生きさせろ!難民化する若者たち (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 112
レビュー : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480427670

作品紹介・あらすじ

我々は反撃を開始する-。若者の貧困と、怒濤の反撃を社会に訴えた記念碑的ノンフィクション。なぜ「生きる」ことがこんなに大変なのか?企業に使い捨てられる派遺社員、名ばかり管理職の正社員、そして急増する若年ホームレス。作られた不安定層=プレカリアートの実態を徹底取材。湯浅誠、松本哉、入江公康、杉田俊介にも取材。JCJ賞受賞。最終章を加筆した。

感想・レビュー・書評

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  •  前から読みたかった本で、文庫化を機に初読。

     「若者の貧困と、怒濤の反撃を社会に訴えた記念碑的ノンフィクション」というカバーの惹句に誇張はない。元本は2007年に出たものだが、いまでは一般に定着した「若者と貧困」をめぐるキーワードの数々が、本書ではまだ名前もつかないまま、新しい現象として取り上げられている。「ネットカフェ難民」「ゼロゼロ物件」「貧困ビジネス」など……(たとえばネカフェ難民について、本書では「漫画喫茶で暮らす家なきフリーター」と表現されている)。
     ブレイク前の湯浅誠もインタビューで登場するし、いまや全国に広がった「フリーター労組」についても、一般にはあまり知られていなかった初期の活動が記録されている。

     本書の最大の美点は、全編にみなぎる「熱さ」だ。「我々は反撃を開始する」のリフレインが印象的な「はじめに」を読んだだけでも、その桁外れの「熱さ」が伝わってくるだろう。一歩間違えれば、ノンフィクションの枠を超えてアジビラまがいになりかねないほどの「熱さ」なのである。

     その「熱さ」の源は、著者自身が物書きデビュー前に使い捨てフリーターとしての苦渋と絶望を経験していること。本書を書かせたエネルギーの一つはそのころの「怨念」だと、著者自身も述べている。
     くわえて、著者の弟も某企業の「名ばかり管理職」(この言葉も本書刊行後に一般化したもので、本書には出てこない)として過労死寸前にまで追い込まれ、著者や母親が必死で説得して退社させたという。その経緯も、本書に詳述されている。
     
     そうした背景があるからこそ、学者や大新聞の記者が貧困を論ずるような「上から目線」は微塵もなく、徹頭徹尾「当事者目線」で「若者と貧困」が語られているのだ。

    《久々に読み返して、いろいろなことを思い出した。
     ほとんどの取材は自らアポを取り、一人で行ってテレコを回したこと。涙を堪えて取材し、テープ起こしをしながら思わず号泣したこと。怒りに任せてキーボードを叩き、パソコンが壊れたこと。血眼になってたくさんの資料を漁ったこと。(文庫版で加筆された「三年目の最終章」より)》

     そのような熱い当事者目線から記録された、貧困にあえぐ若者たちの言葉の数々が胸を打つ。たとえば――。

    《彼はインタビュー中、「もっと貧しい国のことを思うとだいぶありがたい」と口にした。その言葉に、過去の自分の感覚がよみがえった。
     私自身、まさにまったく同じことを思っていたからだ。自分が貧しくても、不安定でも、まぁアフリカなんかの飢え死にしてるような人に比べればだいぶマシだ、と思っていた。そう思わないと自分の状況を肯定できないからこそ、そうした。自分自身について、せめて幸福だと思えることが、とりあえず「先進国である日本に生まれた」ことくらいしかないのだ。なんだか過去の自分が可哀想になってきた……。》

     過労死した若者に代わって大企業と闘う遺族の姿もルポされていて、その部分は涙なしに読めない。
     たとえば、23歳で「過労自殺」した派遣社員の若者の、母親へのインタビュー。そこには、次のような肺腑をえぐる一節がある。

    《子どもが亡くなったときには、「ああ、もう怖いものはなくなった」と思いました。自分より先に子どもが、しかもあんなふうに腐敗した姿で亡くなっていると、それ以上怖くてつらいことは考えられなくなりました。しばらくは、人の笑い声を聞くと腹が立ちました。何がそんなに嬉しいのよと腹を立てながら、大粒の涙がぽろぽろ出てきて本当に困りました。夕方、買い物とかに行きますよね。夕方って人の顔がはっきりわからないのでシルエットが浮かぶ。そうすると、二三歳の骨格がわかるんです。なぜかわかる。そうなるといつまでもそのシルエットの人物を目で追ってしまうので、苦しくなってくる。これは一生続くことなんです。》
     
     これはもう、詩だと思う。血を流すような肉声で謳われた“巧まざる詩”だ。

  • 僕もフリーターだった身。
    僕も請負孫請けIT下請け会社にいた身。
    いまでもそう変わらないかもしれないが、大きな労組があるのが違いか。

    いろいろな状況がわかった。

    さすがに派遣→請負→派遣を切り替えてごまかす会社にはびっくりした。
    これは、ひとつの視点でしかないと思う。
    やり方はもっと他にもあると思うが、何も動いてない私が言ってもだめだ。

