リテラリーゴシック・イン・ジャパン: 文学的ゴシック作品選 (ちくま文庫 た 72-1)

制作 : 高原 英理 
  • 筑摩書房
3.98
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感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・本 (681ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480431202

感想・レビュー・書評

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  • 2014年1月に読んだはずだが登録し忘れていた。

  • ゴシック小説アンソロジー。ホラー・幻想味の強い作品が多くて、総合的にかなり好みです。
    もともとお気に入りの作品もありました。皆川博子「春の滅び」、倉阪鬼一郎「老年」、乙一「暗黒系 Goth」、藤野可織「今日の心霊」は読んだことがあったけれど、やっぱり好きだなあ、と。
    未読だったものでは三島由紀夫「月澹荘綺譚」が素晴らしいなあ。えげつないのに美しくって、そしてラストの一文にはぞくりとさせられます。でも浮かぶ情景は、やはりどこか美しいような。

  • ズラッと並んだ執筆者名だけで、ため息とヨダレが出てきそうな短篇集。読み始めてから、あまりに勿体無くてゆっくり読んだ。ゴシック小説とは、ホラー寄りの幻想文学?くらいに考えていたが、不穏がキーポイントという編者の指摘には、目からウロコ。初めて読んですこぶる気に入ったのは、竹内健と山尾悠子で、特に後者の、文章からのイメージの喚起力が非常に強いところに圧倒された。赤江瀑には、はあ〜と骨抜きにされそう…素敵!大好きだ…。

  • タイトル通り、文学的ゴシック作品のアンソロジー。ゴシックの定義は人それぞれだと思いますが、コンセプトの明快さは良いですね。こういうアンソロジーを読む醍醐味は、好きな作家の好きな作品(既読)が収録されてる喜びよりも、好きな作家だけどすでに絶版になっていたり全集にしか収録されていないようなマニアックな短編が読めたり、そして読んだことのない作家の作品に触れて新しい発見ができること。その2点に関しては、そこそこ個人的には収穫がありました。ただあまり続けて一気に読むと、この世界はゾンビと吸血鬼と猟奇殺人鬼であふれかえっているような錯覚(妄想)に陥るので、少しづつ読んだほうがいいかも(笑)。

    あと単なるグロとゴシックの境界線の引き方には個人差があると思いますが、時代が現代の作家になるほど、ただの悪趣味なグロ傾向が顕著だった気がします。自分が生きていない時代や国のことはそれだけで一種のファンタジーなので許容できるのだけれど、現代日本の猟奇殺人鬼となると現実には小説より奇なりな事件がごろごろしていますから、フィクションの中でまで不快な思いをしたくないという気持ちが勝ってしまうし。そういう意味では唯一、乙一が苦手でした。ゴシックというジャンルの中に、自分は恐怖よりも幻想性・非現実感・そして耽美的なものを求めているからだと思います。

    未読だったものでお気に入りは吉田知子「大広間」(小川洋子のアンソロジーにもこの作家が収録されていて好きだったのですが、文庫はほとんど絶版のようで・・・)、さりげなく吸血鬼ものの倉阪鬼一郎「老年」も味があり、藤野可織の「今日の心霊」は怖いというよりクスリと笑えて好きでした。

    ※収録作品
    「夜」北原白秋/「絵本の春」泉鏡花/「毒もみのすきな署長さん」宮沢賢治
    「残虐への郷愁」江戸川乱歩/「かいやぐら物語」横溝正史/「失楽園殺人事件」小栗虫太郎
    「月澹荘綺譚」三島由紀夫/「醜魔たち」倉橋由美子/「僧帽筋」「塚本邦雄三十三首」塚本邦雄
    「第九の欠落を含む十の詩篇」高橋睦郎/僧侶」吉岡実/「薔薇の縛め」中井英夫/「幼児殺戮者」澁澤龍彦
    「就眠儀式」須永朝彦/「兎」金井美恵子/「葛原妙子三十三首」/「高柳重信十一句」
    「大広間」吉田知子/「紫色の丘」竹内健/「花曝れ首」赤江瀑/「藤原月彦三十三句」
    「傳説」山尾悠子/「眉雨」古井由吉/「春の滅び」皆川博子/「人攫いの午後」久世光彦
    「暗黒系 goth」乙一/「セカイ、蛮族、ぼく。」伊藤計劃/「ジャングリン・パパの愛撫の手」桜庭一樹  
    「逃げよう」京極夏彦/「老婆J」小川洋子/「ステーシー異聞 再殺部隊隊長の回想」大槻ケンヂ 
    「老年」倉阪鬼一郎/「ミンク」金原ひとみ/「デーモン日暮」木下古栗/「今日の心霊」藤野可織
    「人魚の肉」中里友香/「壁」川口晴美/「グレー・グレー」高原英理

