パヴァ-ヌ (ちくま文庫 ろ 8-1)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (429ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480429964

感想・レビュー・書評

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  • 歴史改変SF、なのだけど、SF風味は薄い。むしろファンタジー的要素が多いかも。どんよりとした空や海へと続く草原、そして妖精なんていかにもイングランド。個人的には信号手の話が良かった。やっぱり一昔前のSFは味があって面白いなあ。

  • 表紙の絵が世界観をよく表している。
    あり得ない世界が、あった過去のように感じる。

  • エリザベス女王が暗殺されたことにより、英西戦争でイギリスが勝利をおさめる代わりに、カトリック教会が支配を堅固なものとした、別の世界におけるイギリスを舞台とする連作集。
    この世界では、ローマ教会により技術革新が制限され、20世紀半ばになっても自動車も電気も普及していない代わりに、蒸気自動車や人力で羽を動かして信号を送る通信塔ネットワークなど、異なる技術が発達を遂げている。いわば、中世が近代と切断されることなく継続しているようなもうひとつの現実である。そこは、キリスト教に放逐された「古い人々」までが干渉してくるにもかかわらず、まさに別のわれわれの姿を見ているような、圧倒的なリアリティに満ちている。
    蒸気機関車会社を経営するジェシー、荒野の獣と妖精に囚われる通信士ラルフ、白い船を救おうとするベッキー、異端審問を目撃し改革者となる修道士ジョン、ジェシーの姪マーガレット、そして遂に反逆の狼煙を挙げるその娘エリナー。彼らの物語はひとつひとつが生き生きと脈打っているが、世代を超えて自由と解放を求めたこれらの人々の苦しみと挫折は、終章において、ローマ教会の支配の終焉、民主主義へと結実したことが告げられる。ではなぜ、このような別の歴史が想像される必要があったのだろう?
    人々の苦闘を見守ってきた「古い人」ジョンは、こう告げる。ローマ教会の役割は、止められないとわかっていた進歩をたとえ半世紀でも押しとどめ、その間に人々が真の理知に近づく時間をあたえることにあったと。そのために多くの残虐が行われたが、少なくとも2つの世界大戦が引き起こした巨大な惨禍は起こらなかったと。
    第2次世界大戦の記憶もまあたらしく科学技術が急速な発展を遂げつつあった1968年に書かれたこの小説が書かれた背後には、もうひとつの世界を想像せずにいられない、こちらの世界の切望があったのだろう。
    ただ、「解説」でも指摘されているように、あちらの世界では電気の開発に引き続いてすぐに原子炉が開発されていながら、こちらの世界で起きた惨禍のひとつに原子爆弾が挙げられていないことは確かに気になる。カトリック教会の支配からの解放がイギリスからしか起こらないと想定されていることも含めて、作者の認識にはいろいろと疑問もわいてくるのだが、それを置いても科学技術と歴史について考えを誘われるとともに、文章表現のすばらしさも魅力的な小説である。

  • SFの定番、改変世界ものです。まあ、何ですか、そのー、このジャンルは傑作が多いですからね~

    本編より、解説にあった、「カトリックとプロテスタントの労働倫理の差がおのおのの信奉国の現在の経済状況に如実に反映されている」ってのが興味深いと思った。

  • 絶版になっていて「読める機会があれば是非/絶対」
    と言われていた作品が手に入るようになったので読む。
    パラレルワールド、歴史のIf、改変世界ものだが
    読了後はマイク・レズニック『キリンヤガ』を思い出した。

    三人称とありふれた名前で分かりにくく感じるところ、
    それぞれの旋律とその関係、時系列の整理は
    じっくり読まねばならない。
    生きている間に翻訳読めてよかった。
    生きている間に原書で読みたい。

  •  とても骨太な物語。序章で私達の知る現実の歴史とは違うif小説であることは解っていたのだけど、必ずしも歴史改変物として読まなくても様々な読み方ができそうなほどの拡がりと重厚さを感じた。
     ストレンジ商会の一族が物語のテーマを表現し、他の三つの章がこの作品の世界観を補完する役割を担っていると思ったが、この作品まだ幾らでも補完する余地がありそうである。(補完しないと解らないという意味ではなく、魅力ある設定や物語がまだ潜んでいそうな気がするのだ)

  • 宗教改革が無く、カトリックが世界を支配していたら、現代はどうなっていたか?というif小説。英国南部を舞台に、名もなき人々の日常生活から書き出していますが、描写が緻密、情景が詩的で、重厚な純文学を読んでいるようでした。カトリックが科学技術の進歩を抑えると、中世のような社会が続くんですね。一話完結の連作長編ですが、ひとつひとつの小さなエピソードがやがて大きな感動を呼ぶうねりになっていきますので、初めの頃が読みづらくても辛抱しましょうね。

  • 面白かった〜。世界観にどっぷり浸った。

  • 全編に渡っているかとは思うが特に、 第三旋律の女の子や第二旋律の信号手 のように、「革命!」という感じでは ない、内から沸き起こる静かな反乱の 力が設定とマッチしている。という か、それ自体がこの作品の本質なの か。

  • エリザベス1世が暗殺され世はヴァチカンが世界を牛耳る大カソリック時代となった!なifワールド
    特異な世界の出来事だけを語るかと思いきや登場人物たちの内面を掘り下げてそこから世界を語る手法は好ましい
    ただし、オチは御都合主義的であまりいただけない
    また、訳注が文章に頻繁に出てくるところはどうにかならなかったのか

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