- Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480427113
作品紹介・あらすじ
満洲での少年時代。江田島の海軍兵学校で原爆投下を目撃した日。焼け跡の東京でテキ屋の手先だった頃。そして著述と翻訳に没頭した時代…。昭和20年夏、焼きつくされた街に放り出された海軍兵学校帰りの17歳の少年は、なぜハイデガーの『存在と時間』に魅かれるようになったのか。高名な哲学者が人々との出会いと読書体験を軸に、波乱に富んだ人生を縦横に語る。
感想・レビュー・書評
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日本に於けるハイデガー研究史の濫觴を知ることができ、興味は尽きない。何よりも、この作者の生き様を見て居ると、矢張りこの人物あって20世紀最大の哲学者に向かい合うことが出来たのだということを実感する。なんと言えばいいのか、、、研究者特有のけち臭さ、卑小さ、女々しさ、微細な権力欲、そういったものとは無縁の、天地俯仰して恥じることのないすがすがしい生き方。学問を為す者に、かつては雄風というものがあった。
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広島に原爆が投下されたのを江田島で経験した、もと海軍兵学校生だった少年が、この国を代表する哲学者の一人になります。
ぼくたちの世代で現象学に興味を持った人は、フランス語やドイツ語ができるならともかく、大概の人はこの人の翻訳のお世話になって、「うちのめされた」と思います。
老いた哲学者は希代の語り手になって、チャンバラ小説から人生論まで縦横無尽ですが、彼は江田島で原爆を見て、闇屋をして家族の糊口を支えた青年だったことは、もちろん出会ったこともない人ですが、ぼくの彼に対する信頼を支えていると思います。
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https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/201909110000/ -
ハイデガー研究の大御所が、自らの半生とそれに関わる人々について、包み隠さず、歯に衣着せず、遠慮会釈なく、自由に語りる。読んでいて痛快この上ない。こんな風に生きられたら、とうらやましく思う。また、現象学周辺のブックガイドとしても読めるし、哲学研究のあり方論としても読める。木田元の著作が好きなら、読むべき本である。
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【あらすじ】
木田元という哲学者がどのように若い時に生きて、哲学者になったかの自伝。
【感想】
何がきっかけでこの本を取ったのか思い出せないが、非常に読みやすい語り口だと思った。
この人が大成したのは色々な要因があるんだろうけど、私が思うにとにかく人と触れ合うことが好きだったからだと思う。本の中にはかなり多くの人が出てくるが、どの人についてもよく知っていて、何かしらのエピソードを交えて語れるのは、すごいと思う。
あと、哲学については詳しくないので、よくわからないが、語学の勉強方法や語学の勉強が精神を安定させる効果があるという話は興味深かった。 -
木田さんの生きてきたその人生の道程がはっきりとわかり、そこから生き方を見出すこともできる良書。
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今夏亡くなられた哲学者の青春時代をインタビュー形式でまとめたもの。
全く作者のことは知らなかった。新聞の訃報欄で「闇屋」、「哲学」というとんでもなくミスマッチな紹介に触れ、一読。
闇屋を経て大学に入るまでの過程も面白いが、大学に入ってからの猛勉強ぶりには驚かされる。そして思うのだ。私は哲学者には成れないな、と。 -
木田元の文章は頭ではなく身体的に理解できる。その理由は生い立ちにあった。
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タイトルに惹かれ購入。
木田元という哲学者らしからぬ哲学者の自伝。
満州での少年時代や日本に帰国後の闇市でのテキ屋の使い走りや運び屋の時代の話は正直驚いた。
一歩間違えばそのままチンピラかヤクザになりそうなものを、著者の性格からか生まれの良さなのか運の良さのなのか、哲学の道を歩み始める。
そのエピソードが面白い。
後半のハイデカーや現象学についての記述は僕には手に負えず正直分からないことばかり。哲学はやはり一筋縄にはいかない学問らしい・・・・、ということは分かった。
印象に残っているのは語学について。
ハイデカーやヘーゲルなど難しい哲学書を原書で読みこなす語学力は凄い。英語だけでなくドイツ語、ギリシャ語、ラテン語、フランス語とマスターし原書を丁寧に翻訳していく。学問の基礎体力は語学力を身につけることなのかな、と感じた。それに語学の勉強は精神を安定させるところがある、とは目から鱗でした。。 -
10129
11/07 -
タイトルが面白かったので購入。
気にはなっていた哲学者で、老境に入ってからの自伝。
これが滅法面白かった。
哲学者っていうといつも難しそうな顔をして考え込んでいるというイメージがあると思うが、随分豪快。
戦後とはいえ、かなり無茶をして生きていたことが分かる。
そこからドストエフスキーやキルケゴールを読み、ハイデカーを読みたくなって勉強し、東北大学へ。
普通にヤクザになっていてもおかしくはなかったのだろうが、そこは素晴らしい血統を持った家柄の遺伝子が勝ったような気はした。
序盤から家柄について多くを費やしているので本人も意識していたとは思う(勉強できなかったとは言っているものの)。
この時代の文系って原書で文芸書や哲学書を普通に読んでいた非常に頭が良く勉強熱心というイメージが強いのだが、この人なんかはまさにそう。
神経が衰弱している時には語学を学ぶのが良いそうだ(安吾も同じことをしていたらしい)。
このことを知れただけでもこの本に出会えてよかった。
暇つぶしに語学やってみよう。
後半は普通に現象学の概論とか本の宣伝めいた部分もあってやや退屈な部分もあったが、全体としては星4つはつけられると思う。
とりあえずこの人のハイデカー論は読もう。