9条どうでしょう (ちくま文庫)

  • 筑摩書房
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本棚登録 : 358
レビュー : 39
  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480429940

作品紹介・あらすじ

「憲法九条をどうすべきか」。護憲派にも改憲派にも言い分はあるでしょう。しかし、原理主義的に考えているだけではこの閉塞状態はどうにもならない。これを打ち破るには、「虎の尾を踏むのを恐れない」言葉の力が必要なのだ。「九条と自衛隊のねじれによる病の効用」「男は戦争が大好き」「現実性より方向性」「普通の国のチープさ」などなど、他では読めない洞察が満載のユニークな憲法論。

感想・レビュー・書評

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  • 最初の二人(内田樹と町山智浩)のがわかりやすかった。

  •  とっても面白かったです。
     四人が書いていて、それぞれに興味深かったです。でも、筆頭の内田樹さんの文章がいちばん好きでした。それだけでも、みんなに読んでもらいたいですね。

     編集者が、柔らかいタイトルをつけたくなるのも分かります。とにかく手にとって読んでくれ!という本ですね。
     九条改変したい、日本再軍備、そうしないと日本人の精神はシャンとしない!・・・みたいな精神論に固まっている方は、何を読んでも何を聞いても、ホボ意見が変わることはないでしょうから(笑)、九条改変について、今ひとつ自分としてはかっちりした意見を持たない人に読んでもらいたいですね。ホント。何しろ、僕たちヒトリヒトリの判断が、子々孫々の歴史に良かれ悪しかれ刻まれる日が、早晩やってきちゃう可能性もありますからねえ。そうならんことを祈りますが。

     九条改変を希望するヒトが国会に大勢いて、世論を煽っている、というのは何だかいやーな気がしています。
     物凄く単純に言うと、「言った言わない論」に等しい、「誰が作ったか」議論とか、純粋な精神論とか、ほとんど酔っぱらい感情レベルでよく賛成する人がいるんだなあ、と思っていました。
     別に九条改変に限らず、なんにつけそうですが、大義名分はどうでもよくって、「ソレをすると、誰が儲かるのか?誰が損するのか?」ということダケだと思うんです。

     明らかなのは、喜ぶのはアメリカですね。

     だって、アゴでこき使える子分を、戦場にも投入できるわけで。お金、浮きますからね。あとは、兵器を売る人は儲かりますね。ほかは一体、誰が儲かるんですかね?少なくとも僕は儲かりません。むしろ、コレだけ将来に向かって国民の人数自体が目減りして、保険だ年金だって、カネが不安な国が、精神論で軍備にカネ使ったり戦争したりできるわけないじゃん、と。

     で、誰が変えたがってるのかっていうと、自民党政権ですよね。
     自民党政権っていうのは、戦後ずーっと、アメリカの子分であることを受け入れてきたんですよね。

     国粋主義的なこと、「美しい国」とか、看板として一部ヤンキー的みなさんの支持を受けてますけど、一度たりとも、

    「日米安保はもうヤメだ」とか
    「アジアで同盟しようぜ、アメリカは経済から締め出そう」とか
    「沖縄から出て行け米軍」とか
    「なんで在日米軍の家族とかの生活費まで日本国民の税金で出すんだよ。こっちも経済大変なのにふざけんな!」とか
    「なんで日本に輸出するアメリカ産食品は、アメリカ国内では禁止されてる農薬、ぶっかけてんだ?」とか

     って、言ったことないんですよ。
     ソコんとこ巧妙に隠してますけど、要はアメリカが自分の金を浮かしたいから、九条改変を望んでいるだけなんですよね。なんでそんな簡単なコトが一般に常識になってないんだか。

     と、いうようなことを思っていたわけですね。ぼんやりと。

     で、この本は、単純な平和主義九条賛歌、軍隊全否定のマザー・テレサ的観念ではないんですね。もちろん、一方でマッチョ的精神論に基づく改憲論でもありません。
     経済、文化、精神、国家とは?国民とは?アメリカとは?日本の未来とは?バブルとは?バブル後とか?自衛隊とは?憲法とは?と言ったような色んな見方から、九条改変問題を分析しています。そして、努めて平易に語ってくれています。チョットでも興味があればサクサク読めます。
     2006年の本ですが、全く古びてませんね。むしろ今こそ、読むべき本ですね。僕はケッコウ納得したり、ふむふむと思ったりしました。ですが、それ以上に、読んでよかったなーと思ったのは、いくつもの「へ~」があったことですね。モノの見方というより、その前提になる事実や事象。ちゃんと色んな本を読んで知識を積み上げた上で、それをどうつなぎ合わせて解釈するか、については独自の意見がある。そーゆーヒトの書いたものを読めるっていうのは、幸せですね。

