手紙、栞を添えて (ちくま文庫)

  • 筑摩書房
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本棚登録 : 96
レビュー : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480426475

作品紹介・あらすじ

四季折々の移ろいのなかで、互いに面識のないふたりの小説家が、文学への深い愛情をこめて、濃密に織りなした往復書簡集。幼少時代の読書体験から古今東西の名作へと、縦横無尽に話題は広がり、繊細な感受性とユーモアを交えた文章で、文学の可能性を語りあう。本を読むことの幸福感に満たされた一冊。

感想・レビュー・書評

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  • ベタベタした文章に辟易しつつも、全体的には面白く読めた。
    お二方の知識が深く、ただただ感心させられる。

    こういう手紙を交わせる相手がいると、楽しいだろうなー、と思った。

  • 中学生くらいの頃、新聞連載を読んでいてとても印象に残っていた。書簡もの好きになった原点かもしれない。

  • 相互の面識がないまま辻邦生と水村美苗の二人が公開書簡の形で文学論を語り合い、そのやり取りをまとめた一冊。日本の古典から近代文学、世界の文学作品まで、広範な文学世界が自由に語られており、一級の文学論を楽しむことができる。

    冒頭で水村美苗が述べているように、文学とは皆が読むべきものでは決してなく、好きだから読むのであるという当たり前の主張は、当たり前だからこそ堂々と語る人が少ないのかもしれない。しかし、今の日本であれ文学を求めている人なんて、「人口の0.05%しかいない」(東浩紀)のが事実であり、好きだからこそ読むという文学の快楽を堂々と肯定するのは、それはそれで好ましいとすら感じる。

  • 読書の喜びを深めるためには、最高の案内人たちだろうとおもう。

  • 西洋に根をもつ二人の作家の往復書簡。東西の名作が語られ、文学と
    はなにか、読書とは何かが考えられる。朝日新聞に連載されたときも読んでいるが、読書好きにはたまらない本である。
    (この本からの引用はそのときに手に取った版によってページ数がバラバラである.) 

  • 水村 美苗同様、私も子供のころ「若草物語」に夢中になった。ただ、説教臭がふんぷんとし、両親を中心に周りにひざまずく姉妹の挿絵とあいまって、「あるべき家族の姿」が白々しく思えてならないのに、なぜ何度も読んだのかがわからなかった。だが姉妹たちの絶えざる「良い子」への意志は、彼女たちの弱点を露呈させる役を果たしている、との水村の指摘に、その理由がわかった。虚栄心、怠惰、感謝の念の不足。姉妹の一人ひとりがどうその愚かさに関わるかに魅せられていたのだった。

  • 水村美苗さんを勧められ、「まずは」と手に取った一冊。
    作家さんの読書遍歴(?)は自分が読んだことのある本・読んだことのない本どちらが出てきても面白いなぁとしみじみ。さらには水村さんと辻さんの間で交わされる会話からは連想ゲームのように次から次へと作品が登場し、それぞれに深い知識・考察がなされるので、厚さは比較的薄いのに内容の濃い一冊でした。
    この本を読むと読みたい本が連鎖的にたくさん出来るので時間がない時には読んではいけないかも…笑

  • 博識に支えられた知的な手紙のやり取りに、頭がくらくらする。
    特に面白いと感じたのは「イワンのばか」に関する記述。「イワンの国」=「文学の読者にはもともと入れない理想郷」との読みに、溜息が出るほど感心してしまった。小さい頃に読んだ「イワンのばか」は、何か深いことが書いてあるような気がするとは幼いながらに思っていたけれど、それがなんなのかは分からなかった。大人になって再読しても分からなかっただろう。人のことを簡単に「ばか」っていうなよ!タイトルにしちゃっていいの!?程度のことしか(はっきりしたことは)思わなかったなあ…。

  • 辻邦生っていうと、わたしにとってはどうも現国の問題文のイメージで、小難しい随筆だか論説文だかの、「このこと」が指す内容を答えなさい、とか問われそうで、あんまりいいイメージじゃない(失礼)なんだけど、水村美苗さんはすっかり辻先生のファンみたいな感じで、それがかわいいとさえいえるような(失礼)。お互いに本当に心のこもったお手紙がすてき。なにしろ教養レベルが違うので内容的には難しいところもあったけど、単純に、ああ本ばっかり読んで現実逃避?していてもいいのかも、と思った。やりとりされている内容は教養的なのに、楽しみのためにひたすら本を読んでもいいんだ、と励まされたような気が。水村美苗さんが、「若草物語」や「小公女」や「高慢と偏見」好きっていうのはやっぱりと思い、うれしかった。これから読みたいと思った本は、「浮雲」「武蔵野」「にごりえ」「断腸亭日記」「渋江抽斎」「細雪」とか。

  • 今日何を読もうか迷ったらいつも手に取る本。

    「生きた、書いた、愛した」
    「黒い絶望や白い諦念」
    「日本語と本当に出あった」
    「文学とは絵空事などではなく、現実に切りこむこと」

    辻氏が描き出した、戦前の東京の裏町の暮らし、
    水村美苗の刺激的な『嵐が丘』論、「一葉」論、「イワンの理想郷」

    この本を読んでいる時間こそ、私にとっての
    「運命のいと高き祝福によって、永遠に滅びることのない時」
    だった。

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著者プロフィール

辻邦生

一九二五(大正一四)年、東京生まれ。東京大学仏文科卒業。六三年「廻廊にて」で第四回近代文学賞、六八年『安土往還記』で芸術選奨新人賞、七二年『背教者ユリアヌス』で第十四回毎日芸術賞、九五年『西行花伝』で第三十一回谷崎潤一郎賞受賞。そのほかの著書に『夏の砦』『嵯峨野明月記』『銀杏散りやまず』『フーシェ革命暦』、連作短篇『ある生涯の七つの場所』全七巻、紀行『美しい夏の行方』、また『辻邦生全集
』全二十巻がある。九九(平成一一)年没。



北杜夫

一九二七(昭和二)年、東京生まれ。父は歌人・斎藤茂吉。一九五二(昭和二七)年、東北大学医学部卒業。神経科専攻。医博。一九六〇(昭和三五)年、『どくとるマンボウ航海記』が大ベストセラーとなりシリーズ化。同年『夜と霧の隅で』で第43回芥川賞受賞。小説に『幽霊』『楡家の人びと』『輝ける碧き空の下で』『さびしい王様』『母の影』など多数。『北杜夫全集』(全15巻)がある。二〇一一(平成二三)年、逝去。

「2019年 『若き日と文学と』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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