  • 北原白秋、泉鏡花、宮沢賢治にはじまり、江戸川乱歩、横溝正史、三島由紀夫、澁澤龍彦に続き、赤江瀑、山尾悠こ、久世光彦から乙一、伊藤計劃、桜庭一樹、小川洋子、大槻ケンヂまで。まだまだ書ききれない、錚々たるメンバーすぎます。
    ちくま文庫オリジナル編集、頁数700弱、文庫ながら定価1600円。
    かなりの読み応えですが、気分が低空飛行の時に読むと、かなりキツイかもしれません(^^;;

  • 日本のゴシック文学(詩や短歌含む)を黎明期(北原白秋、宮沢賢治、泉鏡花)から現在(乙一、伊藤計画とか)まで、時代ごとに編まれたアンソロジー。

    高原英理さんの名とこの表紙に惹かれて手を伸ばし、目次1頁目の「毒もみのすきな署長さん」と目が合い即購入。
    タイトルと作者名見ただけでも興奮してくるラインナップなのです。

    ゴシックとは「残酷」であるとか「崇高」なものへのこだわりとかそういう部分なんですが、中でも「残酷」の開かれ加減というのは私の中では非常に重要で、スプラッターな感じの全部見せ感は絶対にいけないのです。「残酷」に惹かれる心の様態や「崇高」にたいする偏執的な様式美がディテールにあったりとか、体の一部への異常なまでのこだわりであったりとか、つまり「そのもの」ではなく「周辺」の方向性のことなのです。
    そういう私の拘りから見ると、このアンソロジーのラインナップは素晴らしいです。
    ゴシック小説ってどんなの?と思ったら宮沢賢治の「毒もみのすきな署長さん」、三島由紀夫の「月澹荘綺譚」、吉田知子の「大広間」、乙一の「GOTH」を読めば大体つかめると思います。

    私がこのアンソロジーの中で特に気に入ったのは、
    「月澹荘綺譚/三島由紀夫」「醜魔たち/倉橋由美子」「第九の欠落を含む十の詩編/高橋睦郎」「紫色の丘/竹内健」「ジャングリン・パパの愛撫の手/桜庭一樹」です。

    ちなみに金井美恵子の「兎」は脳内再生可能なぐらい読み返している。「森のメリュジーヌ」もいいけどやっぱり「兎」が一番好きかも。

  • 以前から読みたいと思ってたのになんかスルーしてた…。やっとこさ手に取りました。
    ・宮沢賢治の「毒もみのすきな署長さん」、宮沢賢治はときどきギョッとするほど怖かったりヘンテコな話を書くよな…。これは犯罪小説の子ども向けって感じだ…。
    ・乱歩の随筆「残虐への郷愁」、なんか分かる…と思ってしまったあなたもきっと人外の存在。これを収録する高原英理氏とも性癖が同じなんだろうなあ。大蘇芳年の無残絵のチョイスとか、乱歩ェって思うけど、なんか分かるよな。
    ・横溝正史「かいやぐら物語」、横溝がこんな…耽美な小説も書いてたんだな…。腐乱死体を隠そうとする作業とか…残酷で物悲しい感じはいつもの横溝だって感じだけども…。
    ・澁澤龍彦「幼児殺戮者」、ジル・ド・レェの伝記を澁澤龍彦流に繙く文章。かの悪徳騎士ジル・ド・レェの見方がめちゃめちゃに変わります。ううん、「異端の肖像」も早く読みたいなあ。
    ・須永朝彦「就眠儀式」、め…めちゃめちゃ好きだった…。吸血鬼ものとしては恐怖は一切ないんだけども…まさに耽美…妖艶…。チェンバロの音色と共に現れ、夜な夜な一人きり、しりとりに耽る金髪碧眼の美青年…。彼と出会った男は、そして…。す、凄過ぎる…。
    ・赤江瀑「花曝れ首」、陰間二人とならず者の男の三角関係…それに引きずられるように、婚約者の男に同性の恋人がいるのであろう事実を突きつけられてしまったヒロインは…。マジでこの陰鬱なトーンとすがすがしいほどの男色ぶりがマジで赤江瀑だな…なった。赤江瀑、マジで短編でも小説としてカロリーが鬼高くていつもびっくりする。でもそろそろ他の読みたいな…。これが…読む麻薬…。
    ・藤原月彦三十三句、あまりにも耽美俳句で衝撃…。こ、これがJUNE掲載の本気…。
    ・久世光彦の随筆「人攫いの午後」、だからなのかどっか同性愛ってか少年愛じみた随筆が収録されてるぞ…。高原氏の、久世光彦のこういった随筆への解釈が完全に一致でなんかわろた…。
    ・小川洋子先生の「老婆J」ってゴシック…ゴシック…???????????
    ・倉阪鬼一郎先生の「老年」、これめっちゃいいよね…。初出が異形コレクションだから、まじで今回のアンソロに収録されるのは納得。心中を図る吸血鬼老夫婦。この時点でもう心臓フルボッコすぎる。

