夜露死苦現代詩 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
3.71
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本棚登録 : 318
レビュー : 29
  • Amazon.co.jp ・本 (391ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480427021

作品紹介・あらすじ

詩は死んでなんかいない。ストリートという生きた時間が流れる場所で、詩人とは一生呼ばれない人たちが、現代詩だなんてまわりも本人も思ってもいないまま、言葉の直球勝負を挑んでくる…寝たきり老人の独語、死刑囚の俳句、エロサイトのコピー、暴走族の特攻服、エミネムから相田みつをまで。文庫化にあたり谷川俊太郎との対談、作詞家・吉岡治のインタビューを含む長いあとがきを増補。

感想・レビュー・書評

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  •  現代詩の世界はせまい。それは戦後詩が表層的なことばを断ち、より垂直的な隠喩を産み出すことをめざして出発したせいでもあるのだけれども、そうして日々難解さを増していき、ますます新規の読者を遠ざけていく現代詩という場を離れ、もっと身近にある「ことば」に目を向けましょう。たとえば認知症患者のつぶやき、餓死者の手記、特攻服の刺繍、ラッパーたちのリリック、湯呑に書かれた箴言なんかがあたりには満ち溢れています。そうしたものたちはあふれる生活に根差した、あるいは生きていくことのすぐそばに書かれたことばで、それらはおどろくべき輝きを放ってそれらはぼくたちをはっとさせるから、紙の上の詩だけじゃなくて、そうしたことばにも目を向けましょう。現代において書かれたものならそれは現代詩なのだと著者は言う。しかし、出会い系サイトやエロサイトの広告などのそれこそ目から鱗の落ちるようなことばを紹介するとともに目につくのは、リアルタイムで活動する「プロ」の詩人に対する辛辣な批判の「ことば」たちだ。ほとんど暴言だと言ってもいい。それは門外漢をふりかざして語るにはあまりにも(だからこそ)浅はかで、読んでいて気持ちのいいものじゃなかった。少なくともぼくはそうだった。ただ、そうした著者の心無いことばに水を差されたのもさし引いたって、この本を読んでいくつかの新しいことばたちに出会えたのはうれしかった。とくに点取占いの章は読んでいて涙が出るほど衝撃的だった。日常言語を脱臼させたことばのおもしろさはべつに詩じゃなくたって読めることはわかっていたけれど、まさか駄菓子屋に詩的言語が満ちあふれているとは思いもしなかったです。

  • 詩といえば椅子に座って一人で静かに読むもの、そう思っていたが、様々な場所での詩に関するフィールドワークに半ば強制的に連れて行かれるような、そんな一冊。
    言葉はすべての人間に降り注ぐものだし、言葉は誰の足元にもこびりついているものですね。

  • 対談:谷川俊太郎

  • <blockquote>コンビニ前にしゃがんでる子供が、いまなにを考えてるかといえば「韻を踏んだかっこいいフレーズ」だ。60年代の子供がみんなエレキギターに夢中だったように、現代の子供にはヒップホップが必修である。</blockquote>


    <blockquote>暴走族が特攻服に刺繍を入れるとき、いちばんやっちゃいけないこと、それは「他人のフレーズをパクること」だという。</blockquote>
    Don't Bite it.なんだかヒップホップ的。暴走族とヒップホップは元々共通するものがあったのかも。

    <blockquote>しかし結局のところ、好きな物じゃなくて、いちばん嫌いなものの中にこそ、リアリティ隠れてるってことなのかもしれない。なにかを好きになるのは簡単だけど、嫌いになるには、自分のなにかがそれに反応しなくてはならないのだから。

    言い換えれば、一番嫌いなものが、君をいちばんよく映す鏡なのだ。</blockquote>

    ダースレイダーのインタビューも掲載されている。
    日本のヒップホップ・シーンでダースが果たした役割はもっと評価されていい。
    Da.Me.Recordsは日本のヒップホップの地層を豊かにした。

    ダースがブラジルのサッカーに喩えているように、ハチ公前のサイファーなどでフリースタイルを広め、ラッパーの活躍場所を、なによりラッパーの数を増やした。

  •  村上春樹の『雑文集』に本書の書評というか紹介文が載っており、それを読んで興味を抱いて手を伸ばしてみた。意外といってはなんだが、村上春樹と都築響一は仲がよいのだそうだ。

     文芸誌『新潮』に連載されたものだそうだが、タイトルからも著者からも、普通の現代詩論ではないことはすぐにわかる。まずは版元がつけた内容紹介文からコピペ。

    《詩は死んでなんかいない。ストリートという生きた時間が流れる場所で、詩人とは一生呼ばれない人たちが、現代詩だなんてまわりも本人も思ってもいないまま、言葉の直球勝負を挑んでくる…寝たきり老人の独語、死刑囚の俳句、エロサイトのコピー、暴走族の特攻服、エミネムから相田みつをまで。》

     国語の教科書にはけっして載らない「詩」、現代詩の賞にはけっして選ばれない「詩」、しかし著者の心にはまぎれもない文学作品として迫った「詩」の数々を、著者は採集し、論じ、称揚する。

