ピカルディの薔薇 (ちくま文庫 つ 18-2 幽明志怪)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 38
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480429490

作品紹介・あらすじ

作家として歩み始めたものの、相も変わらず貧困と怪異から手招かれてばかりの「おれ」こと猿渡。これは酔夢か現か。五感を失った人形師、聖女の伝説に彩られた島、弾く者を過去へと誘うウクレレの音色、彼の祖父が目にした満洲-。ユーモラスかつ哀切に満ちた文章が織り成す、幻想と怪奇。「文体の魔術師」津原泰水の超人気シリーズ、書下ろし短篇を加え待望の初文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 猿渡さんのシリーズ2作目。
    今回も不気味なんだけれど気持ち悪すぎない微妙な感覚に襲われた。ゾッとする程ではないが、じわじわ来るというか…なんとも形容し難い。でも、このシリーズ面白いのは確定です。

  • 諸事情により、二作目の方を先に読了してしまいました。笑
    伯爵の登場が少なくてちょっと寂しかったですが、やっぱり面白いですこのシリーズ!

  • 電子書籍

  • 今回も怪奇現象に絡まれる猿渡さんが目白押しです。ただ伯爵との絡みが少ない。個人的に前作の方が好きだな。

  • 故津原泰水を読み直す第三弾は<幽明志怪>シリーズの第二作。中井英夫『虚無への供物』への供物集『凶鳥の黒影』に寄せられた圧巻の表題作を初め、作家となった猿渡が遭遇した夢か現か判然としない幻想譚九編。いずれも彫琢された珠。完璧である。昔とある偉い翻訳家の先生が「一行でもいい、きらめく文を」と言っていたが、たとえば「甘い風」の中、登場人物がハワイマウイ島でウクレレの名器をつま弾いたところの描写。「最初の和音を奏き降ろしたら、島じゅうの精霊が一斉に息を呑んで振り向いたような気がしました。」 泣くよ。

  • 再読
    幽明志怪シリーズ2作目。前作は猿渡と伯爵の2人が取材旅行に行った先で怪異に遭遇する話が多かったが、今回は作家となった猿渡が過去体験した出来事、或いは怪異譚を聞くストーリーが多め。伯爵と行動を共にして遭遇する話もあり。
    「夕化粧」の「抜いてもまた出てくるから」や「超鼠記」の「産んでたんだよ」等、一言だけでこんなにもゾッとさせられるものか、と。オチ部分をハッキリとは書かず、読者の想像力に任せる終わり方はとにかく怖い
    「フルーツ白玉」の白鳥と従兄が食べた肉も実は「○○」では…?と想像してしまう

  • ふわふわと、狡い。そんな印象。

    猿渡という人物が、どこまでも実体が掴めず、いわゆる読者の「興味」を満たしているとは言えないのに、この満足感。
    小説として巧緻の極みで、ああ、物語を楽しむと同時に、小説を読む悦びも与えられていると実感。

    乾いているようで、しっとりとしたエロス。
    油断ならない男だな、猿渡クンも作者も。

    表題作、ハンス・ベルメールの人形が生きて出現したとしか思えない存在感(男の子だけど)。
    「新京異聞」、どこに連れて行かれたのかと。
    時代も国も超え、猿渡クンと伯爵に会えるとホッとする。

  • 幽明志怪シリーズこと、猿渡シリーズの続巻。時間軸や時によっては次元もいったり来たり。相も変わらず不思議なものばかり引き寄せている。
    文体に嫌みがなく、わざとらしさがなく、しかしながら作り込まれているようで、かなり好み。ストーリーも、わかったようなわからないような、不思議な後味。すーっと読めるのに、パンチは聞いており…ようは、面白かった。

  • 「蘆屋家の崩壊」同様、猿渡と伯爵のコンビが各話で縦横に活躍するものかと思いきや、それとはまた異なる趣きを持つ纏まりに仕上げられている。
    例えば皆川博子氏が書く傑作群と比べてもまったく引けを取らない幻想小品、都筑道夫氏の物すホラーを彷彿させるかのような怪奇譚等、津原泰水氏の"そっち側"の才気がどの作品からも立ち上っている。
    表題作を読んでいたら、「奈々緋紗緒のCDが云々」なんて件が出てきて、おおなんだこれは、と一人驚いていたら、なるほど、そもそもが「虚無への供物」へのオマージュとして著された作品だったんだな、これは。

  • 幻想的で怪奇的でもあるのにコミカルでペダンチックで。
    つまりいえばとりとめがない。
    最後の数行で作中の常識をふわりと浮かせる韜晦趣味はやはりジョナサン・キャロルのファンというだけはある。
    ともかくも大いに旅させてもらった。

    表題に幻惑。
    そして表紙に眩暈。

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著者プロフィール

1964年広島市生まれ。青山学院大学卒業。“津原やすみ”名義での活動を経て、97年“津原泰水”名義で『妖都』を発表。著書に『蘆屋家の崩壊』『ブラバン』『バレエ・メカニック』『11』(Twitter文学賞)他多数。

「2023年 『五色の舟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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