     トップバッターの内田樹さんの文が僕はいちばん好きでしたけど、実は2番手以降の方がより平易な語り口だったりします。手にとってもし内田さんパートがとっつきにくくても、諦めずに二人目以降だけでも読んでくださいませ。

  • これ!絶対みんな読んだ方がイイ!!
    全文引用して書き留めておきたい内容。

    憲法なんて、現実と乖離してていいんだって!
    そこ、共通の認識にしようよ。

  • 正直に告白します。私はかつて、かなり急進的な改憲派でした。しかも、憲法なんて、ほとんど読んだことがないにも関わらず、です。笑止千万で、今、考えても汗顔の至りです。
    10年近く前ですが、以前勤めていた会社で何度か同僚と憲法について議論したことがあります。メンバーは4人。私以外は、温度差はあれど、みんな、いわゆるところの護憲派でした。私は旗色が悪くなると、色をなして反論したのを覚えています。
    時代は変わりました。世論調査では、国民の過半数が「改憲は必要」と考えているのだそうです。かつての私よりも過激に「改憲」を訴える方も、体感に過ぎませんが明らかに増えました。私は徐々に冷め、今は憲法について考えることは年に15分ほどしかありません。
    ちなみに本書で平川克美さんは「憲法なんて意識しなくても、国を愛し、同胞を助け、隣人を敬って生きてゆけるのがまっとうな社会である」と述べています。同感。
    かつての私を含め、改憲論者が「改憲すべし」とする、その根拠は何か。恐らく、本書で町山智浩さんが列挙する以下の諸点に絞られると思います。
    ①有事の際に迅速に有効に対処するため。
    ②海外に出兵できるようにするため。
    ③現実に対応するため。憲法は時代に合わせて書き換えられていくべきである。
    ④自衛隊は「戦力」であり、憲法九条と矛盾しているので、「ねじれ」が生じている。その「ねじれ」を正すため。
    ⑤「普通の国」になるため。「普通の国」には自国を守る権利があり、軍隊を持っている。
    ⑥アメリカから押し付けられた憲法なので、日本人の意志で書き換えるため。
    ⑦日本人の誇りを取り戻すため。
    本書の著者たちは、これら全てに対して、「情理を尽くして」反論し、完全に論破しているように見受けられます。
    全てについて書くのは紙幅が限られて…というのは言い訳で、私も多忙な身なので詳しくは書きませんが、最も根本的なことと思われる問題として、憲法9条と自衛隊は果たして「矛盾」しているのかについて、内田樹さんは興味深い考察をしています。
    「憲法九条と自衛隊が矛盾した存在であるのは、『矛盾していること』こそがそもそものはじめから両者に託された政治的機能だからである。憲法九条と自衛隊は相互に排除し合っているのではなく、相補的に支え合っているのである」
    含意は深いものがあります。理路はかなり入り組んでいますし、かなり長くなるので、引き写すのは控えます。仕方ありません。「現実が入り組んでいる以上、それを記述する言葉がそれに準じて入り組むことは避けがたい」(内田氏)のですから。
    憲法について関心のある方はどうぞ。中途半端ですみません。

  • 第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
    2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

    『9条どうでしょう』を読んで
    「第九条」が大変美しい響きをもったすばらしい文句に見えてきた。
    今まで憲法に対して特別な思いをもったことがなかったけれど本書ではいかにして9条ができていったか、そしてどうして大切にした方がいい(意見を押し付けてはいない)のかをいろんな方向から述べている。
    改憲、護憲にとらわれずとりあえず読んだ方がいい本。

