全身翻訳家 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
3.91
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本棚登録 : 243
レビュー : 33
  • Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480428493

作品紹介・あらすじ

食事をしても子どもと会話しても本を読んでも映画を観ても旅に出かけても、すべて翻訳につながってしまう。翻訳家・鴻巣友季子が、その修業時代から今に至るまでを赤裸々かつ不思議に語ったエッセイ集。五感のすべてが、翻訳というフィルターを通して見える世界は、こんなにも深く奇妙でこんなにも楽しい。エッセイ集「やみくも」を大幅改編+増補した決定版。

感想・レビュー・書評

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  • 日露同時通訳の米原万里さんのエッセイを読んでいると、通訳ってすごい…!と思うことしきりなのだけど、時々通訳との対比で書かれている翻訳家にも興味があり、今読んでいる『風と共に去りぬ』の新訳をされた鴻巣友季子さんのエッセイを借りてきた。単純な私は、翻訳家ってすごい…!と思うことしきり。

    風と共に去りぬのスカーレットは生命力と野心の塊なのだが、鴻巣訳は、そんなスカーレットを時に愛らしく、時にコミカルに描き出している。
    原文の魅力はもちろんなのだろうが、するりとその世界観に入り込んで読めてしまう優れた訳文だと思う。スカーレットはこんなだったのかと再確認している。

    通訳について書かれた一章と五章が特に面白かった。
    鴻巣さんの生活は、通訳漬け。
    米原さんも通訳について同じことを言っておられたが、翻訳も、単語の置き換えではなく、意味本質を掴み、解釈を繰り返す作業。仏師が木の中の仏様を木屑を払ってお迎えする作業に近いという。
    しかし時には、中国系オランダ人がオランダ語で書かれたものの英語訳を日本語に翻訳するといい、そうすると元の中国語の意味を推測しなければならず、しかも中国の故事成語や毛利東語録などの出典も調べないといけないというから、気が遠くなりそうだ。
    それに、英語ができればいいというものではない。読者は日本人だから、最終的には日本語能力がものをいう。文脈の中でどんな意味を持つか、どの単語を選び、どのような文章を構成するか。言葉遊びや、時代、国、文化背景の違いによる言葉の意味合いの違いをどう訳すか。例えば、単位は悩ましいという。just a half dozen of kids…半ダースの子供とは一般的な言い方ではないし、6人というのは日本語としてはキリが悪い。

    通訳はその場で調べられない、自分の知識だけで切り抜けないといけない怖さ、翻訳はあとあとまで残る怖さがあるようだ。どちらも、語学音痴の私からするとやはり尊敬しかない。

  • 読みたかった本。豪快さと繊細さを併せ持つ鴻巣さん。翻訳の裏話みたいなのはもちろん、不思議な話にざわざわ感じたりと、読み応えあるエッセイ集だった。

  • 『明治大正翻訳ワンダーランド』を読んで以来。
    さすがだなあ、と思う。

    翻訳者のエッセイなら、先ごろ岸本佐知子さんの作品を読んだ。
    あれもとても面白かった。
    岸本さんのサービス精神と、稀有のキャラクターのなせる文章だった。

    こちらは、エッセイから伝わる著者の生活ぶりもすてきだが、翻訳者としての苦心や気配りなどが、より突っ込んで書かれている部分が印象に残る。

    『風と共に去りぬ』の、「明日は明日の風が吹く」という名訳。
    これは誰のものなのか。いつから流布したのか。
    「スカーレットと江戸ことば」はこの事情を明らかにしていて、とても面白かった。

    阿部知次の昭和十一年の抄訳にはじまり、数々の訳を見てもそれらしきものではない。
    どうやら菊田一夫が舞台にかけたところがはじまりらしく、その舞台に立ってきた黒柳徹子の証言を得る。
    それが、江戸っ子の流行りことばだった、とは。
    こういう、深く深く、一つの言葉、表現にも意識を向けていくところが流石だ。

  • この方の文章、かなり好きです。
    日常の描き方、言葉や文章の考察などおもしろく読んだ。

    外国文学にほとんど触れてこなかったことが悔やまれる。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      翻訳家のエッセイはとっても好き。私が外国語コンプレックスだからかなぁ~
      翻訳家のエッセイはとっても好き。私が外国語コンプレックスだからかなぁ~
      2012/07/09
  • 失礼ながら、実際のところ翻訳文芸を全く読まない人が敢えてこの著者の本を手に取る可能性は大分低いだろうから、そういう人達は読者として想定されていないようで、その手のまどろっこしさはなく、サクサク読み進められる。あ、感じ悪い?(笑)

    柄谷行人が禁煙する話とか、長野県上田市で温暖化対策で密かにミカンの試作してる(シークレットって書いてあるけど出版物に公表していいのかw)とか、貴重なエピソードもあり。ちょいちょいとご自分の新訳の話が出てくるので、読みたくなっちゃう!『嵐が丘』辺り。

    お料理はだいぶお得意そう。お酒がお好きでスイーツは今一つ、らしい。神社仏閣のお好きなお嬢ちゃんはもう大きくなったのかな。

    思春期に『テレーゼ・デスケルウ』にハマった口で雨がお嫌いとは甘いなあと思いつつ、でも私も『城の崎にて』で蜂が死んでるのは畳の上だったと思い違いをしていたので、おあいこということで。ん?何が?(笑)

    東京農大の「バイオリウム」に行って、キツネザルを見てみたい★
    筆者のご近所「下高井戸シネマ」も行ってみたい★

  • トピックはバラエティに富んでいて、文章は回りくどくなく、オチもあったりしてすごく良い。
    わざとらしさのない、好きな感じの文章。

  • 2011-8-12

  • 読書量の多さに圧倒される。ワインなどお酒の知識も豊富。

  • 新書文庫

  • 著者の翻訳書を読んだことはないのだが,エッセイは面白い。
    図書館の新着棚から拝借

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著者プロフィール

1963年生まれ。翻訳家、文芸評論家。英語圏の現代および古典文学の翻訳、新訳を手がける。訳書に、ブロンテ『嵐が丘』、ウルフ『灯台へ』、ミッチェル『風と共に去りぬ』、クッツェー『恥辱』『イエスの幼子時代』『イエスの学校時代』、アトウッド『昏き目の暗殺者』『獄中シェイクスピア劇団』『誓願』ほか多数。編訳書に、集英社ポケットマスターズ『ポー』など。著書に、『明治大正 翻訳ワンダーランド』『熟成する物語たち』『謎とき「風と共に去りぬ」』『全身翻訳家』『翻訳教室 はじめの一歩』『翻訳ってなんだろう?』など。

「2021年 『名場面で味わう日本文学60選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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