怪奇小説精華―世界幻想文学大全 (ちくま文庫)

制作 : 東雅夫 
  • 筑摩書房
3.76
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本棚登録 : 177
レビュー : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (648ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480430120

作品紹介・あらすじ

古今の怪奇幻想文学の中から厳選に厳選を重ねて編まれた3巻本アンソロジーの本書は「怪奇」篇。世界最古の怪談会小説として知られるルキアノスの作品に始まり、デフォー、メリメ、ゴーゴリ、モーパッサンなど文豪中の文豪たちによるベスト・オブ・ベストな怪奇小説を、岡本綺堂、神西清、平井呈一らの歴史的名訳によって1巻に結集。

感想・レビュー・書評

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  • 海外の作品の中から、クラシックな傑作がチョイスされているアンソロジー。私はホラーという分野は実話とか流行作ぐらいしか読んだことがなく、怪奇小説や幻想小説という分野にたどり着いたのはゴシック経路からなんですが、きっとこういう経路でたどり着いた方ならものすごく満足度の高いアンソロジーだと思います。ホラーの系譜が語られるときに必ず出てくるリットンの「幽霊屋敷」やポーの「アッシャア家の崩没」なども収録されているし、「猿の手」などの有名な作品も入っている。
    「ヴィイ」「オルラ」などのサイコ的なというのかな、まぁようは幽霊などの外的要因じゃなく自分自身の内面に追い詰められ恐怖を作り上げてしまうような作品もあり、スタンダードな幽霊譚もあり、とにかく非常に読みごたえがあった。
    あとがきにもあったけれど、あえて古い訳をそのまま採用していることも気に入った。龍膽寺旻氏の訳文には本当に胸キュンした。連続して読んでいると「背の高い女」あたりからエンジンの回転数が上がってくるような感覚でした。

    特に気に入った作品は「アッシャア家の崩没」、「蜘蛛」、「闇の路地」です。「闇の路地」本当にすごかった。

  • 怖がりなのに気になってます。。。

    筑摩書房のPR
    https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480430120/

  • 怪奇小説の傑作揃いの本書。作品毎に全く異なる『怪奇』の雰囲気が楽しめて、さらに芥川龍之介に岡本綺堂、神西清、平井呈一、など訳者も豪華。大変贅沢な一冊でした。
    私のお気に入りはゴーゴリの「ヴィイ」。「肖像画」を以前読んだ時も怪奇の雰囲気が好みだったのですが、ヴィイは土着の民話っぽいテイストも入ってまた素晴らしかった。他には、異世界からきた生き物に生活を侵略されていくSFめいたテイストがある「オルラ」と「闇の路地」も面白かった!

  • 2012-11-14

  • 「嘘好き、または懐疑者」ルキアノス
    子供や老人であるということも才能の一つであるなどと思えたのなら、著者はゲーテも憧れるアーティストで済んだのだろうが本人が風刺家でありたいのなら仕方ない。才能というぬるま湯の心地よさと、それを受け入れ難い気持ちとを等価に捉えなおすことで己を創造せんとする在り方に居たいものの、あまりうまくいっていない思いが率直に見える表題。

    「石清虚/竜肉/小猟犬」蒲松齢
    人が神を完璧に理解している様子が描かれている稀有な作品。怪奇達は皆親切で健気で自由で可愛らしく、常に厳格なルールの下にあることによって余すところなく神性を表現する。
    老人の神様は駄々をこねる主人公に最初からあげるつもりだった石をくれ、竜は本当に食べたい人だけにこっそり己の切り身をくれ、小さい人たちは勉強に集中したい主人公のために軍を出動させて虫を追い払ってくれ、そして例のお方はソドムとゴモラの良民のリミットを言うだけ下げてくれる。

    「ヴィール夫人の亡霊」デフォー
    作者が歌い上げるのは物理空間における真偽になぞ毛ほどの重要度もない、ということを知っている人の気高さ。そして幸いにも彼の時間は淵の手前で止まっている。

    「ロカルノの女乞食」フォン・クライスト
    そんな簡単で良いのだろうか?との疑念がいとも簡単に押し流される、脳みそが喜ぶベタな勧善懲悪。

    「スペードの女王」プーシキン
    いきあたりばったりで最後は降って湧いた勧善懲悪。読者の脳みそが話についていけてるのかいけてないのか迷って結論は「なんとなく怪奇」

    「イールのヴィーナス」メリメ
    ストーリーとあまり関係のない無駄なエピソードや回り込み撮影のような人物像の4次元的な描写、主人公のリアルすぎる俗っぽい感想など、なかなかに恥ずかしげもなく世界を創りあげている。才能と和解できないルキアノスにして愛すべきペテンのメリメ。

    「幽霊屋敷」ブルワー=リットン
    全力で中二病を吹いておきながら、「まあ聞いた話なんすけどね」的な無責任ラスト。読者の脳が今まで自分が見ていたのは夢だったのか?なんだこいつの精神構造?的な怪奇。

