茨木のり子集 言の葉1

  • 筑摩書房
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本棚登録 : 289
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本
  • / ISBN・EAN: 9784480427519

感想・レビュー・書評

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  •  以前何かで紹介されていた「倚りかからず」を読んで、身を律することの厳しい強い人なのかなあという印象を持った。

     TVで紹介されたためか、『言の葉』3冊が書店に積み上がっていて、いい機会だと思い、まとめて読むことにした。
     
     1に収録されているのは最初期の詩集からのものなので、戦後を感じさせるものが多いが、一つ一つの言葉は平易だが力強く、著者の考え方、生き方が真っ直ぐに感じられて、読んでいて気持ちが良い。
     そうして読み進めていって、最後の「りゅうりぇんれんの物語」に打ちのめされるような衝撃を受けた。中国山東省から、労働力徴発のため日本軍に攫われて、結婚して間もない身重の妻に言付けすらできず引き離され、北海道に連れて行かれた。重労働の日々、中国に戻ろうと脱走、しかし陸続きではなく故郷は遠い。終戦も知ないままに隠れ隠れて14年。妻は我が子を育て待っていてくれた。
     こんなことがあったのか。自分の生まれる前のこととはいえ、この詩を読んで初めて知ることだった。帰国後に中国で書かれた本に拠って詩の内容は書かれているのだろうが、作者は、りゅうりぇんれんと開拓村の子どもとが一瞬出会うシーンを挿入し、ラスト、時がたち、その子があの出会いを思う場面を描いている。日本人のしたことへの贖罪の気持ちが、著書にこの場面を書かせたのだろうか。

     それからラジオドラマとして書かれた「埴輪」。埴輪を作るに至った歴史を背景に繰り広げられるドラマがとても面白い。滝沢修や山本安英が出演していたようだが、音源が残っているのなら、是非聴いてみたい。

     山之口貘について、詩及び詩を作る苦労、沖縄出身者としての苦労多かった人生などについて、詳しく知ることができたのも良かった。

  • ここのところ、何故か茨木のり子に出逢うことが多くて、それでまとまって読みたい欲に駆られた。

    まさか茨木童子から来ているとは知らず。
    けれど、腕を奪い取って、高笑いして消えてゆく鬼のイメージが、まったく重ならないわけでもなく、笑ってしまった。

    有名な「わたしが一番きれいだったとき」も入っているけれど、一番は「こどもたち」かな。
    大人は、子供には何も分からないと思っている。
    自分は、どこかで分かる時が来ているはずなのに、自分には届かないと思っている。
    虐待事件のニュースを見ていると、この詩の持つ、こどもたちの瞳を想像してしまう。

    エッセイやシナリオも収録されている。

  • 比喩がとてもすてき。

    「頼りない生牡蠣のような感受性」

    とか、他の詩集に出てくる

    「柘榴のような傷口も」

    という表現。

    強いんだけど、頑なではないところがとてもすてき。

  • なんて真っ直ぐな人なんだろうと衝撃を受けて以来、私は茨木のり子さんの詩が好きだ。「わたしが一番きれいだったとき」は教科書に載っていたので、1度くらい目にした人も多いのでは?女性らしい感受性、凛とたくましく生きている生命観。茨城さんのように繊細な感受性を失わずに生きれたらどんなに素敵だろうと思う。大人になっていくと廃れているなという部分が見つかるが、茨城さんの詩を読むと救われたような気分になる。
    茨城さんがどのようにして詩人になったかのエッセイもついているので、それも面白く読むことができる。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      後藤正治の「清冽―詩人茨木のり子の肖像」を読んでタメ息ついてます。

      えっと、、、、レビュー文中の表記が茨木じゃなく、茨城になってます。。。
      後藤正治の「清冽―詩人茨木のり子の肖像」を読んでタメ息ついてます。

      えっと、、、、レビュー文中の表記が茨木じゃなく、茨城になってます。。。
      2012/06/26
  • 「詩」にはなかなか親しめていなかったのに、いつの間にか日常に「詩」が入り込むようになったのは、茨木のり子さんのおかげです。
    いっとき、深く耽溺し、別の世界にと思っていたのに、著者生前に編まれた自選作品集にまた手が伸びてしまいました。第一巻は、1950年から1960年代の詩、エッセイ、ラジオドラマ、童話、民話、評伝と充実しています。エッセイのうち、「櫂 小史」、すごく面白い。そして、「語られることばとしての詩」にはガツンとやられた感じです。
    この中で、読み過ごせない箇所があり、自分なりにまだ自問自答中です。茨木は、「いくら惚れこんだとしても、泣いてしまっては元も子もない。また、もし詩に感動があるとするなら、「泣き」からは最も遠い地点に立つものであることを、理解しないのなら、何をか言わんやと思ったのである。日本では最高の讃辞が「泣いてしまった」であるらしく、源氏物語の頃より、延々と見えがくれしてきた私たちの感受性の質なのだが」というのである。そうなのか?魂を震わす言葉があり、涙が込み上げることもあるのでは?
    と、いつまでも、発見があって、楽しい。

  • 正直、茨木のり子さんの詩は大半がよく分からない。でも、分かる詩はとっても好きだ。彼女の生き方が伝わってくる。この本の最後の「山之内漠」さんについてが、一番面白かった。貧乏詩人の漠さん。よく落語家さんが「うちは貧乏ですけど貧困ではありません」という言葉が脳裏に蘇った。まさにそんな感じ。それにそんな人に嫁いだ人も偉い。「貧乏はしましたけれど、わたくしたちの生活にすさんだものはありませんでした。ともかく詩がありましたから・・・・・・」だって。素敵すぎる!

  • 1950年代〜60年代の、茨木のり子女史の詩集「対話」「見えない配達夫」「鎮魂歌」からの詩篇と、エッセイ、ラジオドラマ、童話、民話、評伝を収録。茨木さんが、詩以外にも色々な作品を生み出していることを初めて知った。
    いずれも戦争の空気感を感じるものだったり、人の負の側面が炙り出ているような仄暗い雰囲気を感じるものだったりが多かった印象。本当に作品を理解するには、当時の時代背景をしっかり理解していた方がよいのだろうとは思うが、あまり時代背景を鮮明に思い描くことが難しい私でも、あったはずの瑞々しい日々が奪われてしまった重たさを感じたり、日本がおこなった残忍とも思えることを知ったりすることができた。

  • 茨木のり子集言の葉(1)(全3巻)(ちくま文庫)
    著作者:茨木のり子
    発行者:筑摩書房
    タイムライン
    http://booklog.jp/timeline/users/collabo39698

  • p.2021/5/24

  • 初々しさが大切なの
    人に対しても世の中に対しても
    人を人とも思わなくなったとき
    墜落が始まるのね
    堕ちてゆくのを
    隠そうとしても
    隠せなくなった人を何人も見ました

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著者プロフィール

1926年、大阪生まれ。詩人、エッセイスト。1950年代より詩作を始め、53年に川崎洋とともに同人雑誌「櫂」を創刊。日本を代表する現代詩人として活躍。76年から韓国語を学び始め、韓国現代詩の紹介に尽力した。90年に本書『韓国現代詩選』を発表し、読売文学賞を受賞。2006年死去。著書として『対話』『見えない配達夫』『鎮魂歌』『倚りかからず』『歳月』などの詩集、『詩のこころを読む』『ハングルへの旅』などのエッセイ集がある。

「2022年 『韓国現代詩選〈新版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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