- Amazon.co.jp ・本 (391ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480427021
感想・レビュー・書評
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現代詩の世界はせまい。それは戦後詩が表層的なことばを断ち、より垂直的な隠喩を産み出すことをめざして出発したせいでもあるのだけれども、そうして日々難解さを増していき、ますます新規の読者を遠ざけていく現代詩という場を離れ、もっと身近にある「ことば」に目を向けましょう。たとえば認知症患者のつぶやき、餓死者の手記、特攻服の刺繍、ラッパーたちのリリック、湯呑に書かれた箴言なんかがあたりには満ち溢れています。そうしたものたちはあふれる生活に根差した、あるいは生きていくことのすぐそばに書かれたことばで、それらはおどろくべき輝きを放ってそれらはぼくたちをはっとさせるから、紙の上の詩だけじゃなくて、そうしたことばにも目を向けましょう。現代において書かれたものならそれは現代詩なのだと著者は言う。しかし、出会い系サイトやエロサイトの広告などのそれこそ目から鱗の落ちるようなことばを紹介するとともに目につくのは、リアルタイムで活動する「プロ」の詩人に対する辛辣な批判の「ことば」たちだ。ほとんど暴言だと言ってもいい。それは門外漢をふりかざして語るにはあまりにも(だからこそ)浅はかで、読んでいて気持ちのいいものじゃなかった。少なくともぼくはそうだった。ただ、そうした著者の心無いことばに水を差されたのもさし引いたって、この本を読んでいくつかの新しいことばたちに出会えたのはうれしかった。とくに点取占いの章は読んでいて涙が出るほど衝撃的だった。日常言語を脱臼させたことばのおもしろさはべつに詩じゃなくたって読めることはわかっていたけれど、まさか駄菓子屋に詩的言語が満ちあふれているとは思いもしなかったです。
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