トーベ・ヤンソン短篇集 黒と白 (ちくま文庫)

  • 筑摩書房
3.51
  • (9)
  • (11)
  • (17)
  • (5)
  • (1)
本棚登録 : 267
感想 : 17
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • 本 ・本
  • / ISBN・EAN: 9784480429308

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • なんとなくイライラするのは、本の内容のせいなのか、それとも自分の状況のせいなのか…

    三宅香帆『人生おたすけ処方本』で、『育児がつらいときに読む本』として紹介されていた。
    実際、私にとって育児はつらい。これはぜひ読んでみたいと思って、早速図書館で借りた。
    私にとっての年末年始は、子どもたちが体調不良。帰れるはずの実家に突然帰れない。長くて苦痛な正月休みになってしまった。この状況を「育児がつらいとき」と言わずになんと言おう。読むなら今だ。そう思って読み始めたのだけど…

    暗い。とにかく出てくる人たちがどことなく暗い。精神病んでます?と聞きたくなるような、ちょっとぶっ飛んでいるというか、どこかイっちゃってるような…。時代が違うからか、国が違うからか、イマイチ話の世界観に入り込めない。短編集だからもっとサクッと読み終わると思ったら大間違いだった。

    文庫本のあらすじを見ずに読み始めたのだけど、ムーミンの作者のダークサイド、と紹介されていた。たまらず2話読んだところで解説に駆け込む。トーベ・ヤンソンの短編集から、クセのある人たちのでてくるものを集めた、みたいなことが書かれていた。なるほど…これを正月に読む私…暗すぎる。

    三宅香帆は『人生おたすけ処方本』のなかで、本書を「ブラックジョークにまみれてて最高。登場人物誰一人として正しくない。『私ばっか正しくあろうとしなくていいや』と思えたりする」と紹介していた。
    それはたしかに、そうなんだけど…

    そもそもフィクションである。
    こんな人たちが身の回りにいたら、私は巻き込まれなくないな…と思ってしまう。
    いや、でも待てよ。この仄暗いキャラは同僚のあの人を連想する…。このハイテンションな芸術家は同級生のあの子…。私の母もなかなかにエキセントリックなところがあるし、私の夫も一筋縄ではない…。

    それに比べれば、私ははるかにマシだと思えた。
    そういう私こそ、傍から見ればエキセントリックかもしれないのだけど。

    育児に疲れたら読みたい本。
    私の中では本書はそれには当たらなかった。
    私にとっての心のビタミン本を引き続き探したい。

  • 来年がヤンソン生誕100周年ということで、気になっていた短編集を読んでみた。読後感は、不思議。でも、この感じは好き。最近読んだ本では、アレハンドロ・サンブラ『盆栽/木々の私生活』に所々よく似ていると思った。ただ、あちらがひたすら優しかったのに比べて、こちらは一癖も二癖もある大人味、という印象。面白いというより癖になる、そんな短編集。

  • トーベ・ヤンソンの「陽」がムーミンシリーズだとすれば、「陰」がこちらの大人向けの短編集ということらしい。(と、いいきれるほど『ムーミン』も手放しで「陽」なわけじゃないとは思うけれども)

    フィリフヨンカたちの物語だな、という印象。大災厄にひたすら怯えて怯えて、やがてほんとうに大災厄に襲われた後、とてつもない開放感に踊りだした彼女の影がそこ、ここにあるようでした。(まあ、それだけでくくれるほど簡単な物語ではないですけどね)
    仄暗いイメージなのに、読後感が悪くないのが不思議だなと、余韻に浸ってるところです。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「『ムーミン』も手放しで「陽」なわけじゃ」
      単純に明暗とするのは、ちゃんとムーミン読んだ人より、アニメしか知らない人の方が多いからじゃないで...
      「『ムーミン』も手放しで「陽」なわけじゃ」
      単純に明暗とするのは、ちゃんとムーミン読んだ人より、アニメしか知らない人の方が多いからじゃないでしょうか?
      2012/05/10
  • 全体的に仄暗い印象でした。
    一筋縄ではいかない登場人物が多くて気難しい話が多い中でものすごくひねくれた子供が年相応になる『夏の子供』の読後感が途中いらいらとさせられた分すっきとして良かったです。

  • トーベ・ヤンソンの描く、人間関係の奇妙さや逃れたくなる面倒くささや、誰かと一緒にいても結局はひとりきりだというどうしようもない孤独や、それらをひっくるめての人が生きることへの愛おしさがとても好きだ。

    「記憶を借りる女」がわけわかんなくてすごく怖かった。ああいうホラーも書くのね。ホラーのつもりで書いたのかは不明だけど。
    この短編集に収録されている話は、「記憶を借りる女」以外はみんな好き。

    「クララからの手紙」は、別の出版社(たぶん)が出したトーベ・ヤンソン短編集だともっと長かった気がしたけど、別の短編と記憶の中で混同してるのかな。そっちもまた読み直したい。

  • 子供らしくない言動でホストファミリーを困惑させる少年(「夏の子供」)、美しい刺繍を施す才能と、人の死を予知する千里眼を持った寡黙な女性(「灰色の繻子」)、さえない女性の役を演じるために、地味で控えめな従姉妹を別荘に招いて観察しようとする女優(「主役」)など、どこかいびつで気むずかしい人々が多く登場する。すぐに好感が持てるタイプではないけれども、噛めば噛むほど味が出てくるような人物の造形が魅力。他には、友人や知り合いに宛てた様々な手紙の文面から、手強い高齢女性の姿が浮かぶ「クララからの手紙」も面白かった。計17篇

  • ムーミンもそれなりに「・・・????????」なところあるけども、それはここでも健在
    っていうかむしろそういうのの方が根深い人なんかなトーベ・ヤンソン

  • 文学

  • トーベ・ヤンソン短篇集 黒と白 (ちくま文庫)

  • 童話や寓話的作品を書く人の後ろには、深くて広い自分の世界が広がっているように思います。決して一色では表現できない彼や彼女だけ世界。これを読んでからムーミンを改めて読むと、また感じるものが違ってくるかも。

全17件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1914年、ヘルシンキ生まれ。画家・作家。父が彫刻家、母が画家という芸術家一家に育つ。1948年に出版した『たのしいムーミン一家』が世界中で評判に。66年、国際アンデルセン賞作家賞、84年にフィンランド国民文学賞を受賞。主な作品に、「ムーミン童話」シリーズ(全9巻)、『彫刻家の娘』『少女ソフィアの夏』(以上講談社)など。

「2023年 『MOOMIN ポストカードブック 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

トーベ・ヤンソンの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×