ソーの舞踏会: バルザックコレクション (ちくま文庫 は 19-3 バルザック・コレクション)
- 筑摩書房 (2014年4月9日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (474ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480431615
感想・レビュー・書評
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バルザックの作品には、かなりえげつない女が登場します。それも貴族階級なのです。『ソーの舞踏会』夫婦財産契約』『禁治産』に出て来る女性は、揃って品がないです。男の方は、賢い男とカモられる男は大抵わかります。
どういうふうにして、どんどんカモられるか、或いは魔の手を逃れるか、この過程がぞくぞくします。
鹿島茂氏がよく述べていますが、当時のフランスの経済を知らなければ、バルザックは難しい一面があります。裕福な貴族と貧乏貴族、これらの規模が具体的にわかれば、もっとおもしろいと思います。
読んでいくうちに、サン・シモン主義というのが浮かび上がってきます。『禁治産』はそれがよく出ていると思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
<閲覧スタッフより>
貴族至上主義で気位の高い名門貴族の娘エミリーは、愛よりも地位を優先した。果たしてエミリーは幸せになれたのか?・・・「人間喜劇」シリーズの1篇。柏木先生による翻訳です!
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所在記号: 文庫||953.6||ハル
資料番号:10224293
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「ソーの舞踏会」1829年、「結婚財産契約」1839年、「禁治産」1836年作。
最初の「ソーの舞踏会」は約90ページ、「結婚財産契約」は約200ページもあるのに、ほとんど章立てがなく、1行空けの段落もないため、読むのに結構苦労する。おまけにヘンリー・ジェイムズと同じくらい改行が少なく、改行の無いまま数ページに渡る場合もある。
しかし、バルザックはやはり、面白いのである。実に様々な人物を、それぞれにリアリティをもって描き分け、多様な場面、多彩な人生を刻んでゆく。彼の執筆はただちに言葉の奔流となり、登場人物の語りはしばしば実際に語ったら何十分にもかかりそうな長広舌を展開する。
バルザックのこの圧倒的な奔流と大量の人物や場面を創出する凄まじいエネルギーは、特異なものがある。そのたくましさはベートーヴェンの強引さを想起させる。
が、改行だらけで言葉が少なく、ひたすらスピード感を競って薄っぺらな情報を追いかけてゆく現代の小説に慣れた人びとには、バルザックは読みにくく苦痛を感じさせられるであろう。これを楽しむには、生の時間に余裕が無ければならない。
本書中では、最初の表題作が比較的ストレートな恋愛ストーリーとなっていて、面白く読めた。長大すぎる2つめの「結婚財産契約」は、結婚に当たって双方の財産をどうするかという、我々貧しい平民には縁のない話で馴染みにくいものではあるが、当時の貴族や上層ブルジョワ階級にあってはこのようなめんどくさい問題が生じていたのだろうと思われ、幾らか興味も湧いた。バルザックがどうしてこのような法的問題にも通じていたのかという点も不思議だ。そのように当時のフランス社会の隅々までに拡張していったバルザックの知のたくましさも凄まじい。 -
大好きなバルザックに外れなし。プロットと人物描写がほんとに面白い。「この人はこのランクの社会的地位でこういう性格を持っている人物です」と言い切ってしまうところや、始終財産と結婚を巡って計算ばかりしているところなど、19世紀的なのだがそれもいい。この時代に生まれていたら、私は結婚できていただろうか(笑)
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表題作は貴族令嬢エミリー・フォンテーヌが非常にプライドの高さのゆえに、若い美男子マクシミリアンへの恋のすれ違い、そして別れた2年後の再会まで。ドラマティックな展開が息をのむ。著者の貴族階級への皮肉に満ちた姿勢は「夫婦財産契約」のナタリー嬢に対しても同様。そういえばこの著者は何人もの貴族の奥様・令嬢と関係を結んだ人だった!ナポレオン後のフランスの上流社会を垣間見る思いがするが、今も人間の深い深淵は変わらないと思った。最後の解説が大変分かりやすい。