  • ゴシックに関する多数の著書を持つ高原英理氏が提唱する「リテラリーゴシック」をテーマにしたアンソロジー。聞きなれないテーマですが、リテラリーゴシック宣言と解説、そして収録作品を読めば肌で感じられ納得できます。本テーマだからこそ実現できる、成立する作家の並びだと思います。時代ごとに変化を楽しめるのも良いです。とにかく本書に収録されている作品の濃密さは凄いです。誰にでも好かれる作品群ではないですが、こういう毒を持った作品は必要です。シリーズ物や長編小説に触れることが多かったので、個人的に短編の面白さを再認識できたことも収穫でした。

  • 残酷で、崇高。
    野蛮で、哀切。
    ──今見いだされる不穏の文学。
    (本書オビより)

    高原英理さんの代表的著作『ゴシックハート』と『ゴシックスピリット』。これら理論書の次に読むのは、まさしく実践書である本書!! 高原さんが上記の著作の中で紹介していた作家さんを始め、40人近い作家たちの「文学的な」ゴシック小説を堪能できます。

    しかし、ここで大事なのは、本書で紹介されている作品は飽くまで「文学的ゴシック」であって、所謂ウォルポールの『オトラント城』に始まる「ゴシック小説」などではないこと。そのため、『フランケンシュタイン』や『ヴァセック』などは一先ず置いた、高原さんのゴシックハートに響く作品のアンソロジーなのです。『ゴシックスピリット』の感想にも書きましたが、ゴシックは初めからゴシックであったわけではなくて、沢山の作品の中にどうゴシックを見出していくかもまた、ゴシックハートとゴシックスピリットを持つ者の特権なのです。

    ゴシックを目指した作品ではなく、ゴシックの見い出せる作品。個人的にはこのような作品たちは押し付けがましくなく、リラックスして(?)読めた印象です。とはいえ、なるほど「文学的ゴシック」にふさわしい残酷で、けれども美しい作品ばかり! 江戸川乱歩や三島由紀夫の作品や、乙一や小林洋子などの比較的近年の作品もあり、読んだことある作品もちらほらありましたが、未読の作品も取っ付きやすく、すぐにその世界観にのめり込み、爽快なまでの読了感に襲われる…!!

    一日一話とコツコツ読み進めていきましたが、飽きることなく読めました。ゴシックハートを持つものとして、やはり捨て置けない一冊です。

    《収録作品と個人的な評価》
    Ⅰ:黎明
    「夜」:北原白秋
    「絵本の春」:泉鏡花
    「毒もみのすきな署長さん」:宮沢賢治

    Ⅱ:戦前ミステリの達成
    「残虐への郷愁」:江戸川乱歩
    「かいやぐら物語」:横溝正史
    「失楽園殺人事件」:小栗虫太郎

    Ⅲ:「血と薔薇」の時代
    ◎「月澹荘綺譚」:三島由紀夫
    「醜魔たち」:倉橋由美子
    「僧帽筋」:塚本邦雄
    「塚本邦雄三十三首」:塚本邦雄
    ◎「第九の欠落を含む十の詩篇」:高橋睦郎
    「僧侶」:吉岡実
    「薔薇の縛め」:中井英夫
    「幼児殺戮者」:澁澤龍彦

    Ⅳ:幻想文学の領土から
    「就眠儀式」:須永朝彦
    ◎「兎」:金井美恵子
    「葛原妙子三十三首」:葛原妙子
    「高柳重信十一句」:高柳重信
    「大広間」:吉田知子
    ◎「紫色の丘」:竹内健
    「花曝れ首」:赤江瀑
    「藤原月彦三十三句」:藤原月彦
    「傳説」:山尾悠子
    「眉雨」:古井由吉
    「春の滅び」:皆川博子
    「人攫いの午後」:久世光彦

    Ⅴ:文学的ゴシックの現在
    「暗黒系 goth」:乙一
    「セカイ、蛮族、ぼく。」:伊藤計劃
    ◎「ジャングリン・パパの愛撫の手」:桜庭一樹  
    「逃げよう」:京極夏彦
    「老婆J」:小川洋子
    「ステーシー異聞 再殺部隊隊長の回想」:大槻ケンヂ 
    「老年」:倉阪鬼一郎
    「ミンク」:金原ひとみ
    「デーモン日暮」:木下古栗
    「今日の心霊」:藤野可織
    ◎「人魚の肉」:中里友香
    「壁」:川口晴美
    「グレー・グレー」:高原英理

  • 2014-2-17

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