本と怠け者 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
3.77
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本棚登録 : 122
レビュー : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (359ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480428745

作品紹介・あらすじ

借家に住み、あまり働かず、日中はたいていごろごろしている。古書店めぐりをすませたあとは、なじみの高円寺酒場で一杯。天野忠、矢牧一宏、ラスキン、十返肇、古山高麗雄、阿佐田哲也、梅崎春生、深沢七郎、中村光夫…日々のなかで出会うなつかしい本たち。魚雷さんの目で見れば、古書もまた別の輝きを帯びてくる。「ちくま」の人気連載「魚雷の眼」に書き下ろしおよび未収録原稿を加えた、文庫オリジナル古書エッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • 荻原魚雷さん、好き。一度だけご本人と対面したことがあるけど、ほんとうに小さな声でひそひそと話される方で、文章もそのイメージのまま。だけど、大きな声よりもしみるんだよな~。

    夏葉社島田さん(こちらはお目にかかったことなし)の『あしたから出版社』もボイスの感じが似ていると思ったんだけど、そうしたらこちらの本で『昔日の客』がとりあげられていて、「あれ、これってたしか夏葉社が一番最初に出した本じゃなかったっけ?」と思ったらやっぱりそうだった。読まなきゃね。

    ちゃんとしていない大人を自認している著者だけど、好きなことがはっきりしていてそれに粘り強くしがみついて自分の居場所を作りだし、頭はいつも働かせている。だから、怠け者というほど怠け者じゃないんだろうとも思う。ただ、本をひっきりなしに読んでいると、外から見ると何もしていないように見える。そういう生き方がなかなかしにくくなってしまった今の日本で、こうやってひそひそとささやくように生きている魚雷さんの存在って、なんだか励みになるのだった。

  • 9年越しの読了。世間の大多数が乗っているレールからはずれているのはわかっているけれど、そんな生き方を後押ししてくれるような文章が読みたくて、古本屋めぐり、そしてこれぞという一冊にめぐりあったら、折に触れて再読、時に本が壊れるまで何度も、といった幸せな読書体験をいくつも送ってこられたことが手に取るように。そして、世間に慣れる/馴れるということが、文章において大事な輝きをそこなってしまうのではないか、という思想がそこかしこに見てとれる。以下備忘録的に/”大人になっても、小さなことを気にして落ち込んだり、ちょっとしたことで傷ついたりするような初々しい感受性を保持すること。仕事や生活をしていく上では、そうした感受性は邪魔になることが多い。邪魔になるから、齢とともに、だんだん鈍くなる。そのかわり、打たれ強くなる”(p.109)/批評とは、小林秀雄をはじめ、「人が如何しても生きなければいけない」ということについて愚直に考え続けてきた先人たちの思索の軌跡であり、集積である。(p.323)

  • ”希望をいえば、好きなだけ本を読んで、好きなだけ寝ていたい”(怠け者の読書癖)

  • 力の抜けたタイトルとPOPな表紙から、ゆるーいエッセイ集かと思ったら、結構しっかりした書評集だった。
    内容自体は面白いんだけど、じゃあその評されている本が手に入るかといったら…うーん…。
    とりあえず、著者の本をもういくつか追いたいと思う。

  • 魚雷さんの本の読み方に共感を覚える。いいな。

  • 古書と書評と人生観と。

    タイトルに惹かれて手にとってみれば、なんとも素敵なエッセイでした。

    紹介される古書も文士たちもほぼ知らなくて、でも引用される文章や魚雷さんの言葉を読むうちに親近感がわいてきました。

    とくにお気に入りは、「与太大王、浪吟す」の安成貞雄さんのエピソード。
    コカイン中毒で、人の金で酒を飲み、家賃は滞納しているし、先輩友人から金を借りまくる…どうしようもない人なのに、没後、弟さんが遺品の手紙を整理したところ…

    p.141
    …「どれも借金の申込みに快く金を送ったり、都合がつかなくとも近く送るというような好意に満ちた手紙ばかりだった」…

    この奔放さとそれを許せる周囲の寛容さ、関係性がとても羨ましい。

  • タイトルが気に入った
    いろんな作家とか批評家とか本とかについてのエッセイ集
    タイトル通り怠け者ばっか
    できるだけ怠けたいし世間の目から逃れたいと思ってるので気に入った内容が多かった
    ライターになるのだけはやめようと思った

  • 2011年9月10日、初、並、カバスレ、帯なし
    2014年1月26日松阪BF、

  • だめな人の、だめな人による、だめな人のための本。
    作家にはだめな人が多い。だからだめな人の本を読む機会は結構多い。結構多いが、それはあくまでも、一対一の読書である。たはは、こいつは、本当にだめだなと、だめな自分が共感する。
    そんな機会は結構あるが、この本は、だめな人が、だめな人の文章をネタにしているので、もし読者もだめな人ならばおもしろい体験ができる。
    あはは、この人だめですね、っつー文章を、たはは、本当本当だめだなー、っというだめな人パーティー。もちろん、自分のだめさを自覚しているので嘲笑ではなく共感。親しみこもりまくりの肯定。

