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- / ISBN・EAN: 9784480429599
感想・レビュー・書評
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テーマといい中身といい、いいノンフィクション作家なんだけどな。剽窃の件が頭にちらついて…。
それでも評伝・畸人伝系が好きな自分にはたまらない本だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
短編で読みやすく、内容もとてもおもしろかった
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ノンフィクションライターとして誰の心にもまっすぐ届く"小文字"で書くこと、主人公以上に魅力的なバイプレイヤーを見つけることを心がけてきた。脇役達にスポットライトをあて、彼らの魅力を再発掘していく。
そう遠くない、記憶の範囲につながる過去、歴史と現在とのはざまの記録。 -
登場人物たちの“底光り感”がなんともいえない。いちばん有名なのは小渕元首相だろうが、彼とていまではその名を聞くことはほとんどなく、“忘れられた日本人”となってしまったような気がする。読み終えたあとに、かつて輝きを放った彼らが忘れ去られてゆくことへの無念さがこみあげてくる。宮本常一と同名の著作とはまた違った魅力がある。
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ノンフィクション作家・佐野眞一氏が自らの足で集めた数十年に及ぶ膨大な取材ノートから紡ぎだした忘れえぬ、忘れ去られてゆく日本人たちがここには記録されております。そのどれもが強烈な存在感を放っております。
本書はノンフィクション作家・ 佐野眞一がその数十年におよぶ取材で出会った、無私の人、悪党、そして怪人たち。時代の波間に消えて行った忘れえぬ人々を描き出すという趣旨の元で『サンデー毎日』の連載をまとめたものです。
小渕恵三や中内功といった佐野ノンフィクションの中にも著作として出てくる人間や、中内ダイエーを支えた蓄肉商、ウエテルこと上田照雄の壮絶な商売人人生とその血を受け継いだ息子との邂逅。『東電OL殺人事件』の取材の過程で出会った「すけべっこ」のサンドイッチマンの『一回性の人生』や僕も何度か利用したファミリーレストラン、ロイヤルホストなどを創業した江頭匡一の人生。ここに取り上げられている人々の人生が有名無名問わず、奔流、もしくは濁流となって僕の心にズシーンときてしまいました。
個人的に圧巻だったのは滋賀県は雄琴。現在では一大歓楽街として知られる場所で滋賀県特殊浴場協会会長 (当時)を勤めた田守世四郎の卑猥な動作を交えながら自分の事業にかける信念や、それとは別に姿勢を正して語られる独自の『業者側の論理』。さらに最ものけぞったのがソープランドでよく見かける通称『スケベ椅子』を開発した人間が、実は公家の出身で父は貴族院議員を勤め、その家系は藤原定家をルーツとする冷泉家の流れを汲む西四辻公敬という「やんごとなき」身の上の方だと書かれていた箇所を読んだときには、しばらく頭がほうけて何も考えることができませんでした。
こういったことを『草の根分けて』文字通り足で稼いだとしかいえないような話を書き続ける筆者の執念とバイタリティーには、本当に敬意を表してやみません。 -
人が一生懸命に何かに取組んでいる姿は、時には滑稽に思えることがある。強烈な個性を持った日本人がこの中にいます!直人さん
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民俗学界の大巨人・宮本常一「忘れられた日本人」の着想をヒントに、
フリージャーナリストの佐野眞一がルポ取材で出会った人物から、
彼独自の視点で「忘れられた日本人」を綴るノンフィクション。
本家・宮本の書に比べれば、登場する人物は随分と有名人で世俗的。
だが、そういった人物へ注がれる視線に人間愛が満ち溢れている点は
本家と共通するものがある。
興味深かったのが、蒟蒻新聞の編集長・村上貞一氏の章。
タイトルから分かる通り、業界紙の極み。
だが、インタビューを重ねると村上氏は戦前の報知新聞の北京支局長を
務めたほどのエリート・ジャーナリストだったことが分かったり。
戦後のGHQのパージにひっかり、報知新聞を追放された過去や、
妻子を食べさせていかなければならない苦悩などが赤裸々に語られ、、
どこかぐっと胸をうつストーリーに化ける。
ジャーナリズムとは何か、近所の人に、ある種の嘲笑をかいながらも、
40年間にわたって蒟蒻業界の動向を見つめ続けてきた氏の人生から
見えてくるような気がする。 -
佐野眞一には多くのノンフィクション作品があるが、本作はその周辺の様々な人物に光をあてている。単独でも楽しめるが、諸作品のサイド・ストーリーとしても楽しめる。
取り上げられている人物はそれぞれアクが強くユニークな人たちばかり。まさしく佐野眞一好みといえよう。