映画は父を殺すためにある: 通過儀礼という見方 (ちくま文庫 し 32-2)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 45
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  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480429407

作品紹介・あらすじ

映画には見方がある。"通過儀礼"という宗教学の概念で映画を分析することで、隠されたメッセージを読み取ることができる。日本とアメリカの青春映画の比較、宮崎映画の批判、アメリカ映画が繰り返し描く父と息子との関係、黒沢映画と小津映画の新しい見方、寅さんと漱石の意外な共通点を明らかにする。映画は、人生の意味を解釈する枠組みを示してくれる。

感想・レビュー・書評

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  • 以前から映画を観ていて、特にアメリカ映画の場合、「父殺し」がひとつの大きな話の類型になっていることに気づく。
    いや、どちらが先かわからないが、この本の存在を数年前に知ってから意識するようになったのかもしれない。

    スターウォーズももちろんそうだけれど、最近観たものだと『ヒッチャー』なんかはズバリそのもの。古い西部劇だと『赤い河』もそうだった。

    自分の話だけれど、僕自身もこの「父殺し」をできず、通過儀礼を通れずに年齢だけを重ねてしまった。
    また、数年前から読書を始めて、「村上春樹」を意識しなかったことはなかった。彼こそが自分の父世代だったからだ。

    この本は映画評論だけれど、それにとどまらず、人生の指標や自分に足りないものを教えてくれる本だ。
    アメリカ映画の父殺し=通過儀礼と、日本映画を比較し、日本にはなぜそういう映画が少ないのかを語っている(はっきりとした結論は出てないように思う)。
    半分以上は観てない映画なので、さらに映画を観たくなった。

    ※追記で。
    本書が最初に刊行されたのは1995年3月。ちょうど地下鉄サリン事件があった頃だ。
    著者は宗教学者で、オウムや新興宗教も研究してたが、「イニシエーション」という言葉が一般的に知られたのはオウムがきっかけであったのかなとも思います。少なくとも、中高生であった僕はそうでした。
    そのあたりの経緯を知った上で読むと、また面白いかもしれません。

    ※再追記。
    宮崎作品においてはジブリ以前と以降、ラピュタまでとそのあと、主人公が飛ぶか飛ばないかがひとつの区切りであるとも言われています。時代背景で言うとベルリンの壁やソ連崩壊以前か以後か。
    寅さん=山田洋次監督がある意味では小津安二郎の後継者、影響を受けているというのもわりとよく見かける言説です。

    それ以上に、延々と「デンキブラシ」と誤植され続けているのには笑った。

  • あらゆるエンタメでよく見るテーマである「キャラクターの成長」を、映画に絞って通過儀礼というポイントから考察・解説している本。

    アメリカの映画だけでなく、黒澤明監督作品や小津安二郎監督作品についても丁寧に批評されていて、とても興味深く読めました。こういう本を読むと映画を見たくなりますね。

  • ちょっとあんま好きじゃなかった。

  • まずタイトルがいい。僕は映画をほとんど観ないのでジブリ作品しか分からなかったけれど、それでも面白かったし、『ローマの休日』は観たいと思った。実写映画よりもアニメ映画のほうが(わざわざ書き込まなければいけないから)映像に意味が帯びやすいと思う。旧エヴァは通過儀礼のという側面で見る事はできそうですね(けど今の劇場版はちょっと違う気がする)。島田さんが村上春樹について書いてる本があればぜひ読みたい。

  • 映画だけに限らず様々な作品の新しい楽しみ方を教えてもらった気がする。当書で取り上げられていた作品の中には以前見たことがある作品もいくつかあり、読んでいる中で「あー確かに!」と納得出来ることも多くわかりやすく面白い本だった。

  • 日本映画の評論が面白かった.

  • 名作や名著には「触れる前と後で違う人間になった気にさせる」という共通点がある。本書もその例に漏れない。読む前と後で、映画の見方が変わる。今までとはちがう視点で、より深く映画を見れそうな気がする。この本自体が一種の通過儀礼なのかもしれない。

  • 学者が映画評論するとこうなるのか?
    自分の好きな映画には無理矢理にでも通過儀礼を持ち込み、なんとかして通過儀礼として解釈させ、よくわからん映画は通過儀礼が描けてないという

    通過儀礼が描けてないとダメか?

    通過儀礼が描けてないことと、良し悪しとは別だろうに

    あと、魔女の宅急便がまさにそれ、というのは、的外れだよね

    アホくさ

    ところどころ面白い、良い視点があるんだけど、総じての印象は、バカ丸出し

    しばしば、自分の長年の努力によって見出した真実によって、かえって自由を失う、ということはよくあるものですが、まさにそれってことですよ

    映画は通過儀礼も描くけど、それだけのものじゃない

    関係ないけど、例えばゴダールは、通過儀礼なんか描いてないけど、ゴダールの映画を見ること自体が通過儀礼になる、というところが凄いよね

  • <blockquote>映画に現実が反映されているということは、映画がたんに娯楽ではなく、社会の中で一定の機能を果たしているということの証である。(P.155)</blockquote>

    思うに"通過儀礼"=大人への階段を上るの=成長するのって1〜2時間もあれば充分っていうか、それくらいの時間の中で起こることなのよね。

    でも、その1〜2時間のために何百時間、何千時間もの積み重ねが必要なわけで、さ。

    ホント、映画って良く出来てるなぁ。


    町山さんの解説が素晴らしい。ちょっと、泣いた。

  • "映画の中で語られるイニシエーション。著者の視点から映画を見つめることで、また違った味わいになる。
    子供から大人へと成長する段階で、必ず乗り越えなければならない試練がある。それを表現しているのが映画であり、多くの宗教や神話で語られていること。
    この本を起点に、神話や宗教について学びたくなった。"

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著者プロフィール

島田裕巳(しまだ・ひろみ):1953年東京生まれ。宗教学者、作家。東京大学文学部宗教学宗教史学専修課程卒業、東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員を歴任し、現在は東京女子大学非常勤講師。現代における日本、世界の宗教現象を幅広くテーマとし、盛んに著述活動を行っている。 著書に、『日本人の神道』『神も仏も大好きな日本人』『京都がなぜいちばんなのか』(ちくま新書)『戦後日本の宗教史――天皇制・祖先崇拝・新宗教』(筑摩選書)『神社崩壊』(新潮新書)『宗教にはなぜ金が集まるのか』(祥伝社新書)『教養としての世界宗教史』(宝島社)『新宗教 戦後政争史』(朝日新書)等多数あり。

「2023年 『大還暦 人生に年齢の「壁」はない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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