権力の館を歩く: 建築空間の政治学 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (425ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480431240

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  • 歴代首相の公私の邸や国会議事堂、最高裁判所など政治権力の場を歩き、建築と政治力学を論じるもの。たかが「ハコ」といえばそうなのだが、中華圏の風水よろしく、ありかたしだいでそこに魔性や底知れぬ力が宿ったり、あるいは些末な話では、動線しだいで情報共有の利便も変わってくるということか。
    賃貸ビルでネットワーク型の柔構造の政治を目指した民主党という解釈は面白かった。今、その政権は倒れてしまったけれど、このような政治が成り立てばいいのに。

  • 政治意思決定のスタイルは空間によって規定されるのではないか。これをテーマに建築決定論に陥ることなく「建築と政治」の相関関係をダイナミックに捉えようとした内容。


    本書は三部構成。


    1)権力者の館
    2)権力機構の館
    3)政党権力の館

    1)歴代総理経験者と政治家たちの邸宅。
    興味を惹かれたのが庭の使い方。それぞれに個性が出ていておもしろい。普請道楽でひたすら庭をいじる吉田茂。一族郎党で楽しむ鳩山一郎。現実逃避の空間として使う池田勇人。休息のための非政治空間を創る佐藤栄作。そもそも庭も風景も興味ない岸信介と小沢一郎。
    なかでも佐藤栄作は一番センスがいい。鎌倉にあった別邸はいまでは鎌倉文学館となっているが由比ヶ浜の海を一望できる高台にある佐藤別邸はロケーションが抜群に素晴らしい。別邸自体も装飾過多でもなく全てが落ち着いている空間。ただ、これらが佐藤の長期政権を支えたと著者はいうが、そのセンスのよさと文化人気質が政界遊泳に役立ったのかどうか。はてさて。


    2)権力機構の館。取り上げているのは主に省庁の建物だ。その特徴は機能性はもちろんだが開放性がないことである。(日銀、警視庁、検察庁、宮内庁庁舎、最高裁など。)
    外に向かって表される権威や威厳、象徴性(首相官邸、、国会議事堂)を刻印した建築設計となっている。
    興味深いのが国会議事堂内の天皇に関する設えだ。
    いまも残る中央玄関。法隆寺五重塔が入る高さの中央広間。天皇が昇降する帝室階段。便殿前広間。中央の便殿(御休所)。化粧室。議場の玉座と天皇の傍聴席。使ってもわずか数分。化粧室や議場傍聴席は一度も使われたことがない。つまり利用頻度がない。あかずの間がある。使われない空間が広がっている。だが、そこに日本中から集めた一級の材料と一流の職人たちの建築工芸を集めた贅の限りが尽くされている。

    空虚な中心(天皇)という概念そのままを設計したような空間が、そのまま国会議事堂の装飾性と荘厳的な部分になっているという不思議が大変おもしろい。
    これは天皇を補佐する枢密院の建築にもよく表れている。(現在修繕中)。皇居内に造られた枢密院庁舎は国会議事堂に劣らず荘厳さと緊張感溢れる建物だが、実質に機能したのが‘控室’のみだったという。空虚な中心、中空構造は天皇を補佐する機関まで及んでいた。

    3)政党についてはよくいえば機能性重視の設計だ。
    そもそも装飾性や荘厳さなどいらない場かもしれない。政党のなかで最も巨大な建物が共産党の本部ビルというのは驚いたが、どの政党本部も昭和のままでどこか古い。東京の最新オフィスビルと比べると余計ダサさと野暮さが目立つ建築が多い。そこが建物だけでなくそこで蠢く政治家たちの発想の野暮さと因習を表しているわけじゃないといいけど・・・。

    本書で紹介された建築はどれも興味深いものばかりだが、やや詰め込み感があり物足りない。物件ひとつひとつをもっと掘り下げた続編を期待したい。

  • 2014-1-24

  • 建築

  • 単行本で既読。

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著者プロフィール

御厨貴

1951年(昭和26)東京都生まれ。東京大学法学部卒業。東京都立大学教授、政策研究大学院大学教授、東京大学教授を経て、東大先端研客員教授(名誉教授)、放送大学客員教授。サントリー文化財団理事、サントリーホールディングス株式会社取締役。東日本大震災復興構想会議議長代理(2011年4月~12年2月)、復興庁復興推進委員会委員長代理(2012年2月~13年3月)、「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」座長代理(2016年9月~17年4月)などを務める。著書に『明治国家形成と地方経営』(東京市政調査会藤田賞)、『政策の総合と権力』(サントリー学芸賞)、『東京』、『馬場恒吾の面目』(吉野作造賞)、『権力の館を歩く』『平成の政治』(共著)などがある。

「2020年 『天皇退位 何が論じられたのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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