コンラッド短篇集 (ちくま文庫)

制作 : Joseph Conrad  井上 義夫 
  • 筑摩書房
3.88
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本棚登録 : 42
レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480426376

作品紹介・あらすじ

自明性への懐疑と不安定な世界感覚。「現代性」を反映するオリジナル短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • 読了後じわじわくる物語多し。
    「文明の前哨地点」「秘密の同居人」「ある船の話」が特に気に入った。「プリンス・ローマン」も捨て難し。「密告者」も悪くはない……結局全部いいんじゃん(笑)

    読了後じわじわというのには、相応の理由がある。
    かなりのページ数を割いて、コンラッド自身の数奇な半生が解説されていて、これが小説そのものよりも奇なりなのだ。
    そのあたりを踏まえて読後感に浸ると、じわじわと面白さが増す。

    未開の奥地とか大海原の船上等、逃げ場のない状況に追い込まれた際の人間のあり様が精緻に描かれている短編集。

    • umitotanpopoさん
      八月舎ってHPはまだ存在していますね。会社が稼働しているのかどうかは分りませんが……気概ある出版社さんのようで嬉しくなりましたけど、やっぱり...
      八月舎ってHPはまだ存在していますね。会社が稼働しているのかどうかは分りませんが……気概ある出版社さんのようで嬉しくなりましたけど、やっぱり経営は難しいのかなぁと。

      コンラッドが今再注目(?)されているのは、おそらく某深夜アニメによるんだと思います。光文社の例の古典新訳シリーズで『闇の奥』を読もうかどうか迷っていた矢先に、アニメの放映があってちょっと引いたものの、在庫僅少にまんまと釣られた次第です(笑)

      ボルヘスも『続審問』の中で何度かコンラッドに触れていますね。
      2013/07/30
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「気概ある出版社さんのようで」
      気概だけでは成り立たないのでしょうね、、、昔はカレル・チャペックの翻訳予定がサイトに載っていたのですが、訳者...
      「気概ある出版社さんのようで」
      気概だけでは成り立たないのでしょうね、、、昔はカレル・チャペックの翻訳予定がサイトに載っていたのですが、訳者が出版社を鞍替え?したりして立ち消えたみたい。。。
      「ボルヘスも『続審問』の中で」
      はい。敬意を表した書き方でしたね(家に戻ったら、読み直さなきゃ)。。。
      2013/08/17
    • umitotanpopoさん
      >カレル・チャペックの翻訳予定がサイトに載っていたのですが、訳者が出版社を鞍替え
      えっ!そうなんですか!? 翻訳料的に折り合わなかったんでし...
      >カレル・チャペックの翻訳予定がサイトに載っていたのですが、訳者が出版社を鞍替え
      えっ!そうなんですか!? 翻訳料的に折り合わなかったんでしょうかね? チェペックの本は一昔前に比べると数が増えた気がするんですが、あれがその鞍替えモノだったりするんでしょうか?
      何にせよ、翻訳料のせい(?)でミョーに高値にならざるを得ない海外文学の現状、どうにかして欲しいものです。昔はもっと気軽に入手できてたのに……
      2013/08/27
  • 「文明の前哨地点」
    アフリカの象牙の交易所は周りに文明的なものは何もない孤島のような場所。そこにいるヨーロッパから派遣された二人の男、カイエールとカルリエは現地の人?であるマコーラ(と"人夫"たち)と働いていた。平穏で何もない日々のなかでカイエールとカルリエのあいだの友情が育つ。しかし、周囲の民族の不穏な動きやマコーラの失策などで二人は隔絶され、やがてその不安はコーヒーに入れる砂糖をめぐって口論に至り、カルリエを殺してしまう?ことになる。会社船が二人を迎えにきた時には、カイエールもそこで以前働いていた前任者の墓で首吊り?自殺をしていた後だった。こういうことは実際にたくさんあったであろう。


    「秘密の同居人」
    別の船でひとを殺してしまった人物が人しれず船に乗り込んでくるのを、船長の"私"がかくまう。まったく似ていない[p]が船のよそ者である点では似たり寄ったりの二人("私"は船長として赴任したばかりだから)は、"私"は"私"の分身のように感じている。それは「同じ瞬間に二つの場所にいる」という気持ち[p99]。誰にもばれないように殺人者を船内に入れておく状態の不思議な感覚はシリアスだが、ユーモアもあるようだ。彼をかくまう奇妙な言動で、ほかの船員に奇人変人におもわれてしまう。


    「密告者」
    無政府主義者?、革命家たちが行っていた地下活動に関わっていたジャーナリスト、著述家のX氏がその体験を語る。ある時期に出た仲間の中の裏切り者を探し出すために、贋の警官に紛してガサ入れをする作戦の結果、ある人物を摘発。X氏の語り口の巧妙さ、リアリティー。コンラッドも同じような活動していたのだろうか、とおもってしまう。


    「プリンス・ローマン」
    苦難の歴史をもつポーランドのある大貴族、ローマン公の話。これも、あるポーランド国籍の男から語られるというかたちをとる。ローマン公は妻に先立たれて失意のうちに、廃人?のような日々を送っていた。ある日、ポーランドの国民が諸国の支配に抵抗して蜂起したことを知ると「一兵卒として」志願し、戦場に赴き数々の困難にも負けずに素晴らしい働きをする。やがてロシアの虜囚になってシベリアなどへ送られて過酷な生活ののち、ポーランドに戻って生活していた。語り手の男の伯父がかつて軍隊でローマン公に会っており、語り手は家でその伯父とローマン公に出会ったのだった。王子様という理想像と現実は違ってはいたが、内容からしてそれは見た目(禿頭とか)のことで、ローマン公の素晴らしいそれまでの生涯は真に貴族的であろう。


    「ある船の話」
    部屋の中で寝椅子に横たわりながら男が女に、ある船での出来事の話をする。戦争時に敵国の潜水艦に物資を供給していた中立国の船を見つけ、故意に座礁させ転覆させた船長のことなのだが、それはどうやら話している男自身のことらしい。中立国の船に乗っていた男にさまざまな感慨を抱きながら、沈めてしまったことについて複雑なおもいを抱きつづけているのである。また、その船の男が嘘をついているというその雰囲気の描写は実にコンラッド的なリアリティがある。

  • ようやく読了。「闇の奥」のような植民地を舞台にした作品だけかと思いきや、祖国ポーランドを舞台にした作品などもあり、以外と多様な作品集。実はコンラッド自体が政治的に迫害され、ヨーロッパの外部にいたという点は面白い。植民地というヨーロッパの外部を描いた作家は実は別の外部に属していたという点が。

  • ひさしぶりに「読書した」と感じた。 文明の前哨地点 秘密の同居人 密告者 プリンス・ローマン ある船長の話ちくま文庫のためのオリジナル編集・新訳。えーっと、岩波文庫の『闇の奥』はどこにいったかな、今ならまた読み返せそう、探してこなければ。

  • 2010.03.07 朝日新聞で紹介されました。

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