    この本の内容を知っているのと知らないのとでは雲泥の差で
    読んだ後に自分の意見を持つのもいいと思う。

    とても印象深かった陛下のお言葉のエピソードの引用。

    東京都教育委員の米長さんが陛下に「日本中の学校で国旗を掲げ、国家を斉唱させることが仕事です」と話し、陛下が「やはり、強制でないことが望ましいですね」と応じられる場面もあった。(「読売新聞」2004年10月29日朝刊)
    ・・・つまり、この国の右傾化に歯止めをかけているのは、いまや天皇家の人々であるということだ。

    短い言葉だけれど、陛下の受け答えに大きな意味を感じられて感動した。

  • 内田樹さん、平川克美さん、町山智浩さん、小田嶋隆さん
    『9条どうでしょう』読了。
    おもしろかった!!!
    2006年に出版された本が、この時期(2012年10月)に文庫化されることに
    大きな意義があると思いました。
    表紙のデザインも素敵。

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    「憲法九条をどうすべきか」。護憲派にも改憲派にも言い分はあるでしょう。しかし、原理主義的に考えているだけではこの閉塞状態はどうにもならない。これを打ち破るには、「虎の尾を踏むのを恐れない」言葉の力が必要なのだ。「九条と自衛隊のねじれによる病の効用」「男は戦争が大好き」「現実性より方向性」「普通の国のチープさ」などなど、他では読めない洞察が満載のユニークな憲法論。
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  • 憲法9条という倦厭されがちで複雑な存在に、護憲派や改憲派というどちらかに偏った視点からではなく、国民全員を敵に回すような、著書の中で言う所の「虎の尾アフォーダンス」な観点からの論に刺激を受けた。問題の「複雑さ」を単純化せずに、複雑なまま考えることの大切さを教えられる。

  • 基本的に9条を肯定、又は少なくとも現在の段階では肯定する人たちの意見でまとめている。読むとそれなりに説得力はあり、変える必要はないのでは、と考えさせられる。

  • 【要約】


    【ノート】

  •  2006年の第一次安倍晋三政権当時、改憲論争が盛んになったことをふまえて出された単行本の文庫化。
     文庫化直後に第二次安倍政権が発足し、ふたたび改憲が大きくクローズアップされているのは、不思議な因縁というべきか。

     著者4人がそれぞれ1章を担当し、独自の憲法9条論を展開している。結論としては4人とも9条堅持の立場。それも、眉根にシワ寄せた感じの護憲論ではなく、「んー、べつに9条変えなくてもいいんじゃね?」くらいの力加減の“軽いタッチの護憲論”になっている。

     4人の顔ぶれを見ればわかるとおり、岩波的な旧来型の護憲論になるはずもない。4つの論考とも、憲法学者にはけっして書き得ないような意表をつく角度からの護憲論で、面白く読めた。

     とくに面白かったのは、内田樹さんの論考。
     かつて岸田秀が“ペリーの来航によって屈辱的開国を強いられたとき、日本の集合的自我は危機に遭遇し、内的自己と外的自己に分裂した”と主張した(『ものぐさ精神分析』)ことをふまえ、憲法9条と自衛隊を与えられたとき、同様のことが起きたとする内容なのである。

    《日本人は「内的自己」と「外的自己」、改憲派と護憲派に人格解離することによって疾病利益を得るという道を選んだ。私はそう考えている。
    (中略)
     敗戦日本の人々は「奴僕国家」として「正気」であることよりも、「人格分裂国家」として「狂気」を病むことを選んだ。》

     憲法9条と自衛隊の間の矛盾について、こんな角度から論じた人はこれまでいなかっただろう。

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著者プロフィール

1950年東京都生まれ。神戸女学院大学名誉教授。思想家。武道家(合気道7段)。道場兼舞台兼私塾「凱風館」館長。専門は現代思想、武道論。東京大学文学部卒。東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程修了。『私家版・ユダヤ文化論』(文春新書、第6回小林秀雄賞)、『日本辺境論』(新潮新書、第3回新書大賞)をはじめ多くのベストセラーをもつ。単著に『そのうちなんとかなるだろう』(マガジンハウス)、『困難な結婚』(アルテスパブリッシング)、対談書に『14歳の子を持つ親たちへ』(新潮新書、×名越康文)、『荒天の武学』(集英社新書、×光岡英稔)などがある。

「2020年 『街場の親子論 父と娘の困難なものがたり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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