本と怠け者 (ちくま文庫 お 65-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 201
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (359ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480428745

作品紹介・あらすじ

借家に住み、あまり働かず、日中はたいていごろごろしている。古書店めぐりをすませたあとは、なじみの高円寺酒場で一杯。天野忠、矢牧一宏、ラスキン、十返肇、古山高麗雄、阿佐田哲也、梅崎春生、深沢七郎、中村光夫…日々のなかで出会うなつかしい本たち。魚雷さんの目で見れば、古書もまた別の輝きを帯びてくる。「ちくま」の人気連載「魚雷の眼」に書き下ろしおよび未収録原稿を加えた、文庫オリジナル古書エッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • 「怠け者の読書癖―序にかえて」で著者は、『希望をいえば、好きなだけ本を読んで、好きなだけ寝ていたい。欲をいえば、酒も飲みたい。もっと欲をいえば、なるべくやりたくないことをやらず、ぐずぐず、だらだらしていたい。』と言っている。本読みの人間にとって理想的な話だが、実はある程度の制限が課されていないと、"読書"は楽しめないのだとあらためて思った。本書の内容は、専門的過ぎて読み取れない部分が多かった。

  • 魚雷さんの文章すばらしい。今の時代、堂々と怠けるという言葉は使いづらいが、それを意気揚々と書いている。小林秀雄や吉行淳之介などは気になるが、それらを紹介する本としてもおすすめである。他の著作もぜひ読んでみたい。そしてブログ、高円寺文壇にも注目。

  • 古書と書評と人生観と。

    タイトルに惹かれて手にとってみれば、なんとも素敵なエッセイでした。

    紹介される古書も文士たちもほぼ知らなくて、でも引用される文章や魚雷さんの言葉を読むうちに親近感がわいてきました。

    とくにお気に入りは、「与太大王、浪吟す」の安成貞雄さんのエピソード。
    コカイン中毒で、人の金で酒を飲み、家賃は滞納しているし、先輩友人から金を借りまくる…どうしようもない人なのに、没後、弟さんが遺品の手紙を整理したところ…

    p.141
    …「どれも借金の申込みに快く金を送ったり、都合がつかなくとも近く送るというような好意に満ちた手紙ばかりだった」…

    この奔放さとそれを許せる周囲の寛容さ、関係性がとても羨ましい。

  • 荻原魚雷さん、好き。一度だけご本人と対面したことがあるけど、ほんとうに小さな声でひそひそと話される方で、文章もそのイメージのまま。だけど、大きな声よりもしみるんだよな~。

    夏葉社島田さん(こちらはお目にかかったことなし)の『あしたから出版社』もボイスの感じが似ていると思ったんだけど、そうしたらこちらの本で『昔日の客』がとりあげられていて、「あれ、これってたしか夏葉社が一番最初に出した本じゃなかったっけ?」と思ったらやっぱりそうだった。読まなきゃね。

    ちゃんとしていない大人を自認している著者だけど、好きなことがはっきりしていてそれに粘り強くしがみついて自分の居場所を作りだし、頭はいつも働かせている。だから、怠け者というほど怠け者じゃないんだろうとも思う。ただ、本をひっきりなしに読んでいると、外から見ると何もしていないように見える。そういう生き方がなかなかしにくくなってしまった今の日本で、こうやってひそひそとささやくように生きている魚雷さんの存在って、なんだか励みになるのだった。

  • あぁいい人を見つけた。
    前々から気になっていた本で、彼の家の本棚に入っていた。

    この姿勢、文章の温度感、拾ってくる文章、よくわからないことを考え込んでわからないまま終わっていく感じ、いろいろとちょうどよくて面白い。
    この本に出てきた作家や詩人たちを掘り下げていきたくなる。
    彼の飾らない低姿勢な雰囲気と怠け癖からくる葛藤がたまらなく好き。
    もっと荻原魚雷の本を読みたい。

  • 楽しい。ほんと本を読んで、寝て、酒飲んで、楽しく過ごしたい。
    お金があればできるね。会社勤めをせずに作者は過ごしてきた。辛い時期もあったろうに。えらい。

  • 9年越しの読了。世間の大多数が乗っているレールからはずれているのはわかっているけれど、そんな生き方を後押ししてくれるような文章が読みたくて、古本屋めぐり、そしてこれぞという一冊にめぐりあったら、折に触れて再読、時に本が壊れるまで何度も、といった幸せな読書体験をいくつも送ってこられたことが手に取るように。そして、世間に慣れる/馴れるということが、文章において大事な輝きをそこなってしまうのではないか、という思想がそこかしこに見てとれる。以下備忘録的に/”大人になっても、小さなことを気にして落ち込んだり、ちょっとしたことで傷ついたりするような初々しい感受性を保持すること。仕事や生活をしていく上では、そうした感受性は邪魔になることが多い。邪魔になるから、齢とともに、だんだん鈍くなる。そのかわり、打たれ強くなる”(p.109)/批評とは、小林秀雄をはじめ、「人が如何しても生きなければいけない」ということについて愚直に考え続けてきた先人たちの思索の軌跡であり、集積である。(p.323)

  • ”希望をいえば、好きなだけ本を読んで、好きなだけ寝ていたい”(怠け者の読書癖)

  • 力の抜けたタイトルとPOPな表紙から、ゆるーいエッセイ集かと思ったら、結構しっかりした書評集だった。
    内容自体は面白いんだけど、じゃあその評されている本が手に入るかといったら…うーん…。
    とりあえず、著者の本をもういくつか追いたいと思う。

  • 魚雷さんの本の読み方に共感を覚える。いいな。

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著者プロフィール

1969年、三重県鈴鹿市生まれ。文筆家。著書に『中年の本棚』『古書古書話』『日常学事始』『本と怠け者』『古本暮らし』ほか、編者をつとめた本に梅崎春生『怠惰の美徳』『吉行淳之介ベスト・エッセイ』尾崎一雄『新編 閑な老人』富士正晴『新編 不参加ぐらし』などがある。

「2024年 『新居格 随筆集 散歩者の言葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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