あさめし・ひるめし・ばんめし: アンチ・グルメ読本 (ちくま文庫 お 68-1)
- 筑摩書房 (2014年2月6日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480431455
感想・レビュー・書評
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面白い。唸ったり、笑ったり、食べた気になったり。「味覚についての随筆から辛辣なグルメ批評まで、食にまつわるあれこれを手練れの文筆家32名が腕によりをかけて料理する」と裏表紙の宣伝解説文。副題が〈アンチ・グルメ読本〉。★★★のおすすめ。
吉田健一で始まり獅子文六で終わる故人22人が前半。後半に瀬戸内晴美、佐藤愛子、竹西寛子などの現役9人。その筋で著名な、谷崎潤一郎、魯山人、池波正太郎なんかは当然入っていない。〈アンチ・グルメ読本〉でも、辺見庸「もの食う人々」なんかは入らない。あくまで「あさめし・ひるめし・ばんめし」で、人間のあからさまなおぞましさは選ばれない。武田百合子「言葉の食卓」が入らないのが不思議、実に残念。紅白歌合戦の出場歌手選び、難しいのだろうなあ。
上手い文章は美味いを表現できる。個性的な文章、文体と言って良いと思うがそれが美味。ありきたりの素材を優れた調理人が極上のご馳走に仕上げる、それを食べさせていただく感じ。餅、さくらもち、つけもの、梅干し、お弁当…こんなに奥深かったのか。本人の直接体験にまさるものはないはずの食と性。この頃は専ら食専門だが、生きる楽しさや哀しみをしみじみと表現しうる文学、言葉の可能性の追求、やっぱり面白いや。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
図書館で。
なんでこれがアンチ・グルメってタイトルなんだろう…と思ったり。
食べ物について何やかや言う文章が好きで嫌いで(笑)そう言う相反した思いを持っているからか小島令夫人の文章はとても面白かった(笑)どこそこの店の○×は上手い、あそこに行ったら○×に限る、なんぞかいてる人に限ってそのメニューしか食べてないとかね。ありそう(笑)
前に家族で外食した時、母と自分が家で作れない何か変わったものが食べたいね、と話したら父がマーボ豆腐とチンジャオロースを頼むか、と言った事を思いだしました。いや、確かに店屋の味付けは違うけど想像出来るじゃん、みたいなね。これは偏見かも知れないけれども女性はどちらかというと色々違うものを食べてみたいって人が多くて男性は好きなものを腹いっぱい食いたいって人が多いような気がします。
まあ文章を書く人と言っても食にこだわる人もこだわらない人も居るのだから一概には言えないのでしょうが…
水上さんの文章を読んでさすがに今はそんな事はないでしょうが昔の禅寺酷いなぁと思いました。住職が死んだら女性は追いだすってのは…。だったらそんな女性を置くなよ、もしくは家政婦として対価をお金で払えよ、と昔の仕組みに憤りました。ホント、男性本位社会ってヤダヤダ、と変な所に腹を立てて読み終わりました。 -
このタイトルをつける感性がすき。そしてレシピ×エッセイが好きな理由が、明確に言語化された。
いわゆる山海の珍味は文章で書くものではなく、舌で味わうもので、おそらく誰にとっても美味しいもの。
ありふれたもののなかにひそんでいる思いがけない新鮮な味覚、忘れていた懐かしい味覚。
アンチグルメ、と言い切るのも寂しいけれど、やはりそれらは美味でありながらグルメではない。あさめしであり、ひるめしであり、ばんめしなのだ。
文章のごはんは、実物以上に美味しい。