、未熟で残酷だ。
    清は幼いころからの体の不調を「清く正しく」生きることで乗り越えてきた。大好きなバレーに一生懸命取り組み、他人に対しても自分と同じくらい一生懸命取り組むよう求めた。
    自殺してしまった山本さんがミスを繰り返し、試合に負けてしまった時、清が彼女に何を言ったのか、清自身は覚えていない。それほど清にとっては当たり前のことだったのだろう。
    山本さんは他に何か思い悩んでいたことがあったのかもしれない。最終的に山本さんが死を選んだ理由は、もう誰も知ることはできない。ただ、清の思い描いた未来は、山本さんの死によってくずれさった。

    同じく未熟だった高校生の自分を思い出してしまう。
    あの頃、自分の狭い世界が正義だと思い、自分以外の人が違う考えを持っていることを想像できていなかった。だからこそ、清の心の傷を想像し、胸が痛む。

    半ば成りゆきで国語の講師として赴任した清は、意に反して文芸部顧問に指名される。部員は3年生の垣内君ただ一人。淡々と本を読む垣内君だが、彼も中学の部活動で清と同じような経験をしていたことがそれとなくほのめかされる。

    この話は垣内君と清の交流が中心となっているが、その他に重要な人物として出てくるのが清の不倫相手、浅見さんと、清の弟の拓実だ。
    浅見さんは清と同様自分の正義にまっすぐで、相手の気持ちを慮ることができない。一方の拓実は、いいかげんなところもあるが、人の気持ちに寄り添うことができる優しい人間だ。

    「僕は相手の内面を読み取る能力が低い」という垣内君。彼は文学に触れることで人の気持ちを想像しようとする。社会人バスケチームに参加し、様々な年齢、立場の人とも交流を持つ。
    清は、浅見さんや拓実の言動を通じて、今では自分が山本さんの気持ちを理解できていなかったことをわかっているが、前に進むことができずもがいている。
    浅見さんは過去の清、垣内君はこれから進むべき清を表しているように思える。

    卒業一週間前の文芸部発表会で、垣内君は堂々とプレゼンする。
    「毎日、文学は僕の五感を刺激しまくった。」なんてかっこいい言葉だろう。
    私もこの本を読みながら、五感をフル回転し、登場人物の気持ちを一生懸命想像した。
    清も文芸部での一年を経て、きっと前に進んでいける。それを想像させるラストに思わず涙がにじんだ。

  • 「文学は僕の五感を刺激しまくった」

    本文にでてくる文芸部の垣内くんの言葉です。

    文芸部の先生と生徒の言葉の掛け合いがとても暖かく感じられて、ほっこりしました。

    全然本の内容と関係がないことなのですが、この本のページを開くたび、金木犀や栗など匂いがして、秋の世界観を感じられました。

    文学って嗅覚までも感じられるのか!

    作者である瀬尾まいこさんの淡々と書かれているが暖かさも感じられる言葉一つひとつが自分の五感をくすぐったのかも知れません。

    瀬尾まいこさんの他の作品も見たいと思いました。

  • 高校生の頃にバレー部のメンバーが自殺したのを機にバレーを離れた清が、高校の講師になり、赴任先で文芸部の顧問をしながら再生していく様子を描いたストーリー。

    不倫相手の浅見さんとの関係にモヤモヤしながらも離れられずにいたり、本当はバレー部の顧問をやりたいと思いつつ、文芸部の顧問となり、部長の垣内君に、"文芸部がつまらないとか、外で運動すべきだなどと、よほど顧問とは思えない発言をしたりする清は、高校教師をしつつも、投げやりな感じが否めない。

    そんな清に対して、怒ったり反抗したりすることもなく、大人びた言葉で返したり、お勧めの文学作品を教えたりする垣内君の独特なキャラが好き。
    清の弟、拓実もフワフワしているようで姉想い。
    そういう彼らとのやり取りがすごくよかった。

    そして、正式な高校教師となった清に宛てて、高校の時に自殺した山本さんのお母さんから、清を解放するかのような手紙が届く。
    瀬尾まいこさんらしい、なんだか心がほっこりする読後感。

  • 『図書館の神様』ってどういう意味なのかな?
    とまず思いました。
    図書館に神様が宿っているという意味なのか、誰か登場人物のことを指しているのか。

    高校の国語講師になった22歳の早川清は本当は高校の時にやっていた、バレーボール部の顧問になりたかったのですが、文芸部の顧問にされてしまい、たった一人の部員の三年生の垣内君と二人で時間を過ごします。
    清には、高校の時、バレーボール部で部員のミスを責めて、自殺に追いやったのではないかと思い自分を責めている過去があります。
    垣内君もまた中学の時にサッカー部のキャプテンをしていて、その時の部員が事故で半年入院していたことがあったことを清はあとで知ります。

    以下、完全にネタバレですので、まっさらな気持ちでこの作品を読みたい方はご注意ください。
    (どうしても書きたかったのですいません)

    垣内君は卒業式の一週間前に文芸部の発表で語ります。
    「文学を通せば何年も前に生きてきた人と同じものを見れるんだ。見ず知らずの女の人に恋することだってできる。自分の中のものを切り出してくることだってできる。とにかくそこにいながらにして、たいていのことができてしまう。
    のび太はタイムマシーンに乗って時代を超えて、どこでもドアで世界を回る。マゼランは船で、ライト兄弟は飛行機で新しい世界に飛んでいく。僕は本を開いてそれをする」
    清は「文学は面白いけど私にとっての「それ」ではない。今の私には愛すべき人もいない。「それ」をする方法。自分以外の世界に触れる方法。今、思いつくのは一つだけだ」と教師であることに意義をみいだします。

    「神様のいる場所はきっとたくさんある。私を救ってくれるものもちゃんとそこにある」

    図書館の神様の意味はわかりました。

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著者プロフィール

1974年大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒業。2001年『卵の緒』で「坊っちゃん文学賞大賞」を受賞。翌年、単行本『卵の緒』で作家デビューする。05年『幸福な食卓』で「吉川英治文学新人賞」、08年『戸村飯店 青春100連発』で「坪田譲治文学賞」、19年『そして、バトンは渡された』で「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『あと少し、もう少し』『春、戻る』『傑作はまだ』『夜明けのすべて』『その扉をたたく音』『夏の体温』等がある。

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