    やっぱりアジアに仕事投げる前に、日本で人材雇用したほうがイイと思う。

    まあ、選挙には行こう。



    以下レビューは、この本に望み過ぎで、別の本を読めばよいと思う。
    /--amazonでのレビュー抜粋----
     ただそれは単に、餓死するくらいなら泥棒した方がましのレベルの発言で、なかなか共感を得られるものでないだろう。ワーキングプア側からの一方的な恨み節な記述しかなく、企業=悪、貧困な派遣労働者=被害者という視点からしか取材活動が行われていなく、ワーキングプアからしか賛同を得れない内容になっている。
     正しいかどうかは読者が判断するのだから、企業側の正当な反論も掲載させて欲しかった。
     
     読んでて、非常に疲れた本。
     作者の柔軟性のない理論からはじまり、拡張させる取材力がないのが一番の駄作の原因かもしれないが・・・
    -------------/

  • 2010年刊行。ワーキングプア・過労死の生々しい実例を数多く紹介し、格差社会問題の様相を広く紹介しようとするもの。労働基準法を潜脱する、偽装請負・名ばかり管理職の実情は本書記載のとおりと考えてよいが、形式を整えられている場合にその形式とは異なる実情を証明するには困難な点も孕んでいる。また、働き続けながら労働条件の改善を図るときの困難さも本書記載のとおりだろう。労基署をいかに動かすかがキー。他方、サービス残業の徹底的取締りと最低賃金の引上げがなされれば、生活保護受給額との逆転現象は解消されるだろう。
    もっとも、本書の例は若年労働者に絞っているが、中小企業の経営者の生活も相当厳しい人が多い。そのような人が本書にあるようなワーキングプアー層に転落する場面も多いのではないか。こういう全体の閉塞感を打破するべき方法が要るのだが、どうしたらよいのか?同一労働同一賃金の原則も守られていないし…。なお、本書に挙げられる某国会議員には暗然とする。労働基準法のルールを守らせないままに、労働者の自助努力を強調するのは如何なものか。片手落ちの謗りを免れまい。

  • うーん、希望がみいだせない。。

    登場する派遣社員やフリーターの話は、社会環境のせいもあれど、本人にも問題があるのではと思ってしまった。

    花澤健吾のカバー絵はとてもいい。

  • 請求記号:X1725/366.02
    資料ID:50072980
    配架場所:図書館階西館1F 文庫
    【感想文 byF .J】
    現代の日本が抱える雇用問題、労働格差について述べられており、人間が持つべきである「生きる」権利を今一度考え直すという内容です。ブラック企業の実態や請負社員、派遣に対する劣悪な労働環境や待遇のずさんさなどが分かりやすく書かれています。これから就職活動をするにあたって、志望先の企業を知っておくことは非常に重要です。自分自身の将来をより安定したものにするためにも、労働形態などの知識を身につけておくことは大切です。この本は分かりやすく身近な雇用問題について書かれているので「大まかに雇用問題を知りたい」という方におすすめです。

  • ちょうど雇用問題の文献をいくつか読んでいる最中に目に留まった一冊。格差社会に磨耗した人々の心は感情をも押し殺している。怒りを持って声を張り上げる時期がきている。切実だ。

  • 想像以上の良書。都合よく使い捨てられる労働者、世間からなかったことにされるフリーターや満喫難民など、広くかつ深く濃密な文章たち。

    あとはあとで書く。
    ほんといい本。

  • 1)とし
    「生きさせろ」
    「貧困の現場」

    ○今の日本の現状
    【働きたいのに働けない】
    ○原因
    決め付け
    自分も行動してみよう
    ○メッセージ
    「自分の興味のある分野を探求・行動してみる」

  • (「BOOK」データベースより)
    我々は反撃を開始する―。若者の貧困と、怒濤の反撃を社会に訴えた記念碑的ノンフィクション。なぜ「生きる」ことがこんなに大変なのか?企業に使い捨てられる派遺社員、名ばかり管理職の正社員、そして急増する若年ホームレス。作られた不安定層=プレカリアートの実態を徹底取材。湯浅誠、松本哉、入江公康、杉田俊介にも取材。JCJ賞受賞。最終章を加筆した。

  • 「妻子持ちフリーター 夢は映画」といった事例など、個人的に非常に近い境遇だった事もあり、かなり自分に引きつけて読んでしまった。共感して読める人には、少しの勇気を与えるかもしれない。非正規雇用・不安定層の実態を知らない人は、衝撃とともに楽しめると思う。両者に届いてほしい、面白いが辛い一冊。

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著者プロフィール

作家・活動家。1975年北海道生まれ。愛国パンクバンドなどを経て、自伝的エッセイ『生き地獄天国』で作家デビュー。2007年『生きさせろ! 難民化する若者たち』でJCJ賞受賞。格差・貧困問題に取り組み、生きづらさや自己責任論に対抗する発言・執筆活動を続ける。反貧困ネットワーク世話人、週刊金曜日編集委員。共著に『1995年 未了の問題圏』(大月書店、2008年)。

「2019年 『この国の不寛容の果てに』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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