生き延びるためのラカン (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
3.68
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本棚登録 : 672
感想 : 55
  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480429117

作品紹介・あらすじ

ストーカー、リストカット、ひきこもり、PTSD、おたくと腐女子、フェティシズム…「現代の社会は、なんだかラカンの言ったことが、それこそベタな感じで現実になってきている気がする」。電車内の携帯電話の不快なわけは?精神病とはどういう事態か?こうした問いにラカンはどう答えてくれているのか。幻想と現実がどんどん接近しているこの世界で、できるだけリアルに生き延びるためのラカン解説書にして精神分析入門。

感想・レビュー・書評

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  • 斎藤環先生の本好き。平易な語り口でわかりやすいけど、やっぱり難しい。

  • 転移 治療者を好きになること

    対象a 決して届かない欲望。究極。

    ファルス 去勢されることで生まれる欲望

    私の欲望は他者の欲望である

    象徴界、想像界、現実界
    象徴界が壊れると、意味がわからなくなる。象徴界を治すことが必要。統合失調症の人は夢を見ない。意味や関係性を理解する象徴界が壊れてしまっているから、現実界がリアリティを持って見えてしまうのである。

  • 〜女性を言葉で明確に定義づけることはできない。なぜなら精神分析における性はセックスのことではないから。でも男は定義づけられる。なぜなら男はペニスをもつ存在だから。~
    これはそもそもペニスを精神分析の根底に掲げていること自体男性中心的でおかしい。エディプスコンプレックスにおいてファルスを絶対的なものとして、母の体力や戦闘能力の欠如をペニスの欠如と結びつける点から何の根拠もない男目線の賜物。その男の特権意識をひきづりおろさなきゃ「存在の根拠はファルス」で女性はファルスのない性、男ではない性としてしか解釈されない。フロイトの論をそのまま借用してファルスを存在の前提に置いたままじゃ女性は永遠に謎のまま。筆者はフェミニストに対して、ラカンは男性がえらいとか優秀だとか考えている訳ではないことを強く弁明しているが、問題の本質が全く分かっていない。ファルス(男)を主にして女は謎だと言う、その土台が男性中心的だということ。様々な分野で西洋中心主義だとか、自文化中心主義だとかがはびこっているが、精神分析の分野は酷いものがある。過去の誤った権威を未だにひきずりおろさない。そこを切り崩さない限り女性は永遠に謎のもままだ。女性はこの想像界において男ではない性としてしか存在させてもらえない。
    「女性は無意識の領域ではペニスが欲しくて男性なしでは語り得ない生き物」だという理論が未だに信じられているなんて。

  • 「なんですかねえ、この『許されてる』感は」
    葉月はため息混じりにそんなことを言った。
    「それは『女性は存在しない』っていうところかな?」
    彼のその言葉は、問いかけというよりは確認のようだった。
    「ああ、それかも。お見通しですね」
    葉月は、あっさり認めた。
    彼は頷く。
    「既存の価値観の脆弱さに安堵するのかもしれない。だってそうだろ、欲望なんて他人に与えられるものだと言われたら、そして誰も本当に求めるものに触れることができないと言われたら、あるいは生殖とヘテロセクシャルであることとは無関係だと言われたら、他者への共感など自己イメージでしかないと言われたら―――そうやって、自分を取り巻くあらゆる『当たり前』を疑われたら、心地よいだろ」
    彼は意地の悪い笑みを浮かべていたが、それは嫌味というよりは、暗にそれらを肯定しているという合図のようだった。
    葉月はそれを受けて、思いつくままを言葉にする。
    「この世界は、本当の現実とは違う。結局のところ、人は言葉がつくり上げた世界でしか生きていない。その中でしか関われない。完全で満たされた世界を失って、他者と自己という概念を手に入れて、失ったものを他者に求めて」
    それはなんて孤独だろうと、葉月は言う。
    孤独で、素敵じゃないかと。
    「他者への共感など、所詮は思い込みでしょう? 結局は、自分ならこう感じるというものを、他人に押しつけているだけでしょう?」
    彼は、恐らくは自らに向けられたわけではないであろう問いかけに、静かに口を開く。
    「そうかもしれない。でもそれを忘れないとコミュニケーションは成立しないのかもしれない。相手も同じ、満たされないものを抱えていて、同じように感じているのだと思わなければ―――イデオロギーってそういうものだろう。共同体が共同体であるためには、皆が好き勝手のことを考えていては困るだろうしね」
     それから少し、沈黙があった。
    「段々、何の話か分からなくなってきましたが」
    「言葉は空虚なものだから、かもしれないね」
    彼は冗談めかして、そんなことを言った。

