夜露死苦現代詩 (ちくま文庫 つ 9-7)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (391ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480427021

作品紹介・あらすじ

詩は死んでなんかいない。ストリートという生きた時間が流れる場所で、詩人とは一生呼ばれない人たちが、現代詩だなんてまわりも本人も思ってもいないまま、言葉の直球勝負を挑んでくる…寝たきり老人の独語、死刑囚の俳句、エロサイトのコピー、暴走族の特攻服、エミネムから相田みつをまで。文庫化にあたり谷川俊太郎との対談、作詞家・吉岡治のインタビューを含む長いあとがきを増補。

感想・レビュー・書評

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  • 読み返してみて、あらためて本書が持つ「力」について考える。この本の中では極めてセンシティブにかつ丹念に、アカデミズムに代表される狭い意味での「現代詩」にとらわれない生々しい「言葉」が掘り起こされる。その着眼点の鋭さや意外性、そしてその掘り下げの深さや真摯さにいま一度打たれる。この本を詩や文学を愛しているぼくは「やはりあなどってはいけない」と思った。むろんここから異論を差し挟むことも可能だ(たとえば「既存の詩」を矮小化しすぎていないか、と)。そうした「物議を醸す」きな臭さこそ、新たな議論に向かう「力」だろう

  •  現代詩の世界はせまい。それは戦後詩が表層的なことばを断ち、より垂直的な隠喩を産み出すことをめざして出発したせいでもあるのだけれども、そうして日々難解さを増していき、ますます新規の読者を遠ざけていく現代詩という場を離れ、もっと身近にある「ことば」に目を向けましょう。たとえば認知症患者のつぶやき、餓死者の手記、特攻服の刺繍、ラッパーたちのリリック、湯呑に書かれた箴言なんかがあたりには満ち溢れています。そうしたものたちはあふれる生活に根差した、あるいは生きていくことのすぐそばに書かれたことばで、それらはおどろくべき輝きを放ってそれらはぼくたちをはっとさせるから、紙の上の詩だけじゃなくて、そうしたことばにも目を向けましょう。現代において書かれたものならそれは現代詩なのだと著者は言う。しかし、出会い系サイトやエロサイトの広告などのそれこそ目から鱗の落ちるようなことばを紹介するとともに目につくのは、リアルタイムで活動する「プロ」の詩人に対する辛辣な批判の「ことば」たちだ。ほとんど暴言だと言ってもいい。それは門外漢をふりかざして語るにはあまりにも(だからこそ)浅はかで、読んでいて気持ちのいいものじゃなかった。少なくともぼくはそうだった。ただ、そうした著者の心無いことばに水を差されたのもさし引いたって、この本を読んでいくつかの新しいことばたちに出会えたのはうれしかった。とくに点取占いの章は読んでいて涙が出るほど衝撃的だった。日常言語を脱臼させたことばのおもしろさはべつに詩じゃなくたって読めることはわかっていたけれど、まさか駄菓子屋に詩的言語が満ちあふれているとは思いもしなかったです。

  • 一気読みした。最高。日本語っておもしれいね。やっぱり好きだなー、、

  • 特攻服の刺繍から死刑囚が書いた俳句まで幅広い「現代詩」が筆者の個性的な着眼点によって生き生きと描かれていて、楽しく読めた。人の心に響く言葉=詩とはいったいなんだろう?と考えさせられた。

  • 死刑囚のと統合失調症の話が特におもしろく、分厚いがサクサク読める。
    ヤンキーの長ランの刺繍や見せもの小屋の口上とか、説教湯呑茶碗といったものに心揺さぶられるなら是非読むべし。

  • 「現代」が前につく芸術は全て怪しいw 面白い!現代のポエムは、ヒップホップだろうという発見。とにかく面白かった。
    佐野元春も、現代の詩人はストリートのポップミュージシャンだと言っていたけど、同じ感性なんだろうか。

  • 考え,感じ,思考,感情,瞬間瞬間に生まれ,流れ,留まり,消える。その言葉,あるいは言葉へ変換することで,保持,伝達,吟味,表現,交換,できるようになる。
    人間は言葉を持つために言葉の影響を受けてしまう。
    人間は文字を持つために文字の影響を受けてしまう。

    詩の定義はあいまいだが,人は随分詩的であると。
    人は毎日,言葉を生み出し,言葉で交流し,言葉で表現し,言葉によって行動を導く。生活と言葉は切り離せない。
    生活の充実は言葉の充実。言葉の充実は生活の充実。
    充実した生活の積み重ねは悔いのない人生。

    詩を生み出す,詩を作る,詩的に生きる。
    あまり考えてこなかったことだけに挑戦的なことだ。

  • 2006年新潮社版を読了。
    都築響一ってやっぱり天才だと思う。

    日常にあふれているちょっと変なものをただ「変だね」で終わらせるのではなく、突き詰めて、追求して、なぜそうなったのか考えたり、整理して独特の編集をして見せてくれる気がする。

  • ふむ

  • この本に限らず、基本的に都築さんの作品は普段スポットが当たっていなかったり、当て辛いものに新しい意味づけをして再価値化する面白みに溢れています。

    この作品は、ヤンキーの特攻服に施される刺繍のポエム、死刑囚の辞世の句、湯呑みに書かれるような説教訓、シュールで脱力する絵と文で知られる「点取占い」、見世物小屋の呼び込み口上、はては認知症老人の魅力的な妄言まで、けして文壇などでは取り上げられない言葉を「表現」として見つめています。そしてそれは一段高い場所にあるように感じる「現代詩」に対する強力なカウンターであって、日常的にリアルに響くものであると思いました。

    ハッとするような文章表現は、本を開かなくても、実は日常のそこかしこにあるということに改めて気付かせてくれました。毎度お見事なエディット力です。

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著者プロフィール

1956年東京生まれ。1976年から1986年まで「POPEYE」「BRUTUS」誌で現代美術・デザイン・都市生活などの記事を担当する。1989年から1992年にかけて、1980年代の世界現代美術の動向を包括的に網羅した全102巻の現代美術全集『アートランダム』を刊行。以来、現代美術・建築・写真・デザインなどの分野で執筆活動、書籍編集を続けている。
1993年、東京人のリアルな暮らしを捉えた『TOKYO STYLE』を刊行。1997年、『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』で第23回木村伊兵衛写真賞を受賞。現在も日本および世界のロードサイドを巡る取材を続けている。2012年より有料週刊メールマガジン『ROADSIDERS’weekly』(http://www.roadsiders.com/)を配信中。近著に『捨てられないTシャツ』(筑摩書房、2017年)、『Neverland Diner 二度と行けないあの店で』(ケンエレブックス、2021年)、『IDOL STYLE』(双葉社、2021年)など。

「2022年 『Museum of Mom’s Art』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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