  • 図書館で予約待ちしていたこの文庫と、前後して『活字と自活』の本がまわってきた。こっちの文庫は、うしろに予約待ちの人がいて、先に読む。

    なぜか私のアタマの中では、この本の荻原魚雷さんと岡崎武志さんがごっちゃになっているのだった(古本方面のことを書いてる人、という括りになっている)。いまさら気づいたが、荻原さんは同い年の人だった(岡崎さんは、ちょうどひとまわり上)。学生の頃からフリーライターとして仕事を始め、以来20年あまりという魚雷さん。文庫カバーの袖には「なかなか生計が立てられず、アルバイトで食いつなぎ、現在に至る」とある。

    この本で紹介されるのは、魚雷さんの好きな作家たち、古本のなかに脈々と生息する「怠け者」。そのエッセイを、私もたらりたらりと読みながら、魚雷さんが○歳の頃にこんなことを考えていたとか○歳の頃にどうだったとかいうのを読んでは(その頃の自分は、どこで何をしてたっけな)と思い出したりしていた。

    ▼希望をいえば、好きなだけ本を読んで、好きなだけ寝ていたい。
     欲をいえば、酒も飲みたい。
     もっと欲をいえば、なるべくやりたくないことをやらず、ぐずぐず、だらだらしていたい。(p.9)

    食っていくためには、あまりやりたくないこともサクサクとこなさなければならなかったりする。私は、たぶん人に比べれば好きなだけ本を読んでいるほうだとは思うが、『We』を出して、自分も食っていくためには、わりこむ仕事の時間もそれなりにある。2ヶ月にいちどくらい「カスミを食って生きられるなら『We』は続けられるのかも…」と、せんないことを思う。

    魚雷さんの古本話を読んでいて、読んでみたいなーと思った本がたくさんあった。その中でとくに、築添正生の『いまそかりし昔』(りいぶる・とふん)、臼井吉見の『あたりまえのこと』に入っているという「戦中派の発言」、松田道雄の『日常を愛する』をメモする。

    臼井吉見のエッセイで自分の戦争観が変わり、『若者を見殺しにする国』で平和観が変わった、衝撃だったという魚雷さんはこう書く。

    ▼寝る場所もなく、ただひたすら搾取される「平和」と、「食って、着て、寝るところのある軍隊生活」を送れる「戦争」と、どちらがいいのか。(p.89)

    私が、『育児の百科』とか『私は赤ちゃん』の人として知っていた松田道雄を、魚雷さんは『現代日本思想大系 アナーキズム』の編集解説者として知ったという。そんな面もあるのかと初めて知る。その松田のエッセイに「おだやかとまとも」というのがあるそうだ。それを読んだ魚雷さんの弁。

    ▼どんな立派な意見にも耐用年数がある。くりかえし同じようなことを表明していれば、聞いている人にあきられる。まともなことが通らないから、いらいらして、声高になる。そのことにより、悪感情すらいだかせてしまう。(p.115)

    この本に引かれている「まともなことを、おだやかにいうことはむずかしい」という松田道雄の一節を読みながら、鶴見俊輔が書いていた言葉を思い出す。

    「市民運動は、担い手が自分の暮らしの中に新しい発見をもつことを通して続く。そうでないと続かない。」(『ちいさな理想』)

    穏やかに言っていては通らない、伝わらないこともあるのだろうと思う。怒りといらだちの中で発する言葉には勢いもつく。けれど、そのために伝わらなくなるものも、たぶんあるのだろう。どうすれば、自分の暮らしの中に新たな発見をもつことができるか。とりわけ、人に語りかけることができるか。

    いまでは手に入りにくくなった本から引用もずいぶんとあって(図書館で相互貸借を期待するにしても、ちょっと難しそうな本もあり)、ずるずると読みたい本なのだが、うしろの予約待ちの人がいるので、いったん図書館へ。でも、また借りてきて、ときどき読みたい本。

    それにしても、この本で書かれている、魚雷さんが好む「怠け者」「世捨て人」の系譜につらなる作家に、女性の姿がみあたらないのは、怠けや世捨てという範疇に女性がいたとしても、それを本にまでして残せる機会がなかったのだろうかと、そんなこともちょっと思った。

    (12/16了)

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著者プロフィール

【著者】 荻原魚雷(おぎはら・ぎょらい)
1969年三重生まれ。文筆家。著書に『古書古書話』『日常学事始』(以上、本の雑誌社)、『本と怠け者』(ちくま文庫)、『古本暮らし』(晶文社)ほか、編者をつとめた本に『吉行淳之介ベスト・エッセイ』(ちくま文庫)、梅崎春生『怠惰の美徳』(中公文庫)ほかがある。

「2020年 『中年の本棚(仮)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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