- Amazon.co.jp ・本 (475ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480429735
作品紹介・あらすじ
第3部「マリユス」を収録。王党派貴族の祖父に育てられた純な青年マリユスは、仲間たちに感化されて社会主義の道に進み、家を離れて貧しい暮らしを始める。毎日のように散策に行く公園で必ずいつも出会う父娘があった。マリユスは、その未知の少女の可憐な姿に憧れをいだく。少女はジャン・ヴァルジャンに育てられたコゼット-ひとつの出会いが人々の運命を大きな渦の中に巻き込んでゆく。
感想・レビュー・書評
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青年マリユス登場。1830年代のパリを垣間見せつつ、幾多の出会いが読者を再び物語の中心に引き戻していく。
第三部は、いかにも主人公然とした純真な青年マリユス視点で語られる。本作では19世紀初頭のフランス史をいやがおうにも学ばされるが、彼の登場によってそれがどうしても必要なものだったのだと気づかされた。思想における祖父と孫の対立、若者たちの政治集会などにより、沈められていたテーマが大きく浮かび上がってきた感覚がある。
中盤からの、青春時代そのもの、の描写は輝かしく美しい。若い頃の貧乏生活で得るものは大きいと個人的にも共感できるし、初々しい恋の心情などは誰しもが経験するものだけに感情移入が高まる。それだけに、そこからのゴルボー屋敷事件のスリル感が凄まじかった。愛すべき主人公が危機を脱するべく奮闘するが、彼が持っていない情報を読者は知っていて、終始ハラハラさせられっぱなしなのだ。
このような理由で前半は読みにくいが後半は非常に面白い。そして続きが気になりすぎる展開なので、思想とかテーマとかが吹っ飛んでしまった。しかしまたユゴーの講義はあるのだろう汗。
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原書名:Les Misérables
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マリユス登場。
マリユスの思想の移ろい、若者らしい恋の悩みなどを中心に話が進む。マリユスがいつも散歩道で出会う父娘。彼はその娘(コゼット)に一目ぼれ。ある日ハンカチを拾い、それをコゼットのものだと思って匂いを嗅いだりするが、実はそれはジャン・ヴァルジャンのもの。
テナルディエの悪たくらみをジャン・ヴァルジャンが冷静に乗りきるシーンは夢中で読んだ。男はああいう風に(ジャンのように)冷静でありたい、なんて思ってみるけどまあ無理だろう。あらゆる危機をくぐらないと。でも危機に陥るなんてまっぴらだ。 -
ユゴーの歴史観・思想を読みながら読み進めていくところ、ミュージカルのいわゆる「レミゼ」はそういう思想性の濃い記述をがっつり削ったところにあるんだなと思うよね。
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この巻の前半は、王政復古期のパリの浮浪児の様子や学生・若者の思想状況などについてユゴーのレクチャーが続き、物語は一向に進まない。それが後半になると、ものすごい勢いで活劇が展開される。まるで前半のストレスを後半の勢いで解消するかのようだ。話の筋立てはご都合主義もいいところで、ここまでやられると逆にすがすがしく、話が盛り上がるならそれもいいんじゃない、という気にさせるところが、ユゴーの語りのすごさなのかもしれない。
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第三部 マリユス
この時代のパリの浮浪児の話、マリユスの生い立ち。
思想的背景と社会的背景。当時の状況は想像するしかないけれど、これほどの格差のあった社会とは……
彼の父の事、祖父の事、なぜ祖父に育てられ、なぜその家を出たのか。
そして出会ったテナルディエ!! ジャベールも!!
時々マリウスになっていたのが残念