動物農場: 付「G・オーウェルをめぐって」開高健 (ちくま文庫 お 67-1)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480431035

感想・レビュー・書評

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  • 『1984年』が面白かったので、こっちも読んでみた。

    社会は権力を必要とし、権力は牽制機能が無ければ堕落していく、という理を、寓話として語る傑作。

    今読むと、豚の独裁者ナポレオンが示す人物として思い浮かぶのは、スターリンであり、北隣の独裁ファミリーであり、毛沢東であるわけだが、本作が発表された時点で共産主義独裁者として存在していたのはスターリンだけなので、スターリンへのあてこすりかなのか。

    七誡がちょっとした変化でグロテスクに本質を変えていく様が、何だか生々しい。

    例、
    第五誡
    オリジナル: いかなる動物も、酒を飲んではいけない。
    改正後: いかなる動物も、酒を飲みすぎてはいけない。

    第六誡
    オリジナル: いかなる動物も、他の動物を殺してはいけない。
    改正後: いかなる動物も、理由なくして他の動物を殺してはいけない。

  • とても面白かった!動物達による理想国家建国から次第に恐怖政治へと変貌していく過程がとてもスリリングで一気に読んでしまった。豚達体制側の詭弁にイライラしたけど、民衆も自分で判断する頭を持たなければいいように利用されてしまうことが非常にリアルでした。

  • 大いに貢献したボクサーがウィスキーに変えられ、なんとも言えぬ虚無感。「もし治ったらあと三年ぐらいは生きられるだろうし、あの牧草地の片隅でのんびり暮らすのが楽しみだ。勉強したり精神修養したりする暇をもてるなんて初めてのことだし。アルファベットのあと二十二文字を覚えるのに余生を使いたいなあ」悲しきボクサー、悲しきベンジャミン。優しいが故に盲信したのがいけなかった。

  • 再読。

    大人の寓話、いろんな読み方ができる。個人的には作者の意図とは違うかもしれないが、社会主義体制への批判の書として読んだ。

    権力の腐敗がどのようにして起こるかを、それこそ中学生にもわかりやすく描いている。

    本書の半分以上を占める、開高健のオーウェル論は「1984」を読んでないと理解が難しい。

  • 半分くらいで読む気起きなくなって、ベッドの横に投げ飛ばした

  • 1984より小説としての完成度は高いとみんなが言うのに納得
    ソヴィエトを超えて全ての革命に当てはまる

  • 社会主義者オーウェルが動物の寓話を使ってソヴィエト神話を崩す(この意図はオーウェルのエッセイ『一杯のおいしい紅茶』中公文庫の一部で述べられている)。
    社会に置き換えると生々しい展開が動物たちに置き換えると少しかわいらしくて笑える。しかし最後は少し背筋が凍るような感覚があるあたり、ストーリー・テリングがうまい。

    いい洞察だと思ったのは風車が統治する中でシンボルの重要性、また大きくシンボリックなものへの貢献を構成員に感じさせることの重要性をよく踏まえている点。スノーボールものちには負の意味でのシンボルになる。人の脳は細かな事実や正確な構造よりも、シンボル、スローガン、ラベリングに弱い。人間の性質と支配側の使う手段を明確に理解することは漠然とした「気をつける」などよりずっと重要だな、と他の人のレビューを読んで思う。

  • 本作品もテーマが著者オーウェルの代表作「1984年」の中で描かれる「ニュースピーク」に重なる。

    それは「全体主義の恐怖政治」において、法(作中では7つの掟)や歴史の解釈(作中では追放された元リーダーのスノーボールが活躍した事実)がこっそり政治の中枢で改訂され、それが知識人らによって流布され、大衆が簡略化されたスローガンを連呼して全体主義が浸透していくという流れ。

    資本家の象徴として描かれる元荘園主を追い出して動物による動物のための農場を作ったリーダーのナポレオンだったが、最後は隣接する農園主の人間と密会を重ねるうちに豚のナポレオンが2本足で歩くようになり、服を着るようになり、人間と見分けがつかなくなっていく。
    これは労働者のリーダーのはずのスターリンが資本主義国家の英国や米国首脳と会談を重ねて彼らに同化していく様子を風刺している。

    オーウェルは言う。
    【現代の戦争】とは、支配集団が自国民に対して仕掛けるものであり、戦争の目的は領土の征服やその阻止ではなく『支配構造の保持』にある、と。

    そして法や歴史的解釈、ニュースの真相といった政治的教養は、いかにマスコミやフェイクニュース、プラットフォームのアルゴリズムによって自在にプロパガンダに変貌しうるのかを示している。

  • 開高健をして、全体主義・独裁の完璧な風刺とまで言わしめるクオリティ。

    どう読んでもソ連の風刺なんだけど、それだと読みが一歩及んでいないらしい。もっと普遍的な全体主義的特性を読み取れなければいけない。
    革命後レジームの中で栄達する者、翻弄される者、悲劇的最期を迎える者、動物に与えられる役割のすべてが現実と符合する。国家経営がおかしな方向に向かっていることに気付いても封殺されるか、統制を甘んじて受け入れるかしかないから自浄しない。物語は諦観を見せつつ幕を閉じるが、結局ナポレオン体制も行き着くところまで行くのだろう。

    本書が完璧すぎる裏返しに、開高の情熱は「失敗作」である『1984年』に向いていた。彼の語るニュースピークの話にすっかり心を掴まれてしまったので、いずれそちらも読んでみたい。

  • なるほど。こわい話だ。
    そしてメルヘンでも他人事でもない。

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著者プロフィール

1903-50 インド・ベンガル生まれ。インド高等文官である父は、アヘンの栽培と販売に従事していた。1歳のときにイギリスに帰国。18歳で今度はビルマに渡る。37年、スペイン内戦に義勇兵として参加。その体験を基に『カタロニア讃歌』を記す。45年『動物農場』を発表。その後、全体主義的ディストピアの世界を描いた『1984年』の執筆に取り掛かる。50年、ロンドンにて死去。

「2018年 『アニマル・ファーム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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