文豪たちの大喧嘩: 鴎外・逍遥・樗牛 (ちくま文庫 た 64-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 68
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480429766

作品紹介・あらすじ

「鴎外にだけは気をつけよ」好戦的な厄介者、論争家としての鴎外。「『小説神髄』の執筆は御苦労であったが、我が文壇に影響するところは皆無」鴎外の標的とされた逍遙。「目指す相手は森鴎外」独立独歩の若き批評家、高山樗牛。攻守転々三つどもえ、目くらましあり、禁じ手ありの筆合戦。明治文学の黎明期に起こった文学論争を通して、文豪たちの意外な素顔を描く。

感想・レビュー・書評

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  • 鴎外と逍遥と樗牛、この3名の間に繰り広げられた文学論争を解説し、そこから見えてくる明治の文壇論や彼らの人物像。
    取り扱っている論争は、本書の「序」から引用すると以下の通り。
     鴎外 芝廼園の水掛論争
     鴎外 忍月の美醜論争、舞姫論争
     鴎外 逍遥の没理想論争
     鴎外 楽堂の傍観機関論争
     鴎外 樗牛の情劇論争、ハルトマン論争、審美綱領論争
     樗牛 逍遥の史劇論争、歴史画論争、美的生活論争

    …というわけでとても面白く読みました。明治の「~論争」は随筆や評伝でたまに名前を見かけたりするのですが、中身をよく分かっていなかったのでちょうど良い本でした。
    著者がかみ砕いて各論争の内容と経緯、元資料の変遷(雑誌掲載時と単行本収録時の差異など)も含めて解説してくれるので、(本当に気になる論争は原本にあたってそれを読むべきでしょうが)それぞれの論争のざっくりイメージぐらいは理解できたかなぁと。
    皆わりとえげつない感じでやりあってたんですねー(タイトルの「大喧嘩」に納得)。

  • うぅ…森鴎外が嫌いになりそうだ。脚気論争は知っているし、その他
    にもさまざまな論争の張本人だったのは知っている。

    それがこんなに酷かったとは…。

    本書は日本文学の黎明期である明治文壇に巻き起こったいくつかの
    論争に焦点を当てて、その成り行きを詳細に追っている。

    本当に嫌な奴なのだ、森鴎外。「鴎外にだけは気をつけよ」。内田魯庵
    の言葉通りなのだ。

    論争なんてもんじゃない。自分の意に添わなきゃ誰彼構わず喧嘩を
    ふっかけ、重箱の隅をつついてとことんまで追い詰める。

    確かに天才かも知れないよ。飛び級もしているし、語学にも堪能だし、
    官費で留学もしているしさ。

    だからって、自分の解釈だけが正しいと人を追い詰めるのはどうよ?
    鴎外に目を付けられた人はお気の毒だわ。

    子供たちが書いた「素敵な、私のパッパ」みたいなエッセイでの鴎外
    像が、本書を読むとガラガラと音を立てて崩れて行くのだっ。

    鴎外の時代にインターネットがなくてよかったよ。この人、絶対他人の
    ブログが炎上するようなことをしたと思うもの。

  • ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00196906

  • 文豪たちの批評合戦を読むだけでも面白いが、筆者の視点がまた面白い。まるで、リングの外からもっとやれ!と煽るような夏っぽい視点があると思えば、不意に冷静になり状況を解説し始める。読み方の波に乗るまではなかなかページが進まなかったが、自分が読んだことがある小説が喧嘩のやり玉に挙がっていると、途端に面白くなる。森鴎外が、こんなにたくさんの逸話を持っている人物だとは知らなかった。

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著者プロフィール

1929~2011年。
文学者、書誌学者、元関西大学名誉教授。
著書多数。1980年『完本 紙つぶて』でサントリー学芸賞、2004年『文豪たちの大喧嘩 鷗外・逍遥・樗牛』で読売文学賞研究・翻訳賞、2006年『紙つぶて 自作自注最終版』で毎日書評賞ほか受賞。

「2016年 『谷沢永一 二巻選集 下 精撰人間通』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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