     集められた「詩」の中には、痴呆の老人や統合失調症の患者などが紡いだ、「アウトサイダー・アート」の範疇に収まるものもある。また、母子餓死事件の母親がノートに綴った日記の一節のような、“巧まざる詩”もある。かと思えば、玉置宏が歌謡番組で曲のイントロに乗せて語りつづけた“前振り”の言葉に、「分速360字のトーキング・ポエトリー」を見たりする。
     それらはみな、「書くほうも、読むほうも『文学』だなんて思いもしないまま、文学が本来果たすべき役割を、黙って引き受けているもの」(あとがき)なのだ。

     たとえば著者は、暴走族の特攻服に金糸銀糸で刺繍される「詩」の数々を、次のように称揚する。

    《この世の中に「詩人」と呼ばれ、みずから呼ぶ人間がどれくらいいるのか、僕は知らない。けれど、その職業詩人たちのうちで、自分の会心の作を上着に刺繍して、それを羽織って町を歩けるやつがいるだろうか。自慢の一行を背中にしょって、命のやりとりにでかけられるやつがいるだろうか。》

     一見おちゃらけた本のように見えて(じっさい、笑いを誘うくだりも多い)、じつはすこぶる熱く、挑発的な一冊。そもそも詩とは何か、現代詩が本来果たすべき「役割」とは何かという問いかけが、本書をつらぬく通奏低音だ。著者はその問いを、“異形の詩”の数々を提示することを通じて、現代詩の側に投げかけている。

     企画がよいし、一冊の本としてよくできている一冊。

  • 詩っていうのは身の回りにあふれているんだなぁと思う。何気ない標語なんかも詩だし。いま現代詩を行き詰まらせてるのは、難しくして生き残ろうとしている奴。『すべての芸術はまず落ちこぼれに救いの手をさしのべる、貴重な命綱だったはずだ。』

  • 痴呆系、点取り占い、お色気五七五、池袋母子餓死日記、玉置宏の話芸、32種類の夢は夜開く、ヤンキー刺繍、ヒップホップ、統合失調症、ネット、誤変換、湯飲み、見世物小屋の口上詩、渋谷の街の即興歌人。相田みつを美術館。

    普段いろいろなところで目にするフレーズこそが詩だよ、といわれるとなるほどと思います。

  • 現代詩はストリートに生きている! という面白い着眼点。
    そしてそういわしめる説得力を持つ言葉・言葉・言葉。
    現代詩業界には暗いが、画期的な本なのではないかと思う。
    特に死刑囚、統合失調症の人が書いた詩など、パッションに溢れて胸打たれる。
    赤いテールランプを「命みてえだな」とつぶやく暴走族少年も、また。
    相田みつをにやんわりと苦手意識を表明している谷川俊太郎に笑った(対談)。

  • ボケ老人や分裂病患者、死刑囚の書く言葉こそが現代の詩だ!ということ。 ハイハイ、シュールシュール。よかったね。すごいね。目の付け所が違うね。満悦だね、自己満悦だね。最高だね。実はふた昔前の企画だけど、一周回って面白いね。タモリ倶楽部には先客多いけど、頑張ってね。

  • 文学の一ジャンルとしての「現代詩」は古びて世間から乖離見られない存在になってしまったが、市井の中にはリアルな「現代詩」が存在するーそうした観点から、徹底的に街中の現場に落ちている「現代詩」を収集し、まとめあげた労作。

    登場するのは、点取占い、死刑囚の俳句、風俗店のキャッチコピー、アンダーグラウンド・ヒップホップなど、本当に多岐に渡る。

    その中でも特に素晴らしいと感じたのは、玉木博の話芸である。昔の歌謡曲のイントロの間にその歌の世界観を自らの言葉で表現し語る司会者としての力量には感服させられる。

    ============
    言えないことを 言いたくて
    飲めないお酒を 飲みました
    見れない夢が 見たくって
    切ないうそも つきました
    みんなとけてく グラスの氷
    恋も 涙も 思い出も
    「酒と泪と男と女」
    川島英五さんが唄います
    (本書p112より引用)
    ============

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著者プロフィール

1956年東京生まれ。ポパイ、ブルータス誌の編集を経て、全102巻の現代美術全集『アート・ランダム』(京都書院)を刊行。以来現代美術、建築、写真、デザインなどの分野での執筆・編集活動を続けている。93年『TOKYO STYLE』刊行(京都書院、のちちくま文庫)。96年刊行の『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』(アスペクト、のちちくま文庫)で、第23回木村伊兵衛賞を受賞。その他『賃貸宇宙UNIVERSE forRENT』(ちくま文庫)、『現代美術場外乱闘』(洋泉社)『珍世界紀行ヨーロッパ編』『夜露死苦現代詩』『珍日本超老伝』(ちくま文庫)『ROADSIDE USA 珍世界紀行アメリカ編』(アスペクト)『東京スナック飲みある記』(ミリオン出版)など著書多数。

「2018年 『白い孤影 ヨコハマメリー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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