    「アッシャア家の崩没」ポオ
    辛気臭すぎてたぶん1/4でギブアップ。安定のポオ。こいつのせいで以降の作品の読む気までなくした。と思ったがこの本はたぶん少年ジャンプ的な感じで、後ろに行くに従って出来が悪くなるってやつの気がする。ということは、幽霊屋敷は最後にどうにかこうにか我に返ったがポオはラストまでこの調子だったのだろう、と予想。

    「ヴィイ」ゴーゴリ
    「クラリモンド」ゴーチエ
    「背の高い女」デ・アラルコン 素人オカルト報告サイトのような印象の薄さ。
    「オルラ」モーパッサン
    「猿の手」ジェイコブズ
    「獣の印」キプリング
    「蜘蛛」エーヴェルス
    「羽根まくら」キローガ
    「闇の路地」ジャン・レイ
    「占拠された屋敷」コルタサル

  • 耽読中。澁澤龍彦の書評がある短編作品を網羅されている感が。しかも翻訳が素晴らしい。

  • そうそう、怪奇小説ってのはこれなんですよ。ただおぞましいだけ、後味が悪いだけの作品なんて怪奇小説って呼んじゃダメ。やはり美しさがないと。その点、このアンソロジーは作品の選択も翻訳の質もナイスなわけで。既読の作品も含め、非常に楽しませてもらいました。

  • 2012年11月10日初版、並、カバスレ、帯なし
    2014年1月4日阿倉川BF

  • ・東雅夫編「世界幻想文学大全 怪奇小説精 華」(ちくま文庫)はその書名にふさはしいアンソロ ジーである。収められた作品を見れば誰もがその精華=成果を納得できる。それはこんな編集方針による。「収録作品の選定にあたっては、内 外の主要なアンソロジー採録頻度、評論研究書等での言及頻度を重要な指針、目安としている。(中略)今 回の企画に限っては、能う限りセレクションに客観性を付与することで、ベスト・オブ・ベストの幻想文学選集を編みたいと考えた」(「解 説」613頁)。さう、実際にその通り、そんな稀有なアンソロジーである。これは3冊でシリーズをなす「世界幻想文学大全」の第2に当た る。3は「幻想小説神髄」で本書に続く。1は「幻想文学入門」で既刊、後2冊の「解説/評論篇」(3頁)といふことらしい。稀有な、そし て喜ばしい企画である。
    ・本書は解説を含めて600頁超、この点でも凡百のアンソロジーではないと知れる。収録作は全18、多い。古くは古代ギリシアのルキアー ノスに始まる。その後は17世紀に飛び、デフォーの「ヴィール夫人の亡霊」がくる。正統的な怪談話、訳者は岡本綺堂である。綺堂は多くの 怪談を訳してゐるが、これもその一編、昭和初年頃の訳であらうか。古い。この後に、クライスト、プーシキン、メリメ、ブルワー=リットン と続くが、これらは19世紀ヨーロッパの作品である。この次が何とポー「アッシャ-家の崩没」である。この題名、まちがへたのではない。 ちやんとかう書いてある。崩壊ではなく崩没である。訳者は龍膽寺旻、日夏耿之介門の人であるらしい。戦後の訳だが、さすが日夏門、かうい ふ訳ができる人は今はゐまい。「雲は鬱然と空低く垂れて、慵く、晻い、静かな秋の昼日」(241頁)と始まる。振り仮名なしでは読めな い。「ものうく、くらい……ひるすがら」である。以下もずつとこの調子、最後の段落はかう始まる。「私が瞳を凝らしている中に、この裂罅 は倐ちに拡がった。この時一陣の羊角が襲いかかった。月読の円な姿が……」といふわけで、これだけでも普通に変換できない文字や単語があ る。この先は更に大変である。今なら京極がこんな文章を書くかもしれないが、それでもこんな古風な言葉遣ひはできないであらうと思ふ。か ういふ訳は、昭和20年代の雑誌を読むといふ趣味でもあれば出くはすこともあらうが、普通では絶対にお目にかかれない。その意味で、私は むしろかういふものを発掘してくれた編者の慧眼を嬉しく思ふ。実は本書の特色はここにもある。やはり「解説」で編者は言ふ。「本叢書にお いては、訳文の正確さや読みやすさよりも、その文学的味わい、文体の洗練を重んじる姿勢から、その多くが戦前戦中に世に出た旧訳の数々 を、あえて積極的に採用する方針で臨んだ。」(613頁)だから、こんな日夏門の訳者も登場するのである。実は芥川龍之介もまた訳者とし て出てくる。テオフィール・ゴーチエ「クラリモンド」である。これなどは芥川訳だと気づかないかもしれない。特に古風でも拙劣でもない。 たぶん普通の訳である。しかし、わざわざこれを載せるところに編者の慧眼、あるいはこだはりがある。この編者、以前は奇を衒つたとでもい ふやうなアンソロジーを編んでゐた。それに比べると、文章へのこだはりはあるが、これはしごくまとも、見事にまとめられてゐる。確かに精 華である。作品はごくオーソドックスながら、訳文でその文学性を採る。それで「ベスト・オブ・ベスト」になるかどうか分からないが、読ん で損したと思はせないアンソロジーになつてゐることはまちがひない。おもしろく読んだ1冊であつた。幻想も待つのみ。

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