  • 「日本一わかりやすいラカン入門書」との謳い文句だが、ラカンに関係なく精神分析の読み物として面白い。著者はひきこもりやおたく論関係の執筆も多いけど、自ら「精神分析は科学ではないし、治療のツールでは忘れられつつある」と言ってしまう様に精神分析の限界を認めた上であくまでツールとして出来ることを提示していて、その態度にはとても好感を持ててしまう。統合失調症で損なわれているのは「文脈」であるという言葉の通り精神分析と文学というのは相性が良く、精神分析とは人や社会を1冊の書物として読み解く行為と言えるのかもしれない。

  • 最近面白い本に良く出会う。
    幸運。

    斎藤環さんの著書が好きで、最近立て続けに読んでいる。

    彼は、精神分析における、池上彰だと私は思っている。
    精神分析というカテゴリーを、我々素人に分かりやすく説明してくれる。

    本書もそういった本のひとつで、ラカンとその思想について、語りかける口調で説明している。

    私が一番印象に残ったのは、以下の箇所

    「ラカンの言った言葉でいちばんよく引用されるのが、『欲望は他人の欲望である』というものだろう。そう、ラカンは欲望が僕たちの内面にあらかじめ備わっているわけじゃなく、常に他人から与えられるものだ、ということを強調したんだ。」(p.25)

    私自身は旅行に行くのが趣味であるが、よく考えると、自分が楽しむことも面白みのひとつであるが、それを自慢して、周囲の反応をみるのも面白い。そういうことなのだろうか。

    余談ですが、表紙を荒木飛呂彦先生が描いています。
    パッと見、全然荒木先生らしくないのですが、よく見ると、ラカンの締めるネクタイの柄が「キラークイーン」…

    にくいっ!!

  • 20世紀最高の知性、ジャック・ラカンの理論の解説本。日本一分かりやすいラカン入門書と著者が言っているとおり、分かりやすい言葉でラカンの理論が紹介されていました。世界に対する認識が一気に深まったような気になる本でした。面白かった。

  • ラカンは難解、とは思っていたけれど、わかりやすく読めました。
    これがどこまで自分の身になったかは、わかりませんが・・・。

    p.14
    いうまでもないことだけど、言葉に実体がない。つまり、言葉は空虚だ。その空虚な言葉でできあがっている僕たちの心も、本当は空虚だ。僕たちが互いに語り合えるのは、言葉を共有しているから。言い換えるなら、おなじ空虚さを共有しているからなんだ。

  • すごく面白かった。ラカンの概念が初めてすっと頭に入ってきた気がする。
    言葉の世界としての象徴界。イメージ(それがかなり身近である)の想像界。不可触な現実界。
    鏡像段階と想像界の優越。ファルスとしての象徴界。
    欲望の原因としての、不在の対象a。享楽と快感原則。

    ここらへんの概念の理解をより厳密に、深めるために別の本に進みたいところ。
    あと、己の欲望を自覚せよ、というメタメッセージを受信した。

  • 精神分析は、やっぱりよく分からない!

    で、どのへんが「生き延びるため」なの?

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著者プロフィール

1961年、岩手県生まれ。筑波大学医学研究科博士課程修了。爽風会佐々木病院等を経て、筑波大学医学医療系社会精神保健学教授。専門は思春期・青年期の精神病理学、「ひきこもり」の治療・支援ならびに啓蒙活動。著書に『社会的ひきこもり』、『中高年ひきこもり』、『世界が土曜の夜の夢なら』(角川財団学芸賞)、『オープンダイアローグとは何か』、『「社会的うつ病」の治し方』、『心を病んだらいけないの?』(與那覇潤との共著・小林秀雄賞)など多数。

「2021年 『いのっちの手紙』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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